第5話

文字数 4,988文字

コンコンっ
「はい」
「若頭、慶です。」
「ああ、入れ」
「お時間です。」
「ありがとう。」
「それで、若頭、少し申し上げにくいのですが、、、」
「ん?どうした」
「今日から手入れは、補佐の皆様が交代でされます」
「ん?ああ、わかった。」
「~~~姉さまっ!わかっているんですか?上半身裸の姉さまがいて、皆様が手入れをされるんです。男女が寝室にいてどれだけ危ないか分かってます…?」
「危ない?」
「…性交してもおかしくないんだすよ!?。」
「‥‥…っ!?そそそっそんな、ことは、、ないだろっ!!!!」
いきなり何を言うのだ。そんなわけあるわけないだろう。
「姉さま、わかっていない、わかっていない!!!なぜ皆様がここにいらっしゃるかわかる?姉さまに惚れてるの。大好きなの。自分のものにしたいの!」
慶がああ、もう!と頭を抱えながら言った。

「俺はもう姉さまの部屋に手入れに行かない。その間に補佐のどなたかと結ばれても何も言わない。全員と結ばれたってもいい、もう…」
「ぜっ、全員!!!?」
確かに惚れていると最初の会合で聞いてはいたが‥そんなことは…
お前、今から、だれかが手入れに来るのだろう…、なぜ今言うのだ。気になってしまうだろう。
慶に目線をやると少しうつむいていた。
「え、姉さま、何っ…」
よしよし、と慶の頭を撫でてやる。
「慶はたった一人の弟だ。家族なんだ。もっと私に甘えてくれよ。様子を見に自室へも来てくれて構わない。」
「…うっ。気が向いたら行きます。」
慶が下を向いているときは拗ねているときの癖。相も変わらずこの癖は抜けていないらしい。いつまでも可愛い弟だ。

「さて、部屋に戻る。誰が来るのだ?」
「香月殿です」
「…そうか、わかった。」


自室で浴衣に着替え、帯を軽く締め布団に横たわる。しばらくすると香月がやってきた。
「零様、、香月です」
ピリっとした香月の声が響く。慶のせいで、少し意識してしまうではないか。
「ああ、はいれ。」
「失礼いたします。」
「手入れ、頼むぞ。」
「ええ、痛みますが、ご辛抱を。上に乗りますね。」
昨日の慶のようにまたがり浴衣を寛げ、手入れを始める。
「綺麗な龍ですね、澄んだ緑が白い肌によく映える。」
少し香月の指が背中を這う。痛みと何か感覚が襲いビクっとしてまった。
「っつぅ。んっ。あい…かわらず、痛いのだな…。あっ!!」
「まだ一時はこのような痛みは続きます。」
「くぅ…んんっ!」
昨日よりも痛い気がする。唇をかみしめていると、香月の指が唇に触れた。
「零様、大事な唇をかまないで下さい。傷がついてしまいます。俺の指を。」
「だがっ、しかしっ…むぅっ」
そういっているうちに指をかまされ、手入れが続いた。
「零様っ、失礼します。」
さらにその声とともに香月の唇が首に触れ、キスをされる。
「んっ。か、づき。なにをっ…あっ」
「零様、唇と首に集中してください。きっと痛みが和らぎますから。」
香月が手入れと同時にキスを繰り返し首元にし、舌を這わす。感じたことない感覚に体がはねてしまう。
「んんっ、ふっ、ああぁ、、、あっ、やっ…」
チュッ、クチュッと聞きなれない音に恥ずかしくなってしまう。いつしか痛みは快楽に変わっていた。
「もう少しです。ご辛抱を。」


