タマちゃん

文字数 8,746文字

第1章 タマちゃん

タマちゃんは右斜め45゜から笑っていた。
(どんなんや)
飲み会の席、「懐の深い人がええワ」タマちゃんが言う。
(俺は罪の深さなら、誰にも負けへんねけど、、、)ボクは思う。

それから、タマちゃん、「風邪っぽい、風邪っぽい」と言いながら、
1本、2本、3本、4本、ゴホン(5本)、ゴホンと、プラス10本の咳をした。
ボクはタマちゃんの咳に合わすようにタバコを吸っていく。
 
熱っぽいから色っぽいのか? 
色っぽい、色っぽいーー 今夜のタマちゃん、凜とした色気。
癒しの音色、凜、凜、凜と鳴った。

ボクは月に向かって歩きたいような気分に、、、

店を出ると、空はまだ不透明なグレイだった。
未熟なグレイ、生まれたてのグレイ、ぼわっとしたグレイ。
(そない言うことないか! )
まるで、ボクの不純な心みたい。

タマちゃんが家へ着く頃、空は透明なグレイになっているのかな?
純粋なグレイ、確かなグレイになっているのかな?
ボクの心も無垢になっているのかな?

タマちゃんの瞳に、ボクの心が澄み切った無垢の色に映るのかな?


第2章 妄想

「あっ!ヒコーキ雲」タマちゃんが空を見上げてつぶやいた。軌跡だ、軌跡だ。
「奇跡ってーー 白いすじ」。虚像やね。ヒコーキの通ったあとにヒコーキ雲の白い筋だ。
「じゃ、うろこ雲は? 」、「いわし雲は? 」タマちゃんが続けてたずねる。
「魚の通ったあとにうろこ雲。鰯の通ったあとにーー いわし雲」。
軌跡だ、虚像の軌跡だ。
「奇跡って、白い筋」、「ひつじ雲はひつじの通ったあとだね」と言いながら、
タマちゃんはなにかをさがすようになおも空を見上げていた。
通る、通る。人だって、まだらに通る。
「まだら雲だ」とボクは言う。

「ユウの妄想がまた始まった」タマちゃんが言う。
「俺は妄想によって現実との距離を縮めているんだよ」。
人は妄想という自分の物差しで人を測る。また自分の秤で人を量る。
「ーー 妄想秤」と言う。
「そんな秤あったっけ」、「意味ちゃいまっせ」。
ボクはタマちゃんに笑いながら答える。
妄想って居心地いいから、でもつかの間やから。妄想のなかで人は現実との距離を測っていくんだ。距離間違って、人は知らず知らずのうちに人を傷つけて、ーー 救われんね。

人は人と行き交う。いつだって行き交う。社会の仕組みだ。あの人とはこの距離、この人とはあの距離、絶対距離ってある。普通の距離、サークル距離、ジャンル距離、ライク距離、ラヴ距離、ラウンド距離、デイアな距離、ラスト距離。距離の概念のない世界って、居心地いいやろね。 
「それが妄想やんか」とタマちゃん。
「多分、ニャンニャン距離っていうんやろ」。
ボクは消え入りそうなヒコーキ雲を見上げながら言った。


第三章 「やれば出来るーー 」って?

タマちゃんは正社員、ボクは中途入社の契約社員だ。債権回収の会社だ。キャリアは他の正社員、否、役付者よりも断然ボクのほうが上。自慢じゃないけど、仕事も出来た。

タマちゃんと初めて関わった時、ボクは驚いた。ボクは端末からアウトプットした書類をとりにコピー機へ。その時、タマちゃんと重なった。ボクの書類の方が早いのに、タマちゃんは「アンタは契約社員でしょ」と、言わんばかりに、ボクを押しのけ書類をとりに、「おいおい、おいおい、、、 」ボクの書類はゴミみたいな扱いで、、、 。
あれはタマちゃん特有の自己主張、それに他者をはかるモノサシと。
(意地悪をして相手がどうでるか? )油断ならぬタマちゃんだ。ボクはキョトンとしていたばかり。

タマちゃんとはといろんなハナシをしたよ。そのなかで、タマちゃんが仕事で悩んでいるとき、「やれば出来るーー 」って、ボクがいったコトバ。
シンブルなコトバに秘められた深み、極み、巧み、厚み。「み」がよっつ、「耳(みみ)」ふたつ、道理やね。自分で言って感心!  

