1_プロット

文字数 1,567文字

「樹木医のお弟子さん」プロット
起)中学受験を控えた同級生と、自分のように公立校に進学する生徒が交じり、ざわざわしている秋の夕暮れ、主人公の小学六年生女子の舞本樹里は、通学路で大人と子どもが言い争っているのを見かける。「俺は樹木医の代理だ。この街路樹はいますぐ切り倒さないと危ないって言ってんだろ」「じゃあその言葉を裏付ける、おじいさんの方を連れてきなさい」「だからジジイは具合悪くて来れねえしこの木は危ねえっつってんだろ」そっと迂回して木の陰に隠れるように通り過ぎようとする樹里を、言い争う子ども、よく見ればクラスメイトの男子の玉木総士が呼び止めた。「その木は中が腐ってるから危ねえよ」言葉通り、木はミシミシと中央から裂けていく。裂ける木の断面に、樹里は白く不快な粘っこい何かを見た。

承)総士がかばったことで無傷だった樹里は、総士の付き添いで病院に行く。病院の中庭の木にも人にも、白いものが集まっていることを樹里は見る。気がついた総士は樹里に、弱った木に集まる何か「白いもの」があることを説明した。飛蚊症だと説明される視界のちらつきも、もしかしたら何人かはそれを見ることができる人なのかもしれないことと、総士とその祖父は、樹木医の肩書で全国の樹木を診察しながら、白いものが人に悪さをしないように働いていると説明する。「白くて悪いもの?」「集まるとそう成りかねねえ。ただ、それを呼ぶときは白いものと呼べ、縁起でもねえ」病院の木も弱って、白いものが集まっていた。樹里の特技である口の上手さによるとりなしで、木を治療することを許された総士は、木に注射針を刺して栄養を注入することで白いものを散らし、樹里はその白いものの散る美しさに目を奪われた。樹里は、口下手で短気なのに情に厚く入れ込みやすい総士の仲介役として、様々な木を診察する。「勉強家のすぐそばの鉢植え」「校庭の老桜」「海辺の喫茶店の松」関わる人々と白いものを見て、樹里は自分はどう生きるべきか考え始める。

転)総士は将来樹木医として全国を巡るため、全国でも有数の進学校の受験準備をしていた。「樹木医やりながら食ってくには頭が良くねえといけねえみたいだからな」おぼろげに、今後も総士と行動を共にしたいと考えていた樹里は動揺する。受験を決意するには時間も準備も足りず間に合わない。将来のことを考えたことがなかったことと、その判断を人にゆだねようとしていた自分に気がついた樹里は、総士と距離を置く。折しも交渉が難しい「絵馬がかかる場所のご神木」の診察をしようとしていた総士は、持ち前の気性の荒さと子どもであることで信用されず、「白いもの」が「白く悪いもの」に変わるのを止められなかった。白く悪いものは神社を蝕もうとしていく。

結)前も見えない大雨のなか樹里の家に訪問した総士は、樹里の力を借りたいと、心から頭を下げる。将来ばかり考えて現在がおろそかになりがちな自分と違い、今を冷静に分析し努力する樹里を尊敬していることを話す総士に、樹里は目を丸くする。お互いにないものを補い合っていたことを確認した二人は、樹里の観察眼からくる話術によって、同級生だった神社の息子や神主を言いくるめて、大がかりな神木の治療と、白く悪いものを鎮める儀式に成功する。終わった後の雨上がり、樹里は楽しい現在と同じように、総士と今後も行動を共にしたいことと、けれど受験には間に合わないことを話す。話し合いの結果、将来を現在と同じくらい楽しむために、それぞれの道を歩み力をつけようと二人は決める。「また高校に通おう。今の私にはこれが精いっぱいでふがいないけど」「会うのが遅かったことを言っても仕方ねえよ、一緒の中学行きたかったけどよ」いつもとは違い、将来のことを考えても機嫌が直らず、心から不満げな総士を、樹里は笑った。
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