3、清水しの流漫画との関わり方

文字数 3,563文字

では、ここが最後のチャプターになります。
最後までお付き合いよろしくお願いいたします。
よろしくお願いいたします〜!
清水先生は漫画をご自身が描くということに対して、なんのために描いているのか、という点で気づかれた事があるそうで、それはどういった事なんでしょうか?
はい。

私、初連載作品終わってから実はコミックス2年くらい開けなくて、メシノトモの連載の話が固まって来た頃にやっと読めたんです。

それは何故なんでしょう? 昔の作品って後で見ると、拙さが恥ずかしくて読めないって作家さんもいらっしゃいますが、そういう感じなんでしょうか?

うーん、そうですね。確かにそれもあるんですけど、端的に連載終わっちゃったしうまくやれなかった気持ちが強くあったので。色々後悔というか。

なので、読むとその気持ちが蘇るので辛くて開けなかったんですね。

ああ、なるほど。そういう気持ちで読めなかったんですね。

でもやっとのことで読んでみると、もう本当に好きな事だけ描いてるのがわかって嬉しかったんです。

そしてそれと同時に、めちゃくちゃ面白かったんです。

私このお話すっごく好きだなあ〜としみじみ思ったんです。

そういうことってないですか?

過去の自分が描いたものが自分の好みドストライクで、時間をおいて読むとめっちゃ面白いっていう…。

自画自賛してて実に気持ち悪いんですけども。

うあ~。そうですねぇ。

まだまだ自分は未熟なので、稚拙な点が気になってしまって「あの時、もっとこうしておけばー!」っていうのが大きいかもです。
ただ、同人誌なんかは、本当に好き勝手描いているので、後から読み返して「あ、おもしろい」ってなることはありますね。そういうことなのかな?

拙くても好きなこと描いたものだと、面白さというか…楽しさが読んでて伝わってきますよね。

私その瞬間がすごく好きなんだなと思ったんです。

私が漫画描く理由って「この感じ」だなと。

こういう感じに読んだ人に「これ私も好き!」ってテンションあがる気持ちになってほしいんです。

もちろん「好き」ってだけじゃなくて「気になる」とか「辛い」とかでもいいんですけど。

読者の感情を動かす作品を描くのが楽しいと。
それ、わかります。何も感じてもらえないと切ないですよ。
そうなんです。何か思ってほしいがために描いてるんだなと…。


あ、今ふと思い出したんですけど、1章でお話ししたイマジナリー編集者さんいたじゃないですか。

(イマジナリー編集者が……いる? もはや、よくわからない)

あ、はい。

存在するイマジナリー編集者…。


その方に、当時出張編集部で原稿を見ていただいた時に「これ読んだ人に、どういう気持ちになってほしいと思ってる?」と聞かれまして、その時はわかりませんと答えたんです。


そしたら「自分でわからないなら、自分が漫画を読んだ時の感情を思い出して、それを絵にしてみなさい」と言われたんです。


「切ない」とか「辛い」とか「これすごくわかる」とか何でもいいんですけど、自分が漫画を読んで感情が強く動いた時の表情ですね。

おお、イマジナリーなはずの人がすごくいいことを。
そうなんです。

それらの絵から、今自分が描いている作品で「読者にどの顔になってほしいのか」を選んで、選んだ表情の絵を机の前にはって見ながら描きなさいと。


正直実践してはいないんですが、読者の感情を動かす作品を描くのが楽しいというさっきの話と同じことですよねこれ。

おおー、なるほどです。実際、机の前に貼ってあれば、目標の読者を見失うこともなさそうです。まあ、やってないそうですけどもw
でも、頭の中で誰に向けて、どういう感情をもってもらいたいか、っていうのは、昨日のお話の中の「想定読者」のお話にも通じる気がします。
そうですね。想定読者は基本的なことなのかもしれないですね。
ええ。そこに昨日おっしゃっていた「ジャンル」の力が組み合わさって、より読者に楽しんでもらえる作品を発表できるのかもしれませんね。

想定読者を設定することで、コミックスのカバーデザインを作るときの指針にもなりますよね。

ただその想定読者、どこまで細かく設定するかが難しい所だと思いますが。

なるほど、では「メシノトモ」の場合は「想定読者」から装丁で考えられたことなどありましたか?
実際、素敵な表紙ですけども。
デザイナーさんにすごく素敵にデザインしていただきました〜!