その時、タマちゃんから来たメール。
有り難う。「やれば出来るーー 」って? 
真実のクサビ打ち込められたよ。好きなお方に抱かれたような、しばらく、うっとり、うっとりよ、呆うけたよ(笑)。
(おかしなタマちゃん)

真剣にやれば出来る、誠実にやれば出来る、一生懸命やれば出来る、明るくやれば出来る、真面目にやれば出来る。真剣しかり、誠実しかり、どんな冠コトバも受け入れてくれる、「やれば出来るーー 」って? 
ユウのコトバを噛みしめている。そのコトバの懐の深さ。
まるで、アノお方みたい(笑)。
(タマちゃん、わけわからんワ)

もう、一回言うんよ。「やれば出来るーー 」って? ワタシはユウのお偉いコトバに感動したんよ。だから、ワタシは黄泉(よみ)の国から黄泉かえることができたんよ。新しいアドレナリンが沸々、沸よ。

 追伸 黄泉って冥土(めいど)、だから、黄泉の国ってメイドインジャパン。
(タマちゃん、面白すぎ! )


第四章 夕子、タマちゃん、ピエロの涙

「行ってみるしか あらしません」タマちゃんが京言葉を真似て言った。だから天気の良い日、タマちゃんと渡月橋、嵐山から金閣寺へ行った。初めてのデートだ。歩きながら、ボクたちはコトバ遊びをする。

「癒されたい」って、渡月橋わたりながらタマちゃんが言う。
「空は晴れてるよ。ソラソラ(空々)に抱かれたら」って、ボクは答える。

目のまえに嵐山、大覚寺。随分、歩いたネ。
「迷っているの、心が宙をさ迷って」、子羊のような目をしてタマちゃんが言う。
「チュウチュウ(宙々)に吸ってもらったら」って、ストローハットをかぶったボクは答える。

「不安感いっぱいやねん」金閣寺を前にして、タマちゃんが言う。
「バクバク(漠々)に食べてもらったら」って、ボクが答えている。

「京都は、景色だけや あらしません。ソラソラ(空々)も、チュウチュウ(宙々)も、バクバク(漠々)だっている」。

また、ある日、タマちゃん、それに夕子と一緒に丸山公園へいった。
「夕子? 誰? 」誰やろね。

四条通りを東へ。八坂神社の交差点の角、明るく小綺麗な菓子店でつつましく夕子は待っていた。
「待ったぁ? 」「う~ん、ちょっとだけよ」と言って、夕子は腰をくねらせた。エロな仕種やね。夕子の匂いはいつも甘く切ない。ボクの欲情をそそる。八坂神社前の信号が赤の時代から青の時代へ、横断歩道をゴー、ゴー。

ボクの右手は夕子にあづける。左隣にタマちゃんがいるのに、おかまいなし、夕子はボクの腰に脚に纏わり付いてーー あれぇ! あれぇ!「やめろや」でもちょっとうれしい。
タマちゃんも笑っていく。トライアングルな関係なのに、タマちゃんは笑い飯のように微笑み返しだ。

円山公園から知恩院へ、その三門を見上げる。おぉーー なんか手を合わせたくなるね。男坂は空まで続くように。ボクは右手に力をこめる。夕子が少しゆれて、こたえる。女人坂を上がり、御影堂まで。樹木は鏡のような池に映え、いにしえまで幻想的かつ立体感溢れている。

