エピローグ

文字数 515文字

 事務所へ帰るバス停へ向かって二人で歩いていく。
「ユキさん、安心するね」
「ストーカーじゃなくって良かった、ってな」
 わたしが狙われてるんじゃないかって、本気で思ってたみたいだし。
 まぁありがたいって言えば、ありがたいけど。
「ユウキちゃんは今日の学校帰りに寄るって言ってたよ」
「そうか」
「分かってみると、やっぱつまんないなぁ」
 思わず長い溜息をついた。
「そうそう朋華が思うようにはならないさ。現実はこんなもんだよ。だから、異世界への話は小説にしてみればいいのに」
「そんなの書いたって、どうせ誰も読んでくれないもん」
 友達に見せたってバカにされそうだし。

「俺が読むよ」
 さらっと一言、わたしの方を見ることもしないで歩いている。

「あーっ!」
 わざと大きな声を出してみた。
「どうした!?」
「お腹減ったー」
「驚かすなよ。何か食べて帰るか?」
「うん。近くに行列ができる洋食屋さんがあるんだ」
 今日のランチはおごってもらえそう。
 おじさんの腕を取り、引っ張っていく。
 自然と笑顔になってしまうのはテンションが上がったからかな。
 ちょっとだけ、ほんとにちょっとだけね。



―謎の男  終わり―
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