こちら依頼する際は、女性向け!という感じに作りすぎると男性読者は買いにくくなるし、一般向けっぽくしすぎると、一番手に取ってほしい層にはスルーされてしまうというジレンマがありました。

そういうときは、どういう感じで落としどころをみつけられたんですか?
はい。具体的に言いますと、メシノトモは男性キャラ2人なので、それだけで女性向けっぽい感じありますよね。なので裏表紙には女性キャラ入れてます。
ああ、なるほど。そういうところで緩和するんですね。勉強になります。

それとデザイナーさんに教えていただいたんですが、男性2人キャラがいる場合、こうやって真ん中左右対称の配置は一般紙っぽくなるけど、このままちょっと左とか右にずらすと、意味深な感じがしてBLの表紙っぽくなるんですよと。


そういう諸々のバランス取れる要素が色々あるわけですが、デザイナーさんが調整してくれたものを担当さんと見て決定しました。

へ~! そうなんですね。確かにそうかもしれません。

後は目線もデザイナーさんが提案してくれました。

2人がお互いを見ている目線ではなく、主人公の稲荷くん(右の警官)は相方の牛丸(左の和装男性)をみているけど、牛丸は読者の方を見ている、という目線にしましょうと。

これは、2人の追い追われる関係性をなんとなく示すためですね。


後は、この↓バランス調整のためです。


>女性向け!という感じに作りすぎると男性読者は買いにくくなるし、一般向けっぽくしすぎると、一番手に取ってほしい層にはスルーされてしまうというジレンマ

はぁ~、ものすごく色々考えられているんですね。いや、感心します。


ここまでのお話を聞いていると、清水先生は原作者や編集者、デザイナーとかなり密にやりとりをするタイプの作家さんなんですね。
人によっては、絵だけ描いて、ほとんど丸投げしてしまう方もいるかと思うのですが。

自分1人の力は限界があるので、周りの方に協力をお願いするのが一番大事だと思っております!特に担当さんたちには本当にお世話になっていてありがたいです。

いいお話です! しっかり締まりましたね。
では、そろそろ終了のお時間ですが、清水先生から、今回の感想と、宣伝などありましたら。

はい〜!

今回の座談会、3日間漫画について自分の考え方を整理し直すとってもよい機会でした。

普段漫画についてこういう風に人と話すことほとんどないので、単純に楽しかったです。

ありがとうございました!

宣伝は…

まず来週月曜日にガンガンオンラインで「構成/松永きなこ」最新話更新されますので是非ご覧になってください!

きなこは本当に創作系のお仕事されている方に特に刺さるセリフがいっぱいあって、元気が出ます!

「構成/松永きなこ」は3巻まで読ませていただいたんですけども、ほんとにぐっさぐさ刺さりまくって、読み終わった後に興奮して寝れなくて、「うわー、いますぐ漫画かかなきゃ!」ってなりました!! 創作者はみんな読むと良いと思います。
おお〜ありがとうございます!

私も毎月原作読むたびに同じ感じになっています!!!

きなこは熱い…。

さらに大正グルメコメディ「メシノトモ」は1巻発売中です!


コミックバンチwebでも1話遅れで隔月更新されていきますので、是非チェックしてください。

出てくるお店は全部今でも行ける所ばかりですので、メシノトモ片手にGOです!!

「メシノトモ」もすごく面白くて、読むとその日の晩御飯が決まってしまうぐらいです。中心に通った縦軸のストーリーも気になります! ふたりはこれからどうなっちゃうの!?
では、今回のゲストは清水しの先生でした。
貴重なお話を色々していただき、ありがとうございました。
こちらこそありがとうございました!

楽しかったです〜!!

最後に次回告知です。

第四回「かみんの部屋 漫画家座談会」は2月20日20時~開催予定です。

気になる次回のゲストは

となりのヤングジャンプにて


最高は俺のアヤカ 俺のアヤカは最高 


を好評連載中の


八鷺一郎先生


です。

コメディ、ギャグ漫画の理論構築にはかなりの考えをお持ちの新進気鋭の八鷺先生。
色々ためになるお話が聞けそうですよ。

それでは、今回はこの辺で。

ご覧になっていただいた皆様、質問を下さった皆様、長丁場にお付き合いいただき、ほんとうにありがとうございました。

次回もよろしくお願いいたします。


森脇かみんでした。


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登場人物紹介

森脇かみん


漫画家。『東京ネームタンク』ネーム相談講師。


web、アプリ漫画「サイコミ」にて医療漫画「サブカルメディカル」でデビュー、連載。

連載終了後は企業案件漫画など。その他、漫画連載を企画中。

某医大医学部を中退し、漫画家になるため上京した過去を持つ。

医療知識があるので、その方面の質問に応えることもある程度可能。

日本シャーロック・ホームズ・クラブに所属する程度にミステリ好き。

清水しの(しみずしの)


漫画家。


山形県出身。 

イブニング(講談社)より「狼少年は嘘をつかない」で連載デビュー。 

ガンガンONLINE(スクウェア・エニックス)にて「構成/松永きなこ」執筆の他、ゴーゴーバンチにて「メシノトモ」を連載中。 


デビュー時は犬好きだったがここ数年で猫沼に落とされる。 犬と暮らす野望はまだ捨ててない。


HP  http://shinoshino.info 

Twitter @doro10mizu

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