第1話

文字数 1,005文字

 お盆前のある猛暑日の夜、行きつけのお好み焼き屋に行った。店に客はなく、大将はテレビを観ていた。
 私は年季の入った一枚板の鉄板の前のカウンター席に座った(写真↓)。

 この鉄板で大将は注文のお好み焼きや焼きそば、酒のつまみを焼く。鉄板の熱気は冬は暖として心地よい。が、夏は地獄だ。
 「ビールを下さい。」
 「はいよ。」
 この店のビールは瓶ビールの大瓶だ。これがまた風情があっていい。コップのビールを飲み干す。
 パフ~~
 「さっき、鉄板の火を落としたばかりだから、まだ熱いでしょ?」
 「んだ。アチチだの。」
 大将の話によると、一枚板の鉄板は厚さが約3㎝あり、火を落としても余熱があってなかなか冷えないそうだ。
 テレビではその日、第105 回全国高校野球第3日目の第3試合で、山形代表の日大山形が岡山のおかやま山陽に 2-9 で初戦敗退したことを報道していた。
 そこに客が入って来た。シャツを着て首にタオルを巻いた年の頃 70 歳代後半の、日焼けした老人だった。
 「ビールくれ。」
 コップ一杯を飲み干して、
 「あっついの~、この店。」
 「んだ。火を使っているし、クーラー効かんねぇ。32℃ある。」
 大将が指さした室温計は、ホントに32℃を示していた。ふ~❨汗❩。
 そして話題は高校野球になった。
 「山形はダメだぁ、情けねぇ。」「それに比べて仙台育英は強くなったのぉ~。王者の風格が出てるのぉ~」
 さらに話は東北勢の奮闘に及んだ。第3日目までに福島の聖光学院、宮城の仙台育英、岩手の花巻東が1回戦を突破していた。
 確かにここ数年、東北勢が強くなった気がする。数年前までは、東北勢のチームは初戦敗退が普通だった。甲子園には参加することに意義があった。今では本気で優勝を狙っている。何故だろう…? 豚肉を溶き卵でくるんで焼いた「とん平焼き」(写真↓)をつまみながら、熱い鉄板を前にして考えた。

 それは、東北の夏が暑くなり、東北の高校生たちが夏の暑さに慣れたからではないだろうか?以前は夏の甲子園は、沖縄、四国など暑い地方のチームが、甲子園の暑さに負けずに最後まで強さを発揮した。今では東北でも連日猛暑日が続き、ギラギラした甲子園の暑さにも負けなくなった。これも地球温暖化の影響だ。
 地球温暖化によって、東北の高校野球が強くなった。酔いも回ったのか、熟考した結果、以上の結論を得た。(お(しま)い)

 んだんだ!?
(2023年8月)
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