「夕子? いったい誰やねん」誰やろね。
「なんかおなかすいたネ」タマちゃんが言う。

「食べよか」ボクは手に持った袋を見ながら言う。
袋のなかにはつぶあん入り、生八ツ橋『夕子』だ。

「なぁ~んやね、夕子って? 生八ツ橋の名前か」
「そうや、つぶあん入り、生八ツ橋『夕子』でおます」。 
「いただきます」タマちゃんが言う。

『夕子』は蜜の味、ファンタジックやね。口のなかで可憐に、そして清楚にはじける。もういちど「いただきます」ボクも言う。

「おいしいネ」タマちゃんがなおも言った。

帰り道、ボクらは新京極で三角帽子をかぶったピエロを見た。ピエロはいつも涙を流している。
「哀しい人のために俺が泣いてやる」と、一粒、二粒、三粒、ピエロの涙だ。ピエロは歩く。お道化ながら歩く。人々はその様を見て笑う。ピエロは人が笑ったぶんだけ涙を流す。ピエロは歌う。ピエロはなおもお道化て歩く。
「世の中の不幸は俺が背負ってやるさ」と、古都を訪ねて、ピエロは行く。

ピエロはいつもどこかで歌っている。笑いと涙が同居している、まるで人生。


第五章 キツネネコ

金星の探査機って「あかつき」だったっけ。5年間、行方不明だった。宇宙からこぼれ墜ち、どこかさまよっていたのだ、まるで人の心みたい。「あかつき」は時間の軸からちょっとずれただけ、でも宇宙では致命的、前へ進めない。逆行していく。一年一秒の速さで戻っていく。十七秒戻った「あかつき」。カッコウ カッコウ カッコウ カッコウ カッコウ と過去までないてーー (静かな湖畔♪か)
でも、今は、戻って「あかつき」の奇跡の軌跡を起こしている。

だから十七年も前、ボクとタマちゃんは何故か同時に西の空を振り返った。「宵の明星」が明るく、宇宙の大いなる意志みたいに厳かな輝きを放っていた。
「金星や」ボクが言った。その頃のタマちゃんはいつもなにか言いたげにボクを見ていた。
 
タマちゃんは債権の仕入課、ボクは回収課にいた。タマちゃんは正義感溢れる性格、上司には(社長にまでも)、刃物を突き付けるように意見を言うし、後輩、特に男性の後輩には厳しかった。だから、仕入と回収でペアを組むのだが、皆嫌がった。そんなところへボクが来たのだ。キャリアがあってかなり年上の契約社員、はたして、はたして? ボクとタマちゃんはペアを組んだ。皆、興味深げに、、、 どうなることやら?? と。
 
タマちゃんの仕事振りはいつも全力姿勢、働き者のノモケマナだ。(しんどいやろネ)。ボクはイージーゴーイング、キリギリスのようにナマケモノだ。
 
でも、タマちゃんは、いつの間にか、仕事終わりは「ユウのまえでは素(す)になれるワ」と、タマちゃんの表情になる。ボクだけに見せる表情だ。キツネネコみたいだ。コン、コン、ニャォ、ニャォと泣く。(どんなんや)。

そして、ボクから離れればー。キツネネコからヒトになる。くせ者タマちゃんになる。タマちゃんはいろんな面を見せる。玉、珠、たま、そしてタマちゃん、切り口は多様。百人のタマちゃんがいる。ボクはどんなタマちゃんでも好きだった。


第六章 誰かがボクを呼んでいる

タマちゃんと、何故か? 親しくなり始めた頃、
「奥さんは、妻戸さんのこと、何て? 呼ぶの? 」タマちゃんが聞いてきた。
「ふぅ~ん、、、 」ボクがコトバを濁していると、
「私は、プライベートのとき、これからユウって呼ぶワ」
(ハタチも年上のおっさんつかまえて名前呼び捨てかよ~ )
「えっ! 不倫ごっこ? 」
「彼氏も名前を呼び捨てだから、、、 」タマちゃんは訳のわからんことを言いながら、練習するように、
「ねぇ、いいでしょう、ユウ」と笑った。
「奥さんが羨ましいワ、ユウ」タマちゃんはなおも言う。
「ボクは彼氏が羨ましいよ」ボクらは笑った。笑いは急接近のツールやね。

