努力の方向性

文字数 2,547文字

俺は、こいつはどうしてこうなのだろうと、本気で考えた。
アニメでしか見ないような、料理の出来なさに俺は頭を物理的に抱えた。

「どうかな?」
「どうって…、お前…」

友人宅へ料理を教えに来た。最初は、簡単なおにぎりから作った。
形は歪であるが、なんとか食える味ではあった。
…砂糖と塩を間違えている事は、黙っておこう。
次に、野菜炒めを作ってみた。
野菜を切るが、友人は人差し指と小指をきり野菜が、血だらけになった。
その野菜は、綺麗に洗い友人宅で飼っているヤギにあげた。美味しそうに食ってた。
2回目だが、野菜を切った。形はまた、歪だが…、炒めて味付けすれば平気だ。
友人が、ここからは俺がやる!と張り切っていたので、後ろから見守る事にした。
…正直、ここで選択を間違えた。
油の量を間違え、フライパンから火が出た。
ちなみに、この前に包丁を落とし友人は、足に包丁がぶっ刺さった。
とまぁ、此処まで説明するのも大変だったが…、問題は…。
この料理音痴+味音痴をどう治すか!!

「どう?うまい?」
「…お前、野菜炒めに何入れた…」
「からしだよ?塩コショウ無くて、こしょうって辛いから、
 からし入れたら平気かな〜って思ったから」

からしを入れる所は、まだ良いかもしれないが…、量を考えろ、量を。
どれだけの量を入れたかは知らないし、知りたくもない。なぜなら、野菜炒めが黄色だからだ。
此処まで来ると、尊敬するね。食材を無駄にしないため、俺は黙々と食べ進める。

「おかわりあるからな」

本気でぶん殴る事を検討した。
試しに、本人の口に入れてみる事にした。
百聞は一見にしかず、食ったら自分のやばさが、わかるだろう。
だが、此奴が味音痴である事をすっかり忘れていた。

「…うまっ…!」

だめだ、こいつは救いようがない。
俺は、黒いオーラを出しながらうまうまと言いながら、食べている友人を見た。
悪気が無いのがな…。



ーーーー
「というわけで、どうにかなりませんか?あと、勝手に俺の部屋に、入らないでください」
『料理の縁か…。あるにはあるよ、でもご友人は自分の力でやりたいんでしょ?
なら放っておきなさい』
「暗黒物質を食わされる俺の身にも、なってくださいよ……」

俺の布団の上で漫画を読んでいる神様。今日はお菓子を食べていないから良いが、
布団の上でお菓子を食べられた時は、守護の札を使うか本気で迷った。

『料理か…。神主君のお母さんに教えてもらえば?』
「母は、家を開けられない。…仮に教えるにしても、俺の家でやるのは勘弁してほしい。
 台所壊れる…」
『どんだけよ…。努力出来る事は、素晴らしいと思うけどね…』

そこは俺も凄いと思うし、好きな人の為に行動出来る友人の事は尊敬する。
まぁ、料理が出来るようになったとしても、裁縫が残っているんだがな…

夕飯時、俺は母さんに話してみた。
母さんは、料理が上手く、結婚する前は管理栄養士として働いていた。
調理師免許を持っている為、文句なしに料理がうまい。

「うーん…。その子の家のお母さんに教えてもらえばいいと思うんだけど…」
「そいつん家、両親共働きで手料理食べた経験が、少ないんだと」
『共働き…?』
「父親と、母親の両方が働いているって事。うちの場合は、
父さんが働いて、母さんが家を守ってるな」
『ほーん』



