第3話 荒ぶる贄

文字数 409文字

骨に響くエンジン音はただの儀式。限界まで色を抜いた髪とダボダボの黒いスウェットは鎧。
ツカサは3本のカラースプレーの缶を抱えて廃墟に足を踏み入れた。
「出てこいよ腐れ女。」
舌打ちして小声で呟くと、空間の酸素が少し揺らいだ気がした。足が止まる。
「全部塗り潰してやるよ。」

落書きの噂を聞いた時、ピンと来た。それが自分の母親だと。夫ではない男性との間に自分を孕んだことを、生んだ直後に笑いながら打ち明けて消えた、どうしようもない人間。その憎しみを全て俺にぶつけた、どうしようもない父親。
「呪う権利なんてないだろ。俺が町でどういう扱い受けたか。」
上塗りしてやる。お前らの痕跡など消してやる。
黒い扉を足で蹴りあげて開くと、一枚目の絵が眼前に現れた。
絵の中の女がじっとりとツカサを見下げる。
「殺したけりゃ殺せ。最初にそうすればよかっただろ。」
最初の最初から。
ツカサは真っ青なスプレーのノズルを押した。

♪♪~

キャハハハハハハハハハハハハ

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