「疲れるんよ、あかん、もうあかんワ」タマちゃんが彼氏を振ってきた。
「なんやユウといるときみたいに素直になれんワ」。
「なんやろね」、「なんやろね」ボクはオウム返しをする。

女はそんな簡単に割り切れるイキモノなんやね。まるで偶数を2で割っていくみたいに。女って魔物やね。振り返らないネ。男はいつまでも引きずる・・・ 割り切れない。1÷3みたいに、それこそ永遠に。いつまでも、引きずって、引きずって。
―― 振り返る。

誰かがボクを呼んでいる。ボクは・・・ また、ホラ、ホラ、、、 振り返った。

誰? 妻? タマちゃん?


第七章 どちらが本物? どちらも本物!

タマちゃんは土足でボクの邪心へ入ってくる。ドアもノックせずに、礼儀をしらぬ奴、サディスティックな疾風! ボクのなかのマゾヒズムを目覚めさせようと、、、 
やばい、やばい、やばいでしょう。

「考えれば、考えないより正しいことが出来る」仕事中、髪をアップにまとめ上げたタマちゃんが言う。
(リアルだね)。

「考えなくったって、考えたより正しいことが出来る」仕事中と真逆のタマちゃん。
仕事から解放され、髪をだらりと、感性のままふわふわとして、タマちゃんは言う。
(どちらが本物? どちらも本物! )
 
「世界は実像と虚像で成立していく。リアルとバーチャルで維持されていく。そんな気がする」と、タマちゃんは言う。
(そんなもんかね)。

「そしてその成立の仕方にもいろんな関係がある。例えばディアな関係、実像と虚像か一体感のうえで成り立っている」タマちゃんワールドだ。

「また、例えば補填の関係、鉄棒の前回りと逆上がり、実像は前回り、地上に向けてまわる。虚像は天空へまわる逆上がりだ。前回りで見えないもの、逆上がりで見ぃっけ、逆上がりで見えないもの前回りで見つける。そして、世界はひとつの円になる」タマちゃんワールド全開だ。
 
「ちっちゃい頃、青空を見たくって、一生懸命、逆上がりの練習をしたもんよ。そんな360度の実像と虚像。実像を虚像が支え、虚像を実像が裏打ちする」ボクはタマちゃんのコトバに納得する。
(ボクらは、ある種、現実と虚構のハザマみたいなところで生きているのかな)。

気だるい昼下がり、―― このまま、このまま、このまま繋がっていたい―― と、タマちゃん。歯車がボクらを乗せて回る、回る、、、 タマちゃんは上手にバランスをとりながら回る、回る、、、

―― このまま、このまま、、、 
タマちゃん、あれは真夏のイリュージョン? ミラージ?


第八章 脳内アプリ

「支店長は人の意見に対し、あれも駄目、これも駄目、みんな駄目」タマちゃんが例のごとく支店長に刃物突きつけて、「それじゃ、支店長の意見を言って下さい」と、紋を切る。ボクはリアルのなかにいた。

「イザナミとイザナギは凹と凸でまぐわう。凹は凸を浄化し、凸は凹を浄化する」タマちゃんは笑いながら言う。ボクは戸惑いながらバーチャルのなかにいた。攫(さら)われていく身体。

このギャップって? 何? リアルとバーチャル?

