プロローグ
文字数 480文字
声が、聞こえた。
暗月の深夜、天から注ぐ明かりは脆く、足元は冷たい闇に沈んでいる。
朝に向かい露を溜める準備を始めた木々の葉の甘い匂いと、違和感を覚えるような鼻に刺さる臭いが混じり、自分の表情が歪んでしまっていることに気付く。
「ナァ、ソンナ命乞イハ昔ヤッタヨ。デモナ、助ケルコト出来ナイ。ますたーデナイカラナ」
その声はまるで意思を持たない音の羅列にしか聞こえない。
耳触りで不快で、その後に聞こえる鋭く高い声も、不快でしかない。
「マダ居タノカ? コレデ、五人目」
明かりは届かない。
それなのに、色を無くしたかのような声の主の髪色だけははっきりと認識出来た。
高い背、その体中にまとわりついている刺激のある臭い、そして、いびつな笑いが耳につく。
さっきまでなんの意思も感じ取れなかった音は、五人目という言葉とともに急に色づいた。
「そろそろ、チカラもついてキたんじゃないか? まぁ、アトヒトリくらいか」
ただ、音に感情が込められたからどうだというんだろうか。
そんなことよりも、自分にとってはただ、今という時間が――不快だった。
暗月の深夜、天から注ぐ明かりは脆く、足元は冷たい闇に沈んでいる。
朝に向かい露を溜める準備を始めた木々の葉の甘い匂いと、違和感を覚えるような鼻に刺さる臭いが混じり、自分の表情が歪んでしまっていることに気付く。
「ナァ、ソンナ命乞イハ昔ヤッタヨ。デモナ、助ケルコト出来ナイ。ますたーデナイカラナ」
その声はまるで意思を持たない音の羅列にしか聞こえない。
耳触りで不快で、その後に聞こえる鋭く高い声も、不快でしかない。
「マダ居タノカ? コレデ、五人目」
明かりは届かない。
それなのに、色を無くしたかのような声の主の髪色だけははっきりと認識出来た。
高い背、その体中にまとわりついている刺激のある臭い、そして、いびつな笑いが耳につく。
さっきまでなんの意思も感じ取れなかった音は、五人目という言葉とともに急に色づいた。
「そろそろ、チカラもついてキたんじゃないか? まぁ、アトヒトリくらいか」
ただ、音に感情が込められたからどうだというんだろうか。
そんなことよりも、自分にとってはただ、今という時間が――不快だった。