第45話

文字数 921文字

 そうこうしている時に、ノウハウは外角高めのストレートを投げるが、広瀬は見事プッシュバントをした。文字通りにボールを押すようなバントだ。
 淀川はなんとバントエンドランをしていた。ランナーが先に走って、バッターがバントをする戦法だ。
 淀川が二塁へと走り出し、広瀬は一塁へと……。
 「よーし。次は僕ですね。A区の力。とくとご覧あれ。奈々川さん……君は綺麗だ」
 最後の言葉をポツリと言っった。流谷がベンチから立ち上がった。
「頑張れ。俺たちが応援する」
 私はバットをつかんだ流谷に笑顔を向けた。
「あっはー。俺の一点を二点にしてくれよ」
 島田だ。
「これで一点を貰えば勝てるかもしれないんだ」
 津田沼が言った。
 バッターボックスへと立った流谷もバントの構えをした。バント戦法で私たちは優勢となった。
 ノウハウが投げる。
 流谷はバントの訓練をしている。ノウハウの剛速球の前にサクリファイスバント。自分の打席を犠牲にし、ランナーを進塁させるバントである。三週間の努力の結果。バントの訓練はかなりの成果があったのだ。球はバットに当たり見事ライトへと向かう。
「やっほー」
 奈々川さんがメガホンを口に当てている。
 淀川と広瀬が走り出した。ノウハウが捕球して一塁から三塁へと送球する。
 全速力でダッシュしている淀川はフックスライディングをした。
「セーフ!!」
 審判の大声が届いた。
 流谷は三塁に送球する前に、ノウハウが捕球して一塁を踏んでいたのでアウト。
 だが、広瀬は無事。二塁にいる。
「次は俺だ。夜っちゃん見ててくれ」
 津田沼がバットを構えて歩き出した。 
 バッターボックスへと歩くと、無言のノウハウはまた180キロの外角高めのストレートだ。
 津田沼は予めホームプレートへバットを突き出していたが、球が二球目でかろうじてバットに何とか当たった。
 広瀬と同じプッシュバントである。
 ツーストライクもなんのそのだ。
 球はレフトへと行き、淀川が即座に三塁から走り出す。
 キャッチャーのノウハウが、遊撃手のノウハウからボールを捕球しようと、機械的な音をだした。
 しかし、淀川はノウハウが捕球する前に全速力からのヘッドスライディングでホームインした。
 ランニングホーマーだ。
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