タマちゃんいわく、ボクの脳内は秘、秘、秘、、、秘ばかりで真ん中に悪があるらしい! どうやら、タマちゃんが脳内アプリで、ボクを診断したらしい。

「ユウは秘密主義の悪玉だワ」タマちゃんが言う。
「秘密主義? 」
「秘密主義というのは、ある種、自意識過剰かな? 」タマちゃんが答える。
「悪玉? コレステロールか! 」
「ユウはナルシストのコレステロールや」タマちゃんが云ったとき、ボクは大きな欠伸をした。
「お尻の穴まで見えそうなぐらい大きな口! 下品やね」タマちゃんは笑う。

タマちゃんの脳内は、右左、オンオフ、イエスノー、主従、古今東西、吉凶、表裏一体と、対義語が羅列しているのかな? それらが出たり入ったり、あっ! 出入、これも対義語熟語やないか。

ボクも調べる。タマちゃんを診断、脳内アプリ、ゴー!
タマちゃんの脳内は外周は悩、悩、悩、、、、
その内っかわは金、金、金、、、、
続いてH、H、H、、、、(やっぱり)
脳の真ん中には家、家、家。

何やねん! これ、  これ、何やねん!


第九章 タマちゃんはミーハー

タマちゃんはミーハーだ。音階じゃないよ! 
(それはドレミーハーやないか)
 ミーハーの対義語って? 何やろ? ソラシド? 
(音階から離れろって! )

「そもそも、ミーハー? って? どういう意味なん」
「<ふわふわ>した感じかな」タマちゃんは答える。
仕事中なら、「流行にかぶれやすい人」タマちゃんはそう言うやろね。

「じゃ、対義語は? 」
「<ガチガチ>かな? 」タマちゃんはカタカナで言う。(どんなんや! )
仕事中なら、「一途、一筋、クール、オタク」タマちゃんはそう言うやろね。

タマちゃんは、仕事中は<ガチガチ>、ボクのまえでは<ふわふわ>かな?

タマちゃんはそんなオポジット(反対)の中で上手く折り合いをつけながら生きているのかな? 人が生きるって? そういうことかな?


第十章 あぁ、名月や、名月や

月が厳かな儀式のよう天空に浮かび上がった。秩序を形で表現しなさい、と言われればボクは満月を描くだろう。黄色い秩序のフォルムだ。

「あぁ、名月や、名月や! 」タマちゃんが言う。
名月は悠久のヒストリーを凝縮したかのように照らしている。さらに、天外の行く末までわきまえたかのように昇っている。

あぁ、名月や、名月や、とタマちゃんとボク。月に向かって歩いていく。アナザースカイまで行くかのように。

「もう、帰らなきゃ」タマちゃんはかぐや姫のように言う。
「どこへ帰る? 」
スリーD? スペースタイム?
それともパラレルワールドまで

「もう、帰らなきゃ」、「もう、帰らなきゃ」と、三回、タマちゃんが言った。

三回言えば、魔法がとける、、、、とけてしまったのだ。涙とともにとけてしまったのだ。ラブストーリーが突然なら、別れも突然、必然、当然だ。そうして、ボクらはそれぞれの家路を急いだのだ。

タマちゃんとの別れは突然? 名月のせい?



第十一章 タマちゃんのトンボメガネ

タマちゃんが大きなサングラスをかけてやって来た。トンボみたい、ボクは思う。
タマちゃんは見透かしたように「複眼的思考っていうやつ!」という。
「見える、見える、ユウの心のなかの真実、嘘まで見える」タマちゃんは笑う。

ある日、ボクは稲穂の上を回るトンボを見ていた。トンボは複眼で360°見渡し、、、、
なお、なお、回る。
          ☆
トンボになって見えたモノ  
空世辞の皮肉 無意味の意味 丸腰の防備 無力の力 無知の博識などなど、、、、
それらすべてアイロニーの館にいれてみた

トンボは回りまわってデジャブとジャメヴを行ったり来たり 彼方と此方を行ったり来たり

トンボになって見えたモノ  
苦痛の快楽 沈みゆく浮世 自虐の快感 無為なナマケモノ 有為なノモケマナなどなど、、、、
それらすべてパンドラの箱へいれてみた
          ☆
むかし、こんな詩を読んだっけ!
トンボ、トンボ、そんなに回りゃ、時の彼方まで行っちゃうよ――― 。
ガラガラポン、ガラガラポン、四次元時空までイッちゃうよ――― 。

