第1話

文字数 1,402文字

「暑い……腹減った」
狭いアパートの一室で、小澤 颯人は着古したタンクトップにボクサーパンツ1枚という格好でダラダラとしていた。
歳は17歳。金髪に赤のメッシを入れた自称イケメン(笑)中学時代に野球部で鍛えた肉体が自慢だ。
3年間行くはずだった高校を1年で中退。
その後はこうして日中ダラダラする生活を送っていた。
父と息子の2人と、同居人に犬。2人と1匹の生活。
父親からは高校に行かないなら早くバイトでもしろと言われながらも、オンボロアパートで慎ましく生活していた。
そんな小澤家の慎ましい部屋の一角でジワジワと鳴く蝉の声をBGMに、暇つぶしにつけたままのテレビをあてもなくガチャガチャとチャンネルを変えまくりながら見ていた。
開け放たれた窓からは生温い風が時たま入ってくるばかり。
全力で運転を頑張ってくれていた扇風機は今しがたご臨終召されたのも記憶に新しい。
寝転べば、接触した畳と皮膚の体温で暑い。
汗をかけども下がるはずの体温はまったく下がらずにむしろ上がっている気がした。
こんな地獄な昼間。
せめて寝れば暑さが気に無くなるのでは!?と布団に潜り込むも、畳の方が涼しいという事実に気づいただけで暑さを忘れる事も、空腹を紛らわせる事も出来なかった。
「……せめて……クーラーが使えたら……」
穀潰しにかける金は無い!と父親からクーラー禁止令が発令された。
遊びに行く為のお小遣いという名の軍資金ももちろん無い。
ホントに日がなおばあちゃん犬の《シーさん》と2人でゴロゴロする他無かったのだ。
腹が減ったらご飯を作れば良いのだが、暑さの為に台所に立つのも嫌だった。
火を使えば熱い。暑いから温かい飯は食べたくない。
冷凍庫にある氷が本日の彼の昼食のメインディッシュであった。
もちろん、シーさんにはちゃんとカリカリFoodをガラゴロお皿に献上して差し上げましたよ。ハイ。
(外も家も暑さが変わらないなら、どこにいても一緒じゃね??)
ふいにそんな事を思いついた。
家にいて何もすることがなくダラダラするなら散歩でもしたらいいのでは無いか??
最近、暑くて動きたくなくてシーさんの散歩をサボっていた颯斗だった。
思いついたらそれが正しいものとしか思えなくなっていた。
だか、外は暑いのは間違いない。
行くか行かざるか.......家の中より暑いのなら颯斗にとって外は行く価値のない場所だ。
だがそれは行かねば分からない。
行って後悔はしたくないが、行かないで後悔もしたくない。
基本的に人のせいにして自分は悪くない主義の他力本願で生きている颯斗にとって動く決定的な口実が無かった。
だか、行きたい!という気持ちもある。
とりあえず立ち上がった颯斗に、なにかをさっしたシーさんも眠っていた身体をサッと起き上がらせた。
ハッハッと息をあがらせて玄関で待機しだす。
颯斗にとったらこのシーさんの行動が彼を外へ連れ出す口実になったのであった。
(シーさんにこんなに期待されたら行くしかねーな!)
玄関で待つシーさんの首輪にリードを取り付ける。
ふと自分の格好を思い出し、焦って颯斗はシーさんを玄関に待たせて服を着込んだ。
タンクトップの上にシャツを羽織り、ボクサーパンツの上に半ズボンを着ただけだ。
歩き慣れたサンダルを履いたら、灼熱の我が家からお供を引き連れて颯斗は飛び出して行ったのである、まる‪w‪
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