手入れ後、香月に支えられ起こされる。
「零様、大丈夫ですか?浴衣きれますか?」
「香月、すまない、少し支えたままでいてくれるか?」
「はい…。」
香月は私の体を背中から起こし、目をつぶったまま、私の体を支えていてくれていた。
浴衣にそでを通し、帯を締め準備ができたとたん、香月が膝をついた。
「零様、御身に対しての非礼をお詫び申し上げます。処罰はなんなりと。」
「処罰なんてものはない。おかげで痛みは少し引いた。このあとは酒を飲むから鎮痛剤は今日は飲まない。宴の部屋まで添って歩いてくれるか」
「かしこまりました。」
香月の顔が真っ赤になっていた。つられて私も赤くなってしまう。
痛みを和らげるためとはいえ、あんな恥ずかしいことを……
ぼーっとした頭のまま、宴の部屋についてしまった。いかんいかん、しっかりせねば。

「レオリー、待たせたな。」
「レイ、浴衣も似合うよ。本当に大人になったね。早速飲もうか。」
「ああ、あれ?潤は?」
「あとからくるようです。皇組の同行者の方たちに剣術の稽古をつけているようです。」
「そうか、熱心だな。」
レオリーと杯を交わし、他愛もない話をみなと小一時間ほどしていたところ、潤が到着した。
「遅れまして、申し訳ございません。稽古に夢中になってしまいまして…」
「構わない、むしろうちのに稽古をつけていてくれたんだな。ありがとう」

「レイ、前に会ったときは18だったかな。おおきくなっったね。」
「そうか?お前も変わらないようなものだろう。」
「ボクは27歳さ、君より先に大人になっている。にしてもあんなガキがこんなに大人になるとは、人は成長するものだな」
「レオリー殿、零様とはいつからのお知り合いなのです?私は3年前から組に本格的に戻ってきたので…」
「そうだね。じゃあ少し昔話をしようか、いつかはレイの婿になるかもしれない者たちだからね」
ウインクをしいたずらに話をしだす。ああ、これだから、レオリーは嫌なのだ。あいつとのことで私に得のある話はない。
「私は席を外すからな。自分の昔の話を聞いてもな…。30分後に戻る。慶は私に付き合え」
「わかりました。」
「お前たち、レオリーから聞いた話を部下に言いふらしたら……、殺すからな。」
脅しをかけておこう。
「「「「あ、、はい、、、、」」」」
クスクスとレオリーが笑っている。

レオリーside
「よほどレイは昔の話は恥ずかしいんだろうねぇ。可愛い子だ。ボクがお嫁にもらいたいぐらいだよ」
「それはだめです。私と結婚するのですよ、零様は。」
「お前、抜け駆けするなよ。」
「抜けがけはあなたでしょ。零様を姫抱きして組に帰還するなんて、僕はきいてませんよ」
「オレが情報伝えてすっ飛んでいったくせに。」
「なっ…あれは致し方なくだっ。香月だってさっき零様の背中手入れに行ってたじゃないか。」
「お前たち覚悟しといたほうがいいぞ、あれは、毒だ。もうオレ今日寝れない。」

………お前何したんだといいたいばかりにみんな香月をみている。ウブな子たちだ。
ボクがお嫁にもらいたいっていうのもあながち冗談じゃないんだけどな。まあ、隙があればかっさらえばいいか。

「さて、レイの話、聞きたい?」
「「「「聞きたい!!!!!!!」」」」
「ふふ、いいだろう。レイはね13歳から14歳の間、イタリアにいて、ボクのところで修行していたんだよ。その時は銃、体術の稽古を毎日していたよ。日本特有の動きだけはなく、海外でも戦えるようにと、自分から志願してきたんだ。」
「まだ13歳で単身イタリアに。同じころの私は剣道ばかり考えていました…」
「それが普通だろう。ボクもそうだったさ。でもレイはまだ13歳なのに若頭になることを己の運命と悟り、そこらの子たちよりも強くあろうとしていた。まあ実際強かったしな。」
「今じゃ、皇組最強だしなぁ、僕も多分銃では勝てても、剣じゃまったく歯が立たないです」
そう、強くあろうとしたんだよな。だから脆かった。あの時は危うかった。

