未来の話。

文字数 1,000文字

2限目の途中、後輩の貴方と一緒に授業を抜け出した。

きっと貴方は私の事を好いている。
そして私も。

誰も居ない喫煙所に着き、ポケットを探る。
ライターがない。

「火、無いから貸してくれる?」

彼とは軽音楽のサークル合宿で出会った。
私はこのサークルから浮いていた。

何も考えもせず、猿のように酒を飲み、飲ませる。奴らとは縁を切りたかった。

喫煙所でタバコを吹かす。
ここが私の居場所。

「あぁ、しんど…すいません」

テリトリーに入ってきた男。
どうせ君も、奴らと一緒なんでしょ?

「宇宙人って、いると思う?」

意地悪な質問をしてみた。
君は人間なのか確かめたかった。

苦笑いしか出来ないあたり、やっぱり何も考えていないんだね。

どうせ私の話もすぐに忘れる。

「…うん。難しい質問ですね」

彼の目の色が濃くなる。

「僕は、宇宙人は未来人かなって…思います」

少し彼に興味が出てきた。
もっと聞かせて?

「…考えすぎて頭が肥大化して。それで頭が大きくなって。考える時間ばかりだから、陽の光には当たらなくて」

もっと聞かせて?

「どんどん肌が白っぽくなって…宇宙人みたいになって……未来から…来た?とか?」

自然と笑い声が出ていた。
思いもしない答え。
そっか。貴方は人間だったのか。

その時から私は貴方に恋をしていたのか。

体育館裏、貴方と私だけの世界で思い出す。

「少し待ってくださいね…あった」

彼は自分のタバコに火をつけた。
そして私を見る。
貴方はいつも目が合う時、瞳の色が濃い。

「気づいていないの?」
思わず口から出ていた私の気持ち。
こんなに貴方と一緒に過ごしているのに。
なんで気づかないの?

もっと…もっと…

「こっち見て」
心の声が溢れ出してしまった。

「…はい」

貴方と見つめ合う。
ほんの数秒が永遠に続けばいいと思った。

「…なんですか?」

「…いや、ここまでしてまだ分からないかって思ってさ」

もういい。
貴方のタバコは、そのまま煙になるだけ。

「火、早くつけてよ」

私の心にも火をつけてよ。
貴方はまた、そうやって俯くのね。

貴方が顔を上げた時、いつもより瞳の色が濃いと感じた。

「…嫌だったら、言ってくださいね」

「…うん」
…嫌なわけがない。

彼の顔が近づく。
胸の鼓動を抑えられているか心配になった。

タバコの先が触れ合う。できた小さな火種。
このまま、ずっと、もっと大きくなっていけばいいのに。

「…宇宙人っていると思う?」

意地悪な質問をしてみた。
貴方と私の、未来の話をしようよ。

ー 終 ー
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