第4話 バウンダリースパナ― H型の人材

文字数 1,411文字

 バウンダリースパナ―とH型の人材と言う名称をビジネススクールの授業で始めて聞いた時には、そのおかしな名称にいささか戸惑った。
 英語で書くと「boundary spanner」は境界を超えて両者の橋渡しをする人と言う意味だ。又、H型人材はHの文字に縦軸が2本あって1本は専門分野を持っていている本人で、もう1本の縦軸の他の専門分野を持つ人をHの横軸を使って繋げる・架け橋となれる人の事を言う。バウンダリースパナ―とH型人材は、自分とは違う分野の人と交流があって専門分野が違っている人を理解する事が出来る人である。
 そして今、企業が存続していくにはイノベーションが必要だと言われている。そのイノベーションを起こす為にはバウンダリースパナ―やH型の人材が欠かせないということだ。少し前までは「スペシャリスト」より「ゼネラリスト」を目指すべきだと言われていた。だが現在では「ゼネラリスト」も必要ではあるが、一歩進んで自分の殻に閉じこもらずに他の分野の人とも繋がれて共同でより大きな新しいものを生み出せる人材が必要になっている。
 企業には年配者と若者、上司と部下それに営業部門と制作部門など様々なコンフリクトになる要素がある。バウンダリ―スパナ―やH型の人材とはコンフリクトが起きそうな時に間に入ってイノベーションを阻害するような対立を阻止できる人物でもある。
 例えば営業部門には予算を達成するためのKPIがある。その為、制作部門で考え出した新しい製品を販売しようと思っても売れる可能性の高い既存の製品を売ろうとする。既存の顧客を大事にする方が新規の顧客を開拓するよりも予算を達成する可能性は高いのである。営業部門と制作部門の間には越えなければならない川が流れていると言える。その為、その川に橋をかけて営業と制作の間を自由に行き来して、両者の意向を確認してひとつにまとめ上げる人物が必要になってきた。
 それではバウンダリースパナ―やH型人材になれる資質は具体的にどのようなものが必要なのだろうか?まずは両部門から好かれて、それ以外の多くの人からも好かれる人望がある人物である事は必須になる。そして両部門のキーパーソンとなる人と日頃の付き合いがある事も必要だ。さらに両部門の言い分を調整して論理的にまとめあげる能力も求められる。
 又、忘れてならないのはバウンダリースパナ―やH型人材も会社員である以上、どこかの部門に所属していると言う事だ。その自分の専門部門を持ちながらも他部門の分野を理解して調整出来るから境界を繋げる人でバウンダリースパナ―やH型の人材と言われる由縁である。
 ヨーゼフ・シュンペーターは「既存の知」と「既存の知」を組み合わせる事によってイノベーションは起きるとした。だがその「既存の知」と「既存の知」を組み合わせるには橋渡しをする人が必要になる。その為、バウンダリースパナ―やH型の人材が求められている。
 私自身は器用な方ではないので両部門に精通して、なおかつ自分の専門分野を深めるというバウンダリースパナ―ではないしH型の人材でもない。だが、私もバウンダリースパナ―やH型の人材になってみたいと思う。何故なら彼等は多くの人に支持されて人望もある。人として理想の形だからだ。そして、多くの人がバウンダリースパナ―やH型の人材になって自分の所属する以外の事も理解する事が出来たなら地球上の争い事は減っていくだろう。
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