第4話 ただいまミーナ!

文字数 849文字

 こうして、オイラはようやくミーナの元へ戻ってきた。

 ミーナは五歳。猿みたいだったのに、見違えるほど可愛くなった。パパもママも元気だ。
 ミーナはぬいぐるみのオイラを、どこに行くにも連れて行く。お気に入りのリュックから、ちょこんと頭を出して、いつもミーナを見守っている。

 ミーナは大切な妹で、オイラのお姫さまだからな!

 ミーナのほっぺには、オイラの付けた爪のあとが、うっすらと……本当にかすかだけど残っている。

 オイラはこの傷あとに誓ったんだ。悪いヤツが来たら、どんな手を使ってでも、きっとミーナを守ってみせる。

 ぬいぐるみに何ができるかって?

 実はオイラ、夜になると動けるんだ。サンタの爺さんの魔法は、イブの夜限定じゃなかったみたい。
 
 夜になると動くぬいぐるみなんて、まるでホラー映画みたいでしょう? だから普段は、なるべく大人しくしているんだ。

 だけど時々……ついついイタズラ虫がさわいじゃう。そんな時は、ちょっとだけ……な!

 ちょっとだけだよ! 本当だってば!

 例えば、えーっと……!

 パパの口ヒゲを、くるくるカールにしちゃう。
 洗たく物を全部裏返しでたたんじゃう。
 ゆで卵の、黄身と白身を入れ替えちゃう!

 オイラのイタズラにしては、かわいいもんだろう?


 クリスマスイブの晩は、約束通りにまた、サンタの爺さんのソリにぶら下がりに行く。

 今年は、あんたのところへ行くかもな!

 大人だからって安心するなよ?
 へへん! オイラの今年のイタズラは、スペシャルだぜ!

 こっそりどんなイタズラか教えたら、トナカイが腹を抱えて笑っていた。
 とびきりのイタズラを届けるから、楽しみに待ってろよ!


 オイラはイタズラ黒サンタ。いつもはネコのぬいぐるみ。イブの夜にはサンタクロースと、不思議なソリで空をゆく。

 オイラはイタズラ黒サンタ。
 イブの夜にびっくりしたり、不思議でちょっぴり困ったら、それがオイラのプレゼント。

『メリークリスマス!!』って言って、笑って許してくれよな!


             ―おしまい―
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