NITRODAY『少年たちの予感』レビュー

エピソード文字数 1,994文字

 頑張りたいのに、頑張れない──。

 そういう時って誰にでもあると思う。しかも私はこの暗澹(あんたん)期、割と出没頻度が高めだ。
「帰って下さい」
「無理ですよ」
 と自分の低スペック処理能力ではどうすることも出来ない。誰か助けてくれ!
 まぁ、私の話は兎も角。頑張らなきゃいけないことは人それぞれあるだろう。仕事や勉強に恋愛、友人関係、それから自分自身を輝かせること。「頑張れよ」なんて人から言われたら、プレッシャーに耐えかねて卒倒しそうだ。頭では分かっている、でも、どうしても体は動いてくれない。

 そんな時、NITRODAY『少年たちの予感』を是非ヘッドホンを装着し、大音量で聴いて欲しい。
 こういった売り文句を使うと、あたかも以前からNITRODAYを知っていた口振りだが、実はこのアルバムで初めて彼らを知ったNITRODAY素人だ。つまり、先入観無しで音楽だけに集中することが出来た。そして率直で簡潔的な感想は、かなりの興奮状態である。なので、そのままの勢いで書かせて貰うがこの高揚を許して欲しい。

 一曲目『ヘッドセット・キッズ』で、いきなり鬱々とした感情を体から突き飛ばしてくれる。にくいなNITRODAY。軽快なドラムのリズムに合わせ、快活で澄み切った小室さんと程よく甘くスパイシーな松島さんの歌声がぴょんぴょんと脳内で飛び跳ね、セロトニン(精神安定作用に関連する伝達物質らしい)が増産されていく感じがする。ギターの絶妙に高めのテンションも心地良くてたまらない。気付けば倦怠感はどこへやら。

 しかし、このままのテンションで疾走しているとちょっとハイになり過ぎて倒れてしまいそうだ(それはそれで最高だが!)。そんな身勝手な私のツボをよく押さえてくれているな、と感動したのが『ダイヤモンド・キッス』。何だか愛らしい男女の会話を盗み聞きしている様な、くすぐったくもときめいていくこの感じ。因みに、この二人の関係性がハッキリしない所が恋愛ドラマのはらはらする空気を醸し出しており、乾いた日々に不活化されていた情熱が蠢き出す。しかも少々短めの曲なので「ああ、もう少し聴かせて欲しい」という(きわ)を攻めてくる。絶妙過ぎだ。

 ハイテンションと恋のときめきを満喫したら、お次は『ブラックホールfeat.ninoheron』。ビール片手に思わず体を揺らしたくなる、ミドルテンポなこの曲はまさにタイトル通りブラックホールのような音に引き込まれ、いつの間にか抜け出せない状態。私としては、仕事終わりの一杯的な感じで聴きたい曲だ。ninoheronさんの歌詞とNITRODAYの音がまた相性最高。この曲を四、五回程リピートした後で次の曲へいくのが好きだ。

 さて、この心地好くまったりした感じで終わるのも良いけれど、やはり日々を生き抜く為には喝が欲しい所だ。大丈夫、勿論ご用意してまっせと言わんばかりの四曲目は『アンカー』。全身全霊という言葉がよく似合う声、リズム、音色。そして、日々に懊悩(おうのう)しながらも前を向く歌詞にも是非注目して頂きたい。頑張ればきっといい事があるんですよ、的なサクセスストーリーも勿論好きだが、何というか今は踠いて戦っている同士が欲しい。どうしても自分の中で、戦う意思はあるが動けず膝を抱えるもう一人の自分がいるから。

 そう、何というか私は常々戦友が欲しいと思っている。
 自分めっちゃ傷だらけで戦っているんですよ、毎日。でもまだ諦めたくない! みたいな音楽を聴くと、思わず拳を振り上げ「よっしゃ、私も行きまっせ」となるのだ。
 このアルバムを聴いていると、まるで共に日々を戦ってくれる友であり、生き抜くためのエネルギーをくれるエンジンの様な気がしてくる。さぁ、止まることなく動き続けるエンジンを搭載したら、あとは自分の手足を動かすだけだ。
 特別ではなく、ありきたりの日常に聴き続けたい、そんな曲たちにあなたも会ってみませんか。


【11月21日追記】
 仕事終わりに駆けつけた渋谷WWW。会場内は、学生さんばかりかと思ったら社会人の方々も割と多く一安心。
 ステージにNITRODAYが立つと、大きな拍手が湧き上がった。非常にリラックスした雰囲気から一転、音が鳴り響いた瞬間、会場内の気が彼らに吸い込まれ膨大なエネルギーとなって放射された。小室さんの雑味を丁寧に濾した広がりのある声、松島さんの愛する人の髪を撫でる様なドキッとするベースの指遣い、岩方さんの体が揺さぶられるドラム、そして何より衝撃的だったのがやぎさんのギター。陶酔しつつアグレッシブな彼女の演奏は是非ライブで確認して欲しい。
 視覚としては四人の個性がそれぞれ際立つが、音は観客をも飲み込む一体感。気付けば自分も彼らの音の一部となる、そんな渾然とした贅沢な時間だった。
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