第1話  春の饗宴

文字数 160文字


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 白い大地の凍った肌を
 春風の指がつつっと撫でる。

 白い大地の湿った雪を
 春の息吹がしずくに溶かす

 あえかな歌音(うたね)の萌えるころ
 熱き若枝 たどりつく

 ぬかるみはじめた その沼の
 奥の奥たる 洞窟の

 春の声音に応えたる
 雪解けの水が 溢れだす

 湯の滝である 熱である
 
 若鮎は 跳ねて

 躍りこむ



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登場人物紹介

おせん。


親の付けた名は「お染」(おそめ)。

染物屋の末娘で、不細工で根性曲がり。

「こんな不出来な娘、どうせ行き遅れるに決まってらぁ!」と、

数え十五で取引先の呉服商の隠居の後妻(というか妾?)に嫁がされるが、

顔見知りの彫り物(入れ墨)職人と駆け落ち。


江戸から外れた山際の寺の裏の離れで、

刺繍の内職をして、生計をたてている。


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