ブランコと根

文字数 267文字

 メッキの剥がれたブランコが風に揺れて寂しそうな音を立てている。最後にここに来たのは何年前だろうか。あの頃の僕は、誰かのために心を動かすとか人を傷つけないために感情を抑えるとか、そういったことはできなかった。でも真剣で、自分の気持ちに正直だったと思う。たぶん幼いってこういうことなのだろう。
 
ブランコの赤茶色にさびた腕をつかむと音は止まって、周囲の蝉たちの鳴き声がより一層高まったように聞こえ、心細い感じがした。ブランコの下の少しくぼんだ地面は乾燥して割れており、その隙間から雑草が顔を出している。おまえ、根っこが長いタイプの奴だな。
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