「当時、イタリアの中で縄張り争いが激化していて、常に危険だった。レイはイタリアにきて半年たったころ、街中で襲撃され、敵マフィアつかまってしまったんだ。ボクたちに関係していると知られ、いいエサになると思ったんだろう。」
「零様が…」
「そう、それでね、ボクたちのボスと一緒に救出のために交渉で敵マフィアに向かったとき、零は、傷を追っていた。胸の上と太ももににナイフで傷をつけられていた。刀傷が今も残っているはずだ。」
「傷?」
「そう、レイは敵マフィアから、ボクたちの情報を引き出すための拷問を受けていてね。でも仁義、正義、守護者としての責務をなにより大事にしているレイは絶対に口を割らなかった。ナイフで傷をつけられても、殴られても絶対言わなかった。13歳の女の子が、だ。」

そう、普通の子の精神であれば、恐怖でいっぱいで言っているはずだ。自分が助かりたくて話していてもおかしくない。

「ただ、その姿を見たうちのボスはキレてしまってね。交渉の前に敵マフィアを全滅させたのさ。実の娘のようにかわいがっていたからね。だけど殺し合いというものを零は初めて見たのだろう。零は救出後、気を失ってしまってね。」

「そんなことが…。」
信じられない、という顔だろう。今はあんなに凛々しく育っているあの子にそんなことが起こっていたとは想像もつかないだろう。だが、零のあの顔つきは修羅場をくぐったものの顔だ。

「ボクたちのアジトに戻ってから、レイは1か月近く目を覚まさなかった。精神的影響だったのだろう。ようやく目を覚ました時には、一週間虚ろなまま、涙を流していたよ。」
「………」
4人は黙ったまま、話を聞いている。

「言葉が出ないだろう?ボクもそうだった。13歳の女の子が拷問を受けても味方を売らず、泣きもせず、そして殺し合いを経験した。何も感じないわけがない。レイは目がさめてから僕の腕だけずっと離さなかったんだ。そして、一週間たったころ、ようやく会話ができるまでになっていた。レイは泣きながら言っていたよ。」

『ねえ、レオリー……私、やっぱりまだ子供だった…。もう平気だって。私は強いんだって、思ってたの…。でも違った…。こわかったの、死んじゃうんじゃないかって…。何があっても死ぬ覚悟なんて…できていたはずなのに………。自分がくやしい、くやしい!!くやしいっ!!!!』
とっさにレイを抱きしめた。
『レイ、落ち着きなさい。弱くていいんだよ。弱くない人なんていないよ。ボクだって怖いさ。いつ落とすかもわからない命なんだ。でもね、この世界で必要なのは自分の気持ちがどうしたいかだ。何の為に生きたいかだ。ねえ…レイは…何の為に生きたい?』
『…わたし、この世界に生まれたときから、大事な人たちを守る力が欲しいと思っていた。でも力は力でしかないのね…。子供の私には限界があった。それは大人になっても変わらない…。恐怖を知った今、私はこんな気持ちになる人がいるのなら、その人の心を守りたい。そのための守護者でありたい。』
『そうか…。大丈夫、レイならできる。あんなことがあった後だ、泣いていいんだよ。ボクがずっとそばにいてあげるから。』
『ううん、レオリー、私はもう誰かの腕では泣かないわ。誰かを包んであげられるようにしたいもの。今日が最後。レオリーの腕の中で泣く今日が最後。』
『そうか、そうしたら、1つ助言をあげよう。』
『助言?』
『そう、いつか…恋をするといい。』
『どうして?』
『君はまだ子供だ。いずれ、わかる。』

そこから決意新たに、回復したレイは残りの半年、より修行に打ち込んだ。そして、ボクと対等程の銃の腕と体術を自分のものとし日本に帰っていった。

「レイは、あれからはきっと人前では泣いていないんだろう。何があっても。今では彼女は皇組最強の強さを誇っている。それは5年前の戦争でも目に見えてわかっていた。15歳で皇組組長の護衛をしていたんだからね。そして2年前の会合で再会したときにはいずれ皇組はこの子が背負うのだと確信した。」

