事件簿 その1

文字数 977文字

「よし、みんな、出動だ。」
 ボスの掛け声で、ミンファ、シード、ソレラの三人は、腰を上げた。今日中に犯人を挙げなくてはならない。

 昨日、中学一年生の美紀ちゃんが、暗い顔をして帰ってきた。美紀ちゃんの入学した中学校は、自然に囲まれた築十数年のきれいな公立中学校だ。
 ママが「どうしたの?」って聞いても、パパが「困ったことがあったらいつでも相談に乗るぞ」って言っても、美紀ちゃんは返事をしなかった。大人なんて騒ぐだけで役に立たないって顔に書いてあった。
 それなら、われらの出番だ。われらは、美紀ちゃんがまだ三歳で、われらとお話ができていたころからの付き合いだ。いまでは、もう、夢の中でしかお話ができないが。
 われらは、原因の究明をしに、美紀ちゃんの夢に侵入した。
 原因は、自転車カゴのごみだった。昨日、帰ろうとしたら、自転車かごが草の葉っぱだらけになっていたのだ。いじめ?なぜ私の自転車に?クラスの子?それとも先輩?美紀ちゃんの疑問に、われらは答えることができない。

 早朝、われら急造探偵事務所は会合を行った。われらの名称は、ドレミファ探偵団に満場一致で決まった。そして、方針も決まった。まずは、張り込みだ。
 「行ってきまーす!」
 美紀ちゃんが出かけた。尾行するぞ。
 早朝の町を、自転車で駆け抜ける。つい一か月前までは、集団登校で歩いて通っていたのでこのスピード感がたまらない。自転車小屋でヘルメットを脱ぎ、かごに納める。
 「おはよーっ」友達と話しながら、カバンを持って校舎に向かっていく。
 中学生が次々に現れ、校舎に吸い込まれていった。誰も、怪しい行動はしていない。犯人は今日は行動しないのか?

 おや?怪しい影が。草を…くわえている?そいつらは、美紀ちゃんの自転車かごを草でいっぱいにした。自転車かごの中には、優しい草のベットが出来上がっていった。
 犯人は、ペアの小鳥だった。
 犯人は挙がったが、どうやってこいつらをサツに訴えればいいのだ?

 妖精にできることは限られている。美紀ちゃん、安心しろ。犯人は、クラスの子でも、先輩でもなかったよ。帰りにカゴを見れば、美紀ちゃんも人間の仕業でなかったと気づくだろう。われらは、小鳥らに、この自転車かごには持ち主がいて、巣を作ってはならないことを言い聞かせてやった。一件、落着。これからも、しっかり見守っているからな!
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登場人物紹介

ボス 一番年長の妖精。といっても、まだ200歳。今のところ、美紀ちゃんの庭に集まった四人の妖精のボスとなっている。

ミンファ 特技動物としゃべることができる。理知的な妖精。イケメンの小鳥の姿をしている。

シード 人間の夢に泳いで侵入し、人間とおしゃべりすることができる。不思議な人魚の姿をしている。

ソレラ 特技はまだない。世話好きな女の子の妖精。かわいいウサギの姿をしている。

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