長歌  塩山の桃果を想ふ

文字数 365文字

 【時は春、妻と塩山訪う。花共盛りなり。亡き父の桃果狩りたる、忘がたし。想ひは今昔を惑ふ。今は春、昔は秋】

 塩山の桃果を想ふ


 桜花咲きて散りにき
 桐花は今を盛りと
 ひさかたの藤花にほふ

 春の日にあしひきの
 山にも里にも
 コジュケイの鳴きし響めば

 思うどちいざうち群れて
 出で立ち見れば 山高み

 見つつ過ぎ行く塩山の
 のどかな里の陽の光
 いや増し照らす

 君がため服取り持ちて
 千野橋渡る

 そこをしもここもかしこも
 をしげなく桃花にほふ

 【懐かしき場所に至る、
 われと桃果狩りたる亡き父の、次々と桃取りて食いて捨てる、その笑顔がわれを見る、その目がわれに語る】

 春さらば花の盛りに
 秋さらば実りの時に
 かくしつつ君と過ごさむ

 かくてこそ生きる甲斐あり
 絶ゆる日なくに


 君がため重荷を負いて見る里は
 すもももももも
 見れども飽かぬ
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