命にかかわる医療デマ(下)

文字数 4,175文字

 ついでに、インフルエンザワクチンの誤解について述べているページがありました。ちょっと用語が難しいですが。

インフルエンザワクチンについて 国立感染症研究所 (*4)

”インフルエンザワクチンには、ハイリスク群がインフルエンザに罹患した場合に、肺炎等の重篤な合併症の出現や、入院、死亡などの危険性を軽減する効果が世界的にも広く認められています。世界保健機構(WHO)をはじめ世界各国がハイリスク群に対してワクチン接種を積極的に薦めている理由もここにあります。
(略)
 現行のインフルエンザワクチンは、ウイルスに対する感染防御や発症阻止の効果は完全ではありません。従ってワクチンを接種してもインフルエンザに罹患する場合があります。

 ここで注意すべきことは、一般にはインフルエンザと「かぜ」が区別されずに混同されていることです。(略)ほとんどの人は冬季には「かぜ」に罹患しますので、これらのインフルエンザウイルス以外の「かぜ」ウイルスの感染をうけて「かぜ」をひいた場合でも、「ワクチンを接種したのにかぜをひいてしまったので、ワクチンは効かない」との誤解が生じることとなります。

 インフルエンザワクチンの効果に関しては、(略)しばしば「有効率75%」などの言葉が使われていますが、これは、「ワクチン接種者100人のうち75人が発症しない」ということではなく、「ワクチン接種を受けずに発症した人の75%は、接種を受けていれば発症を免れた」ということを意味しています。このことが理解されていないことも、インフルエンザワクチンの効果に対する不信感を助長してきた一因であると考えられます。

 米国では毎年のようにワクチンの効果を調べて公表しています。これによりますと、ワクチン接種によって、65歳未満の健常者についてはインフルエンザの発症を70~90%減らすことができます。また、65歳以上の一般高齢者では肺炎やインフルエンザによる入院を30~70%減らすことが出来るとされています。老人施設の入居者については、インフルエンザの発症を30~40%、肺炎やインフルエンザによる入院を50~60%、死亡する危険を80%、それぞれ減少させることが出来るとされています。

 このように、インフルエンザワクチンの効果は100%ではありませんが、高齢者を中心としたハイリスク群において、肺炎などの合併症の発生や入院、死亡といった重篤な健康被害を明らかに減少させる効果が示されています。これはWHOをはじめ世界各国でも広く認められており、この事実に基づいてハイリスク群を主な対象としたワクチン接種が勧告され、その実施が積極的に進められています。”

 ワクチン接種しようがしまいが、ほとんどの場合、そもそもインフルエンザにかからないほうが多いかもしれません。しかしイザかかったとき、「ワクチン接種を受けずに発症した人の75%は、接種を受けていれば発症を免れた」ことになります。
 まあ、若く健康なら、今の医学なら、発症しても少々寝込むくらいですむかもしれません。しかし高齢者など(ハイリスク群)は「死亡する危険を80%(略)減少させることが出来るとされています」

 違う例に置き換えてみます。「自分は」今まで火事や交通事故にあったことがない。そんな起こらないことのために、保険に入って保険金を払うなど馬鹿らしい。
 そうでしょうか?



 医療と食品、ダイエット(特に食べ物の種類や量)に関わることは、マジで命やQOL※に関わるので、自分や家族を大切にしたいなら、そのへんのTVや本やWebやママ友情報ではなく、情報の信頼性を確認しましょう。彼らは正しさより視聴率やPV、ウケを重視します。
 他人の命とか正直どうでもいいけど、どうでもいい質問で時間とられて、超過勤務を強いられる医者が可哀そうなので。

※QOL:クオリティ・オブ・ライフ。生活の質。命は助かっても、手足が動かないとか、毎週透析に通うとか、食事制限とかがあると、QOLが下がると考えます。

 これらは、少しでも見込みがありそうなものは、しかるべき研究者が研究しています。でなれば、効果ナシと証明済みです。
 「大学教授が論文で認めた」とかもっともらしい説明してても、元の論文とほぼ無関係な捏造(ねつぞう)だったり、金で学位を売るニセ大学(ディプロマミル)の学位を買ったニセ教授が、前述の金で論文載せるニセ論文誌に載せた論文のことがあります。

 代替医療なども、大学病院の研究室とかでやってる場合があるので、上手くすれば実験に協力する名目で医療費が安く上がります。


 今から3年前、2016年に、医療デマ飛ばしてるWebメディアに厚生労働省がキレて話題になりました。その時、医療記事の信頼性の見分け方も話題になったので、知らない方はご一読を。

