第6話

文字数 294文字

「逆に問うが…」
日向は、太明に背を向けたまま、尋ねる。
「私が、狐狸妖怪の類ではないかと、疑いは持たなかったのですか?」
今の今、考えていたことを見抜いたかのようなその問い。

まるで、切り取られたかのように周囲から浮き出て見えた、その姿…。
ほんのわずかな笑みで、ようやく初めて「人」に見えた…。

しかし、太明は、低く笑い
「そうですね。…思わなかった」
と一言、答えた。
しかし、それはあまりに、きっぱりとした口調であり、それが日向を驚かせたらしい。
手を止め、また、視線を、ひた、と太明へ合わせた。
そして、一言。
「そうですか…」
とだけ答えた。
……やはり、妙なやつだ。
太明は、再度、そう思い、一人頷いた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み