第7話 大蛇とムカデ
文字数 1,564文字
当時は京方面から近江国への道はほとんど1本しかなかった。
そして、瀬田川にかかる大橋である瀬田 の唐橋 が近江国の入り口だ。
俺と保久も例に漏れず、瀬田の唐橋を目指して歩いていた。
ところが瀬田の唐橋が近づくにつれ、なぜか大渋滞なんだ。
もちろん当時は自動車なんかなかったから、歩く人々が渋滞しているんだよ。
俺はこういう性格だしさ、根気よく渋滞解消を待つなんてことはできない。
人波をかき分けてずんずんと唐橋に進んだんだね。
橋が見えるとこっち側の奴らも、向こう側の連中も、みんな橋のたもとで立ち止まって、わいわい騒いでいるんだ。
なんでとっとと渡らないのかといいうと、橋の真ん中に大蛇が横たわっていたんだな。
お前らは大蛇といわれて、アナコンダとかニシキヘビみたいなのを想像したかもしれないが、ぜんぜん違う。
お前らにも分かりやすいビジュアルで説明するとだな、俺が現世 に来てからハマったマンガ『ドラゴンボール』だ。
あれに出て来る神龍 。あれがかなり似ているな。
四本の脚があって、角が生えていて、目が赤く光っている。
まあそんなのが橋の真ん中で寝そべっていたんだよ。
しかしまあ、女子供ならいざ知らず大の男まで、中には立派な武者装束の奴も居るのにね、何をビクついているのか呆れたものさ。
「保久、行くぞ」
と、声をかけたんだが、保久までしり込みしてやがる。
俺はもう馬鹿らしくなってきて、ひとりで橋の真ん中まで歩いて行って、大蛇を踏みつけて向こうまで渡った。
別になんということもないのにな。
すると橋のたもとでしり込みしていた連中が一斉に「おおっ」と声をあげたので、振り返ってみると大蛇はどこかに消えていたんだ。
・・・・
唐橋を渡ってしばらく歩くと、琵琶湖が一望できる。ここで保久が言った。
「おかしいなあ・・藤太さん、琵琶湖には蟲 は仕掛けられていませんよ」
「確かか?もっとよく確かめてみろ」
保久は琵琶湖をぐるりと見渡し、さらに琵琶湖周辺の景色を見渡していた。
そして突然「うわわあ!!」と、叫んだんだ。
「藤太さん、あれはヤバいよ。俺はあんなのは今まで見たことない。いくらなんでもヤバすぎる」
そういいながら、指さした方向には三上山があった。
「どれだ?俺には山しか見えないぞ」
「藤太さん、あれが見えないのか?しかたないなあ」
そういうと持参した薬箱から小瓶を取り出して言った。
「この目薬を差してください。ちょっと沁 みますが、少しの間だけ霊視できるようになります」
目薬を差してみると、ちょっとどころか激しく目が痛い。
「んんん・・・保久、なんだこの目薬は?」
「ミョウガの汁ですよ。しばらくして痛みが引いたら、もう一度三上山を見てください」
俺はもう一度、三上山を眺めてみた。それは・・さすがの俺も驚く光景だったぜ。
最初は蛇がとぐろを巻いているのかと思ったが、そうではない。
ムカデだ。巨大なムカデが、三上山を七巻き半していたんだ。
「保久、あれは何だ?」
「藤太さん、あれが蟲 ですよ。しかしあんな巨大なのは見たことありません」
「なんであれは動かないんだ」
「あれほどの蟲 を操るには、超人的な霊力が必要でしょう。体力も激しく消耗します。つまり今は術者が休んでいるんですよ」
「今のうちに三上山に登って、あのムカデを殺すことは可能か?」
「無理です。今は三上山と一体化していますからね。蟲 が動き出してからでないと無理ですが・・」
そこまで言うと保久は次の言葉を飲んだ。
「保久、いま何を言おうとした?」
「・・あれが動き出したら、藤太さん、あんたでも無理だ。。」
そして、瀬田川にかかる大橋である
俺と保久も例に漏れず、瀬田の唐橋を目指して歩いていた。
ところが瀬田の唐橋が近づくにつれ、なぜか大渋滞なんだ。
もちろん当時は自動車なんかなかったから、歩く人々が渋滞しているんだよ。
俺はこういう性格だしさ、根気よく渋滞解消を待つなんてことはできない。
人波をかき分けてずんずんと唐橋に進んだんだね。
橋が見えるとこっち側の奴らも、向こう側の連中も、みんな橋のたもとで立ち止まって、わいわい騒いでいるんだ。
なんでとっとと渡らないのかといいうと、橋の真ん中に大蛇が横たわっていたんだな。
お前らは大蛇といわれて、アナコンダとかニシキヘビみたいなのを想像したかもしれないが、ぜんぜん違う。
お前らにも分かりやすいビジュアルで説明するとだな、俺が
あれに出て来る
四本の脚があって、角が生えていて、目が赤く光っている。
まあそんなのが橋の真ん中で寝そべっていたんだよ。
しかしまあ、女子供ならいざ知らず大の男まで、中には立派な武者装束の奴も居るのにね、何をビクついているのか呆れたものさ。
「保久、行くぞ」
と、声をかけたんだが、保久までしり込みしてやがる。
俺はもう馬鹿らしくなってきて、ひとりで橋の真ん中まで歩いて行って、大蛇を踏みつけて向こうまで渡った。
別になんということもないのにな。
すると橋のたもとでしり込みしていた連中が一斉に「おおっ」と声をあげたので、振り返ってみると大蛇はどこかに消えていたんだ。
・・・・
唐橋を渡ってしばらく歩くと、琵琶湖が一望できる。ここで保久が言った。
「おかしいなあ・・藤太さん、琵琶湖には
「確かか?もっとよく確かめてみろ」
保久は琵琶湖をぐるりと見渡し、さらに琵琶湖周辺の景色を見渡していた。
そして突然「うわわあ!!」と、叫んだんだ。
「藤太さん、あれはヤバいよ。俺はあんなのは今まで見たことない。いくらなんでもヤバすぎる」
そういいながら、指さした方向には三上山があった。
「どれだ?俺には山しか見えないぞ」
「藤太さん、あれが見えないのか?しかたないなあ」
そういうと持参した薬箱から小瓶を取り出して言った。
「この目薬を差してください。ちょっと
目薬を差してみると、ちょっとどころか激しく目が痛い。
「んんん・・・保久、なんだこの目薬は?」
「ミョウガの汁ですよ。しばらくして痛みが引いたら、もう一度三上山を見てください」
俺はもう一度、三上山を眺めてみた。それは・・さすがの俺も驚く光景だったぜ。
最初は蛇がとぐろを巻いているのかと思ったが、そうではない。
ムカデだ。巨大なムカデが、三上山を七巻き半していたんだ。
「保久、あれは何だ?」
「藤太さん、あれが
「なんであれは動かないんだ」
「あれほどの
「今のうちに三上山に登って、あのムカデを殺すことは可能か?」
「無理です。今は三上山と一体化していますからね。
そこまで言うと保久は次の言葉を飲んだ。
「保久、いま何を言おうとした?」
「・・あれが動き出したら、藤太さん、あんたでも無理だ。。」