第16話  迷いの森

文字数 1,298文字

クルド王国から抜ける森の道

「ジュリアン、ようこそわが王国へ」
シャロンの誘導で、森の中の木々が道を作り、精霊の森の国へ誘う
ローレンは黙って馬から傍観していた

大木の中に綺麗な螺旋階段と
おとぎの国の様な緑に囲まれた花で彩られた家が並ぶ
金髪に耳が角のように
長いエルフが多く行き交う

森の緑と花の香りが漂い
心を落ち着かせる

「綺麗な森ね…絵本に出てくる
ネバーランドって感じのイメージ」
パオラは子供の様に嬉しそうにはしゃいだ
「長居はしたくは無い場所だけどな」
ジュリアンは厳しい言葉を投げる

「大木から出ている甘い媚薬に似た花粉せいで、魔力の薄い人間には神経毒に近い作用で気持ちに緩みや過去の幻覚を起こしやすくさせ、人の心を蝕む…精霊の森の別名は迷いの森」
ジュリアンは囁く様声でパオラに教える
「この森自体、人が容易に近づけられない場所、草木がいつでも優しく接してくれるとは限らない」


「シャロンが酒場で会った時から何処ぞの国の王太子だなと感じてたよ」
ジュリアンは周りの景色を
見ながらシャロンに話しかける

「私の仲間のパオラとローレンだ」
二人は軽く会釈する
ローレンも丁寧に会釈を交わす

パオラはシャロンの美しさに目を奪われていた

「エルフは初めてですか?」
「はい、シャロンさんもとても綺麗な方で、まるで森の妖精です」
「エルフは精霊の力が強い種族だからね、植物の中には一定の周期で毒を生成する生態に似て、精霊の力で特殊な力が備わっているんです…妖精みたいでしょ?ꉂꉂ(ᵔᗜᵔ*)」
シャロンは階段を踏み外さないように
螺旋階段を上る際、ジュリアンの腰を支える
「調子に乗るな」
ジュリアンはムッとした顔でシャロンの手の甲をつねる

「人と交わることが出来る精霊存在するんですか?」
パオラは興味が湧きシャロンに質問する

「かつて太古に人と精霊を交わせ、人が魔法を使えるようになった…
古い書物によるとグランディオという滅んだ王国が起源だと伝えられている」
「グランディオ王国?」
「エデンの近くに地下帝国があったみたいだが、今は竜の生息地で近づくことが出来ない禁忌の場所みたいだ」

シャロンは部屋を用意していた
「今日は精霊の森で泊まるといい、、情報についても話をさせて欲しい」
シャロンとジュリアンは二人揃って別室に行く


ローレンと二人きり
昨日の出来事もあり会話が進まない
「私荷物整理するから部屋戻るね」
泊まる部屋に入ろうとドアのノブを回す手をローレンは止めるようにパオラの手を握る
「ごめん…つい先走ってあんな事をして、パオラを傷つけた」
ローレンは頭を下げた

「女々しいと思われるかもしれないが…パオラから離れたくなかった」
ローレンはパオラの後ろから抱きしめる
「何事も無かったクルドで過ごした日に戻りたい…」
彼は泣きそうな声で囁き手が震えていた
クルドで過ごした日々が走馬灯の様に思い出す
でも健太郎との消せない過去を取り戻してしまったらクルドの生活も終わりを告げると感じていた
優しさだけでは生きてはいけない
全て壊して進まないといけない


陽だまりのような
優しいローレンを何度も思い出す

「何もしないから
少しの間でいいから
一緒にして欲しい」
ローレンはパオラを抱きしめる





ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み