ーーーー
学校の昼食どき、俺は中庭のベンチに腰をおろし菓子パンと野菜ジュースを食べていた。

「あ、かいー!!」
「…なんだよ」
「お昼作ってみた!…食べてみてくれ…」

お弁当を渡され、おずおずと弁当の蓋をあけた。
海苔弁でシンプルだった。最初にしては、うまく出来てるな…
口に入れてみると、海苔が甘かった。

「おまえっ…!!何入れやがった…!」
「気づいた?昨日よる晩飯これでさー、試しに海苔と白米の間に練乳入れてみたら
 美味かったから、入れてみた!!」

海苔独特の上顎につく感覚と、練乳の甘さ。そして、米の水っぽさ。
…すべてが合わさると未知の感覚だ。俺は、口に入っている物をなんとかして飲みこむ。

「お前、味覚が万国皆共通だと思うなよ…!?」
「へ!?美味いじゃん!」
「…だめだ、これ…」

俺は、残りの弁当も胃に流し込んだ

ーーーーー
「もうむりだァァァァァァ!!!」

俺は大声で叫んだ。
部室では、部長と俺しかおらず部長は、はて?と首をかしげていた。
部長は、友人の従兄弟。俺は、部長の肩を掴み揺すった。
目を白黒させていたが、事情を話すと直ぐに納得した。

「彼奴の、味音痴には驚くよな…」
「どうにかなりませんかね…」

部長は、メガネを人差し指で押上俺に提案する。

「もう、彼奴の好きな人に食べてもらうってのはどうよ?
…バッサリ切り捨ててもらえば、彼奴も諦めるだろう?」
「その手があったか!!」

俺は、指をぱちんと鳴らし提案を飲み込む。



ーーーーーー
というわけで、神崎さんに友人の飯を食ってもらった。

「…どう…?」
「美味しいわね。…甘くて」

ちなみに海苔弁を食ってもらった。…味覚が似ているな…。

「これ、天宮君が作ったの?」
「いえ…。これは、俺の友人が…」
「友人って、この間私に告白してきた子?」
「多分…」

俺は味覚が似ている事に、衝撃を受けつつ神崎さんをみる。
神崎さんは、うーん…と悩んでいる。

「かーい!!…部活のことだけどさー!」
「ナイス!」

偶然走ってきた友人をみて俺は、ガッツポーズをした。
神崎さんは、友人の腕を掴んでまじまじと顔をみる。友人は、りんごみたいだった。
お邪魔にならない様に、柱の影からみつめる事にする。

「ねぇ、貴方。私と付き合ってくれない?」
「ふぇ!?勿論!!」

友人は、天井に刺さりそうな程高く飛んだ。
放課後の廊下ということもあり、夕日が黒を映し出した。


ーーーーー
『へー。付き合えたんだー』
「これで、開放されます…。てか、縁悪いんじゃ…」
『あれ、嘘よ』
「うそ!?なんでそんな…」

境内の掃除をしている手を止め、屋根の上でシャボン玉を吹いている神様をみつめる。

『縁が悪いからで、諦めるような人が幸せにできると思う?
 …縁て言うのは、生まれた時から結ばれているものよ』
「まったく、意味がわからない......。まぁ、結ばれたからいいか」
『正式には、まだ結んでないよ。固結びまでできてるけど』

え?と俺が聞いたときには、神様は屋根の上に居なかった。
紫の空気には、俺しか居なかった
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登場人物紹介

 天宮海

高校2年。神様が見える特殊な能力を活かし、依頼主と神様の中を取り持つ役割を担う。神様に振り回されているが、幼い頃からの事なので慣れている。

 縁結び様

海を振り回す事が、生きがい。海にしか見えていない為、海が学校に行っている間は、神社の屋根の上で地域猫と一緒にお昼寝又は、日向ぼっこをしている。縁は、紐のように見えており、色が綺麗で澄んでいる物ほど良好らしい。

 神崎モモ

黒髪ロングヘアーのthe清楚。タイプは、低身長で料理上手、裁縫も出来る人希望。

海の友人に好かれるが、本人は始めましての状況で告られる

 友人

海の友人。モモには一目惚れする。海に名前を名乗っていない状態で友達付き合いを始める。

当初、不審者だと思われ、海から背負い投げをくらった

 部長

友人の従兄弟。弓道部の部長で、海の相談相手。動物と話せる能力を所持している。

生徒会長も務める、超人

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