第三話

文字数 824文字

……困ったな。この証文一式には原本としての証拠能力がないですよ
何ぃ!?
どういうことかしら、ギリアム
この証文の束を見て、気づくことはないですか?
サラは改めて証文の束を調べ始める。

数字から文字からどれもきれいに書かれており、読みやすい。

特段の違和感は感じられない。

この証文が原本、納税した領民の書いたものとは思えません。

彼らの中には書く前に十分に手を洗ったり、インクを都度改めたりしない記載者もいるはずですし、中には証文の不手際の修正をしたケースもあるはず。

……この証文には泥の一滴もついてなければインクのカスレもない、不手際を修正記載したものすらない。

言われてみればそのとおり。

この証文の書きぶりは、机で数字や文字を書き慣れた人間のそれだ。

日々を数字や文字だけでなく、職人仕事や農業に時間を費やしている人間のそれではない。

この書類は、領民が書いたものにしてはあまりにも綺麗すぎます。

確かに……ってちょっと待ちなさい。

この0/ゼロの字のクセ、全部同じものじゃ……

それが2つ目の違和感です。

今言ったとおり、原本に文字を書くのはひとりじゃないはずですし、

全員が同じ字のクセを習うなんてありえません。これは一人の担当者が書いたものと思われます

それって、私達に偽の証文を見せたようなものじゃない!!

兄さん、今すぐに正しい原本を出してくれればこの件は咎めません。

領民一人ひとりが書いた、証文の原本はどこにあるんですか

……原本は別の金庫に保管してある。

その場所に案内するから、そこで確認してくれ

クリフ、そんなことが私達に通るとでも!?
わかりました。案内してください

ギリアム、明らかにこれらは証文を偽造している証拠じゃない!

肉親とはいえ、これ以上情けをかけるのはやめなさい!!

原本の確認はこの調査に不可欠です。

それと、今回の調査において領主権限を持っているのは姉さんじゃなくて、僕です。

僕の判断に口を出すなら姉さんも同罪とします。従ってください

……そう。わかりました
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登場人物紹介

ギリアム・セファーナ

セラ・セファーナ

クリフ・セファーナ

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