第2話

文字数 254文字

それから何日経っただろう。
彼らはいつもと変わらず毎週金曜お決まりの場所にいて歌っていたが、私は悲痛な顔立ちで棒立ちしているしか出来なかった。

元よりコミュニケーションが上手い方ではない。
最初に何て声をかけて、この足跡楽譜を鞄から出せばいいか分からない。
そう私がイジイジしている間に、彼らバンドを取り巻くオーディエンスの輪は徐々にその膨らみを増し、最初は目と鼻の先にいたベースの彼の姿は人影で全く見えなくなった。

石橋を叩いて叩いて渡れずに見ていただけの私は、ギュッと鞄のファスナーを閉じて、またもその場を去った。
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