第3話 内面

文字数 621文字

一人きりの部屋で、私は泣いた。

私は、愛されている。そう実感した。

一人でいてさみしいと思えるのは、今までいた場所が一人ではない場所だったから。家に帰りたいと思えるのは、家が最も落ち着く場所だと思えているから。

「帰りたいなぁ」

返事をしてくれる人もいなく、私の声は部屋に溶けていった。

覚悟はできている、なんて思っていたけれど、全然できていなかった。

一人暮らしは半分わくわくしているなんて言ってたけど、それは理想しか見えていなかったから。

本当に生活してみたら、今までやってもらえて当たり前だったことを、自分で全部やらなければいけないことにストレスを感じる。

それ以上に、家族と話せないことにストレスが溜まる。

それでも、弱音は吐けない。

だって私はまだ、意地っ張りな子どもだから。

自分のことを自覚して、人は大人になっていく。私は今、大人になっている最中なのだ。

どうしようもなく家に帰りたいと思う時がある。一人で暮らすことを選んだことを後悔する時だってある。

けれどいつか、人は大人にならなければいけないから。その時が、私にはちょっと早く来ただけだから。

もう少し、がんばってみようと思った。

家族はその場にいなくても、私を支えてくれる。折れかけた気持ちを治してくれる。勇気をくれる。前を向かせてくれる。そして、帰る場所はここだと安心させてくれる。

そんな家族を持っている私は、幸せ者だろう。

すっきりした気分で、私は紙を手に取った。さあ、何を書こうか。愛する家族へ。
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