WELQ問題からネット上の医療情報はどう変わったのか 幻冬舎 ウェブマ (*5)

"素人による不正確な医療記事が粗製乱造されたWELQ問題
(略)
 サイトで大量に公開されていた記事のほとんどが、医療に関して素人のライターが書いたものだったのです。
 医療情報は人の命に関わります。その医療情報に対する不誠実なメディア運営は、大きな批判を浴びることとなり、ネットにある医療情報の信頼性を揺るがす一大事件となりました。
(略)
著者や監修者のプロフィールから信憑性を読み解く

 専門家であるならまだしも、医療知識のないユーザーは、情報の信憑性をどのようにして見極めれば良いのでしょうか。

 内容の真偽は難しいにしても、医師の見地の下、しっかりと作られた記事であるのかを見極めることはできます。まず大事なのは、記事の著者は誰なのかに注目することです。医師が書いているのか、ライターが書いているのか。ライターであるならば、医療知識はどれほどあり、その分野における実績はあるのかどうか。記事に著者プロフィールがあれば、それらを確認してみましょう。

 医師という肩書きがあればすべてを信頼していいわけではありません。その分野の専門でもない医師が記事を監修しているケースもあるからです。記事の内容が気になる際は、著者や監修者のプロフィールがどこまでたどれるかでその信頼性を確かめることができます。

インターネット上で禁止されている医療に関わる表記

 また、医師によって意見の割れる内容も存在するので、同じテーマの記事を見比べるだけでは判断が難しい部分もあります。しかし、見極めるためのポイントはあります。改正医療法により、(略)”


”内容の真偽は難しいにしても、医師(専門家)の見地の下、しっかりと作られた記事であるのかを見極めることはできます。まず大事なのは、記事の著者は誰なのかに注目することです。医師(専門家)が書いているのか、ライター(記者)が書いているのか。ライター(記者)であるならば、医療(専門)知識はどれほどあり、その分野における実績はあるのかどうか。記事に著者プロフィールがあれば、それらを確認してみましょう。

 医師(専門家)という肩書きがあればすべてを信頼していいわけではありません。その分野の専門でもない医師(自称専門家)が記事を監修しているケースもあるからです。”

 これは医療に限らず、科学ネタ、歴史ネタ、文学ネタ、経済ネタ、ITネタ、いろいろな分野に応用できる見極め方だと思います。TVや新聞もあてになりません。Webメディアはもっとあてになりません。(記名記事なら、記者/ライター単位であてにできる方はいます)


 ここに書いてあるように、医師かどうか定かでない匿名人物が書いたこのクソエッセイなど信頼せず、出典が信頼性のある記事か、各自判断してください。私は読者の命に責任を持ちません。
 自分や家族の命やQOLを守るのは、自分しかいません。マスコミやメディアやママ友やクソエッセイは責任取ってくれません。

 問題が起きた時、この中ではママ友がヤバイ。噂を信じた自分が悪いとはいえ、噂を流した相手を恨まずにはいられない。近所の人間関係がギクシャクすることもあるようです。

 厚生労働省は、国民の健康を守る云々(うんぬん)という理由もあるでしょうが、高齢化と増大する医療費に頭抱えてます。大蔵省、今は財務省でしたか、からも何とかしろとせっつかれています。
 広告収入のため医療デマ記事で、”肺炎やインフルエンザによる入院を30~70%”増えると、その尻ぬぐいのために(所得や年齢によりますが)3割負担の残り7割を健康保険金積み立て、もしくは税金で払わねばなりません。そりゃ厚生労働省もキレるでしょう。実際どうか知りませんが、お仕事小説の登場人物(キャラ)に感情移入したつもりになると、そう思えます。

 デマ記事に騙(だまさ)されるのは自業自得とも言えますが、騙されない人と同じおサイフ(保険・税金)から出費されます。

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(*1) インフルエンザは呼吸するだけで感染する? CareNet 2018/02/02
https://www.carenet.com/news/general/hdn/45456
(*2) インフルエンザQ&A 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html#q10
(*3) influenza (seasonal) 世界保健機関(WHO)
https://www.who.int/en/news-room/fact-sheets/detail/influenza-(seasonal)
(*4) インフルエンザワクチンについて 国立感染症研究所
http://www0.nih.go.jp/niid/topics/influenza01.html
(*5) WELQ問題からネット上の医療情報はどう変わったのか 幻冬舎 ウェブマ
https://www.gentosha-webma.com/clinic/welq/
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