ぼくが変化すれば世界も変わる

文字数 576文字

 ぼくが他人(ひと)より気づくのが遅いタイプだということにすぎないのかもしれない。小学5年生のとき、友だちから「玉毛(たまげ)」が生えているかきかれたとき、ぼくは玉毛がなんであるかもしらなかった。だけど生えていないということが成長の遅さ(つまりは子供の世界にあっては劣等性とされていたもの)をコノテートすることは、その友だちの自慢気な話しぶりから感知可能だった。だから「ああ、玉毛生えてるよ」と、ぼくは自身の怯むほどの動揺を気取られないように余裕気な表情をせいいっぱいつくって友だちに応じた。
 友だちのジェスチャーから、玉毛がおちんちんの上方(つまり「玉」は睾丸ではない男性器全体を指している)にあるものだと推察できたので、夕方友だちと別れたあと、「生えているはずない」という確信のもとに浴室で陰部チェックしてみた。
 生えていたのだ!
 ぼくが自分で気づいていなかっただけだった!

 あれと同じで、ぼくは世間一般の人よりも気づくのが遅いというだけで、天井のおっさんは最初からいたのかもしれない。
 玉毛は第二次性徴で出現するわけだが、世界中に遍在する「天井のおっさん」は、天井というものが発明されたときからいるのかもしれない。

 玉毛に気づくのが遅かったのには、ぼくが母子家庭で育ったことも大きな因をなしているだろう。
 天井のおっさんのことについても、同じことがいえるだろうか?
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