「零様は、いつも凛々しくあろうとしています。強く、気高く、皇組であるがゆえとおもっていましたが、そんなことがあったのですね。ですが、私たちがそのようなお話を聞いてもよいのですか?」
「この話をしたのは、君たちにも本当の覚悟を決めてほしいからだ。まだ君たちはレイの表面しか知らないだろう。腕っぷしの強さ、カリスマ性。そして、あの容姿。だけどあれはレイの本当の姿ではないさ。レイの心はきっといつだって不安でいっぱいだ。だから、絶対あの子の心を守ってやってくれ。」

「そんなこと、」
「いわれなくたって」
「わかっている」
「絶対、守り抜く」

発破をかけてようやく顔つきが変わったか、こいつらも修羅場はくぐっているだろうが、女扱いはまだまだなのだろう。
「気を抜いてると、ボクがさらっちゃうからね。」

レイ、きっと君の心を守ってくれる人がいるよ、安心して泣ける拠り所をみつけておくれ。
いつだって僕は君の心が心配だよ。そして拠り所がもし見つからなければ、昔のように、僕の腕に戻っておいで。


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登場人物紹介

【皇組】

皇組 若頭 皇 零(すめらぎ れい)20歳

皇組 若頭へ任命され、父に強制的に補佐達と見合いをさせられる。任務で色恋の真似事で体を張ることはあっても純潔を守り続けている。愛する男はいないと思っているため、色恋には鈍い。毒の耐性があり、ある程度の毒は効かない。弟を守るため護身術を身に着けられるだけ身につけ、剣や銃、体術はどれも皇組トップである。女のみであるため力ではかなわないが、指揮官としての実力は組長折り紙付き


皇組 組長 皇 龍樹(すめらぎ たつき)55歳

皇組9代目当主、慶と零の実の父。零を大事にしすぎる親馬鹿ではあるが、

組としての手腕は頂点に君臨するだけのものはある。

内閣総理大臣、警視総監とは同級生であり、国の3大権力としているがとても仲のいい関係であるため

定期的に皇組で宴をしているらしい


皇組 皇 慶(すめらぎ けい)

皇組 若頭補佐として、零のそばにいる。姉のことを姉として以上に好意を寄せている。同盟組お見合いには

悶々としているが、姉の純潔だけは何が何でも守ろうと徹する、シスコン弟。策略や情報収集に長けていいる

体が少し弱いため、戦闘向きではない。


【同盟】

関東拠点同盟組 暁組 若頭 暁 連夜(あかつき れんや) 24歳

合気道、交渉術を得意とする。交渉に関しては皇組若頭補佐 慶をも凌ぐ。

零のことになると見境なくなってしまう性格がたまに傷。5年前の戦争で零に救われ次は自分が守ると思い立候補。


関西拠点同盟組 真白組 若頭補佐 真白 潤(ましろ じゅん)25歳

真白流剣術師範。だが裏の流派であるため剣術の師範であることを隠している

零とは剣の稽古で師範であることを隠しながら何度か手合わせしている。零の剣技の才に惚れ婿候補に立候補。


東北拠点同盟組 冬月組 若頭補佐 冬月 香月(ふゆつき かづき)20歳

武術は皇組、同盟組の中ではトップクラス。補佐の4人の中では一番若く零と同い年。酒に一番強くいくら飲んてでも酔わない。零とは、ほぼ初対面であるが、2年前の会合で遠くからみた姿に一目ぼれ。組長に嘆願し立候補。


九州拠点同盟組 五十嵐組 若頭 五十嵐 神(いがらし じん)22歳

銃の達人、遠距離狙撃、近距離早撃ちも右にでる者はいない。銃の実力は零よりも上。

女性に対しての免疫はなく、零に対しても常に緊張してしまう。


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