第4話 白い仔猫

文字数 625文字

 ゴミ袋までの距離を更に縮め、クロスケはゴミ袋に鼻を近付ける。すると、ゴミ袋は風でふわっと浮かんで、彼の鼻先からまた少し遠くへ飛んだ。

「なんだ。空っぽか。けど変だな。さっきは結構痛かったぞ。」

首を傾げながらふわふわと飛んでいくゴミ袋を目で追い、気のせいかと思ったクロスケは、もういつもの場所へ帰ろうかと思った。

 その時、彼の背後で小さな声がした。暗闇と雑草をかき分けながら声のする方を確かめると、そこには白い何かがある。キノコかなんかに見えたが鳴き声は気のせいか?と思いながら近づくと、真っ白い仔猫が丸まって震えていた。それは、さっきのニンゲンが放り投げたものの正体らしかった。

「え?嘘だろ?仔猫じゃねぇか。」
クロスケは思わずそれを3度は見直した。だが、間違いなく彼の目に映るそれは、白い仔猫だった。
「おい、仔猫、大丈夫か?」
クロスケは仔猫に近づいて、仔猫を舐めてやった。仔猫は恐る恐る目を開けて、クロスケを見つめた。
「捨てられちまったのか。かわいそうにな。あのニンゲン、仔猫を投げ捨てるなんてどこまでバカなんだ!」
クロスケはさっきのニンゲンの行動に心底呆れながら、仔猫を隅々まで観察した。幸い、茂みに落ちたからか、目立った怪我は無さそうだった。
「どっか、痛ぇとこないか?」
クロスケは仔猫に尋ねるが、仔猫はただ震えているだけだった。
「とにかく、放っては置けないな。とりあえず俺が連れて帰ろう。」
まだ震えている仔猫を連れて、彼は寝ぐらへと帰る事にした。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

クロスケ:主人公であるノラの黒猫。基本的にニンゲンの事は信用しておらず、自分をクロスケと呼ぶ近所のじいさんにのみ、懐いている。賢い性格で、同じ猫に対しては面倒見が良く仲間想い。

オリオン:第二主人公の白い仔猫。天体と話が出来る不思議な力を持つ。

じいさん:クロスケを世話している老人。昔は高校の教師だった。

赤毛の脱走兵:クロスケの仲間。保健所から脱走してきたことでこう呼ばれるようになった。

泥棒のブチ:クロスケの仲間。食料をはじめニンゲンから泥棒するのが天才的に上手い。

情報屋のミケ子:クロスケの仲間。ノラ猫として生きるための情報をいつも素早く集めてくれる。片耳には切り欠きがある。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み