「昨夜愛した奥さんまでも見える。見えすぎちゃって困るの」タマちゃんはTVのCMみたいに云ってのける。
そして、今は私を、、、といわんばかりにクスッと笑う。
トンボメガネをはずしたタマちゃんは、
「もう、ユウしか見えないよ」とリアルにコトバを吐く。

ボクとタマちゃんはリアルからバーチャルまでいくように、まるでいつか見たトンボの
ように。

トンボ、トンボ、そんなに回りゃ、時の彼方まで行っちゃうよ――― 。
ガラガラポン、ガラガラポン、四次元時空までイッちゃうよ――― 。


第十二章 タマちゃん、ウチナーへ

タマちゃんは流されていく。東京から大阪へ来たかと思うと、今度は沖縄へ。
(島流しか! 西郷隆盛か! )
外からの大いなる意思の働きみたいなものによって流されていく、タマちゃん。

自分が蒔いた種かな? 支店長にあの物言い、、、、物言い!(相撲か!) 

やっぱり、やっぱりだ。移動だ、転勤よ。嫌な奴、煙たい奴は放り出せ、ある種のパワハラ、パワハラよ。東京から追い出され、大阪からも、、、、

正義ばかり振りかざしていたから、歯に衣着せぬ物言いだったから、結果?  結果だよ。

「いいね、ウチナー(沖縄)」タマちゃんは言う。
「ウチナンチュウ(沖縄の人)と恋するか! 」タマちゃんは続けて言う。
「ウチナーとキスすれば、これがホントのウチナンチュウやね」ボクが言うとタマちゃんが笑う。(笑うしかないね)。

タマちゃんは水田のうえを回るトンボの群れを見ている。空を動かすように、地を回すように、トンボがいくのだ。トンボは回りまわって デジャブとジャメヴを 行ったり来たりしているかのように、 彼方と此方を 行ったり来たりしているかのように、、、

「世の中、理不尽やね」
タマちゃん、ふと呟いていた。


第十三章 久しぶり、タマちゃん

「図書館は本の閲覧だけじゃない、夏は涼をとるところ」と誰かが言っていた。だからボクは涼をとるために図書館にいた。その時だ、マナーモードの携帯が鳴った。 (マナーやから聞こえへんやろ)。 心眼ならぬ心耳だ、心で聞こえた。
タマちゃんからのメール、ふぅ~ん、高揚感をもって読んだ。

タマちゃんは沖縄から大阪へ一週間の出張、昔の同僚とパスポートもなしにミュンヘンへ行ったという。密航だ、密航だ、ミッコウ東照宮だ。 (日光や! )、(ミュンヘンはドイツちゃう、ビアホールや)。

カラオケで、♪抱いて、抱いて♪の下村さん(松田聖子か! )、 ♪春のうららの隅田川♪の春さんら(花♪か! )と、ミュンヘンへ。懐かしいね。 皆、元気そう、なんか楽しそうやね。

ボクは早速返信を、、、 変~身! (仮面ライダーか! )
          ☆
タマちゃんも元気そうで、何より、何より、在原の業平や。(なんのこっちゃ)。 タマちゃんは沖縄でもいつものように仕事をシンプルにこなしていると、――― やはり仕事はシンプルにこなすのがいい、そうやね。

ボクは3月に餞別の花も貰わずに(笑)退職、今は時計の振り子のようにブラブラして(なんかエロいね)、と言っても正確に時を刻んでいる訳でもなく、コスモスじゃなかった、ひねもす怠惰にしている。

毎日、暑い、ホンマに暑い。 「暑いです」、「暑うおます」、「暑いでんな」、「暑いき」、「暑いけん」、「あちさん」、「暑おすな」、「やばっ、暑すぎ」 (しつこいな)。

船場の商人も、関西人も、仲本さんも(誰やねん! )、広島人も、ウチナーンチュも、舞妓さんも、JKも、皆、暑いとそれぞれの言葉で言うてる。

長々、ダラダラとした(汗か! )メールになったが、タマちゃんも猛暑の中、どうかご自愛を。
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