口元が伸びる犬

文字数 699文字

とあるところに貧しい王国があった。ある日、その国の宮殿に国王あての差出人不明の木箱が送られてきた。国王は部下に命じて、その木箱を開けさせた。すると、中から一匹の白と茶色の動物が出てきた。誰も見たことのない動物だった。王が尋ねた。

「なんだこの動物は。初めて見る」

「はあ、大きさは猫のようですね。しかし狼に見えないこともない。こんな動物は初めて見た。それより、こんなまだらな模様をしているが、我々に害はないのか?」

宮殿内の緊張が高まる。国王はもちろん、兵たちも警戒して思わず後ずさる。そのときだった。

「わう」。動物が鳴いた。人々は驚いてさらに後ずさった。尻餅をつく者もいた。

「わう」。人々はもう気が気でない。普段は屈強な兵たちも、これにはとうとう恐怖のあまり泣き出した。国王が思わず呟く。

「なんなんだ、この動物は。そもそも本当に動物なのだろうか」

「もしかしたら敵国の新兵器かもしれません」

「うむ、それもあり得る話だ、どれ、あの口の垂れ下がっているびろびろが気になる。兵たちよ、誰か確認してきてくれ」

だがもちろんのこと、恐怖のあまり皆が嫌がり誰もその口のびろびろを確認しに行こうとしなかった。

「そうじゃ、あの口のびろびろをさわってきたものには、金を授けよう」

国王が言い終わるやいなや周りのたくさんの兵たちはすぐに立ち上がり、その動物の口のびろびろを確認しに向かった。

「俺が金をもらうんだ!」「お前ずるいぞ、もらうのは俺だ!」「俺が慎重に確認を!」

兵たちは我先にと、その動物の口のびろびろをさわり、そして一番さわっているのは俺だと主張し、引っ張りだした。
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