第1話

文字数 1,126文字

 「はい、身長は 178.4 cm です。」
 「えっ~!? また縮んだ。」「ふ~。」
 年に2回行われる職員健診で、健診の度に数 mm ずつ身長が縮んでいく。私は学生時代、バレーボールの選手だった。身長は 180.0 cm あった。
 人は加齢とともに身長が縮まる。40歳を過ぎると何と平均で10年で1㎝ も縮むのだ。*(*社会医療法人同仁会 耳原鳳クリニック 「健康雑記帳」Dr 池田コラム;若いころと比べて背が低くなっていませんか?:2014年5月 から引用)
 その原因は大きく3つ挙げれれている。
 先ず、①歳をとって姿勢が悪くなることである。長年の生活習慣や腹筋や背筋などの筋力の衰えで猫背になる。
 もうひとつは、②骨粗鬆症(こつそしょうしょう)により背骨の圧迫骨折を起こしたり背骨が変形することによる。
 さらに、③体の水分量の減少である。成人は体重の60%、老人だと体重の50%を水分が占める。加齢で体の水分が減少すると、背骨の椎間板(ついかんばん)の水分量も減少して厚みが薄くなるのだ。椎間板は血流に乏しく、いくら水分を補給しても椎間板の水分量は戻り難い。
 私の場合、①と③が当てはまるのだろう。歳をとって干からびて姿勢も悪くなったのだ。これはいかん。要はいつまでも瑞々(みずみず)しく元気に胸を張って しゃきっ! とするのが大切なのだ。

 「先生、歳を取ると何かいいことあるんでしょうか…?」
 身長が縮んでため息をついた私をみて、健診センターの職員は私に尋ねた。

 さて写真は 2014年1月13日、浜松町の世界貿易センタービルの展望室から撮影した。この高さ 162.59 m の世界貿易センタービルは、建て替えのため 2021年8月1日から 2023年3月31日までの工期で解体工事が行われ、今はない。

 高層ビルが建ち並ぶ風景は近代的で、庄内にはない景色だ。
 しかし高層建築物も建物の沈下によって低くなることがあるらしい。米サンフランシスコ中心部に立つ58階建ての超高層マンション「ミレニアム・タワー」で、2023年3月までの7年間に、少なくとも垂直方向に46cm沈下し、沈下のばらつきによってマンション頂部で北西方向に74cm分の傾斜が生じているのだ。現代版「ピサの斜塔」と揶揄(やゆ)されている。**(**日経クロステックトップ>建築>米国建築ウォッチ@シリコンバレー>傾いた58階建てマンション、7年間の苦闘 から引用)
 ふと気が付いた。人の身長が縮むのも、高層建築物が沈下するのも、重力が影響しているのだ。【重力】とは、地球上で物体が地面に近寄っていく現象や、それを引き起こすとされる「力」***(***デジタル大辞泉 から引用)である。
 成る程、分かりやすいの。

 んだんだ。
(2023年5月)
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