第2話

文字数 527文字

「なぁ、サウザンドレッシングとゴマ風味ドレッシングどっちがいい?」

「どっちでもいいわ。もう、なにもかも」
 

理由なんてない。 
 

やたら朝早くから、車やらバイクやらのむさ苦しいエンジン音で目が覚めて、けれども布団からは足を出す気力もなく。
 

気がつけばもう日が暮れかかっていた。


たまの休日もこうしてなにもしなくとも終わってしまい、また終わりがない日々が繰り返されるだけなんだろう、と最近よく思う。


近頃あの若かった時みたく、テレビを見たいとも思わなければ、音楽をただただうっとりと聴くことさえ、露骨に嫌うようになっていた。


なにが自分をこうしてしまったのだろう?
 

もう人生の半分を生きたというのに、妻子がいるというのに、ただひたすらいつもひとりだ。
 

あきれて言葉もでない。というか、かける言葉も見あたらない。
 

いっそうこのまま人生を投げてしまいたい気持ちが毎日毎日、日を追うごとに増してきている


ソンナンダカラ、イマ、ココニイルンダロウ

 
『妻子殺害 渡辺和夫48歳 殺人罪、逮捕』


牢の中に入ってしまいたいとどれだけ望んでも、実際その中には、やはり、何も存在してはいなかった。
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