第三話
文字数 824文字
サラは改めて証文の束を調べ始める。
数字から文字からどれもきれいに書かれており、読みやすい。
特段の違和感は感じられない。
この証文が原本、納税した領民の書いたものとは思えません。
彼らの中には書く前に十分に手を洗ったり、インクを都度改めたりしない記載者もいるはずですし、中には証文の不手際の修正をしたケースもあるはず。
……この証文には泥の一滴もついてなければインクのカスレもない、不手際を修正記載したものすらない。
言われてみればそのとおり。
この証文の書きぶりは、机で数字や文字を書き慣れた人間のそれだ。
日々を数字や文字だけでなく、職人仕事や農業に時間を費やしている人間のそれではない。