第3話 ノーブルナビゲーター

文字数 14,914文字

 うう。お腹空いた。今日一日、安い骨董品を高値で買えと、ほぼ軟禁状態で恫喝されたが、なんとか逃げ切れることができた。
 まったく、あんな安物をつかまされたら、あたしの商売はあがったりよ。
 早く鶏肉の薬草焼きが食べたいわね。ここ、アライブ領の「売人の酒場」の一番人気料理だし、あたしの好物でもあるし。パリッと焼けた鶏皮とジューシーなもも肉がバターで炒めた米の上にのっている。美味しい料理だ。腹持ちもいいので、コスパも最高だ。
「もしかして、お前、ブラック・メイデンか。本当にちび助なんだな」
 酒場に入って、開口一番野太い声で男が話しかけてきた。
 ひげが乱暴に生え、大柄な身体を揺さぶっている薄汚れた黒のマントを羽織った男だ。明らかにブラックの一味なので、仲間ではあるけど、名前は知らない。ブラックの一味を全員知っているのは、長だけだろう。それはともかく、こいつはどうやらお酒を相当飲んでいるようだ。テーブルには乱暴に置かれた肴がある。まったく、酒臭いわね。こいつの身体を気遣う義理はないのだけど、飲みすぎではないだろうか。
「お前も飲むか?」
 男は薄暗い裸電球の下で、豪快にビールをあおる。
「あたし、お酒が嫌いなのよ」
 あたしは一番手前のカウンター席に座った。ほこりっぽいので、マントで拭く。そして、流れるように、店主に注文した。
「お前さん、顔はいいのに、ここに来てまで、フードを外さないなんて、よほど顔を見られたくないんだな」
 酒の匂いをぷんぷんさせた店主はあたしの前に鶏肉の薬草焼きを置く。まったく、この時間じゃ、店主も酒を飲んでいるか。公私混同しないでよ。はあ。
「そんなにブラック・メイデンの顔はキレイなのか?」
「ああ、べっぴんさんだよ」
 ああ、面倒くさいことにブラックの仲間が興味を持ちやがった。店主と男は下品に笑う。人を値踏みするように見ないでよ。ここでお茶をこぼして、一瞬だけフードを外したのを見られただけことを、店主はどうして覚えているのかしら。
「あたしの顔なんて、どうでもいいでしょ」
 あたしはフォークで、鶏肉を刺す。
「そういや、ブラック・メイデン。最近、オトギリ領の領主さまと何かあったんだろ。一体、何をしたんだ?」
「ウワサって早いのね」
「ブラックの情報網をなめるんじゃねえよ。それで、そのキレイなツラで、魅了したのか?」
 男は楽しげに聞く。
「そんなんじゃないわよ。あたしはオトギリ伯爵に情報を売っただけ。ただそれだけよ」
 あたしは、大きく口を開け、鶏肉を頬張る。
「あはは。うわさ通りのドライなヤツだ。そりゃ、長も気に入るに違いねえな。その調査力でちょっと頼みたいことがあるんだけど。これだ」
 男はマントの下から写真を一枚とりだした。くしゃくしゃではあるが、映っているモノははっきりと分かる。あたしと同い年ぐらいの女性だ。
「はあ。その子を探せって話? 自力で調べたら? ブラックの一員ならお茶の子さいさいでしょ。わざわざ、あたしにやらせて、何か得するわけ? 別にやったげていいけど、もらうものはもらうわよ」
「この子の素行について調べてほしいんだ。おれには無理でさ」
 男は一体何を言っていているんだ?
 あたしはチキンをすべてほおばり、呑み込むと、
「それぐらいやりなさいよ。素行調査なんて、ブラックの名前があるなら、できるでしょ。今の発言、長に言いつけるわよ」
「それは困る。女の子の繊細な悩みを、おれみたいな無骨な男が立ち入って良いか不安なんだよ。ちょっとだけ話、聞いてくれ」
 男は、子猫を拾ってしまった子どものように不安を見せていた。どうやら、本当に困っているらしい。
 あたしは今日の宿泊費をもらうことを条件に、ブラックの仲間であるその男から話を聞くことにした。
 写真の女性はアサ・モルフィン。長い髪を結ったキレイな金髪碧眼の女性だ。色白で鼻筋が通っている。深い緑の美しいドレスを身に纏って、豪華なイスに座っている姿。絵に描いたような公爵令嬢。実際、モルフィン家は領土こそないものの、この国で王家とも縁が深い名家中の名家である。ぶっちゃけ、歴史からいくと、あのオトギリ領を治めているジェット家よりも古い。
 アサ・モルフィン、ねえ。まさか、ここであんたの名前を聞くなんて思いもしなかった。それにしても、ずいぶんとキレイになったわね。
「今度、お見合いをするらしいんだ。これはそれ用に撮った写真だとさ。それで、このアサお嬢さまはなぜかお見合いを拒否している。理由は親にも話してくれない。それで、ほら。貴族って、スキャンダルを嫌がるだろう。他に好きな人がいるかもしれないってことで、アサお嬢さまの調査依頼がブラックの一味であるおれのもとにきた。直接、おれが調べてもいいんだが、一番若年で女のお前の方が的確だろうっていう見立てだ。どうだ? 引き受けてくれるか?」
 う……。
 拒否したほうが、絶対良いとは思うけど、結局、引き受けることにした。売買の不成立が連続していて、金欠なのだ。

 ってなわけで、現在、アライブ領のモルフィン家の別荘の前にいる。実際は高いコンクリートの門に別荘自体は隠れている。
 マントで、汗を軽く拭く。今日も今日で暑い。
 さて、どうやって、侵入しようかな。
 考えてみたら、彼女の近辺を偵察するだけの簡単な仕事なのだ。難しいはずがない。チョロい仕事だったわ。
 あたしは「秘密の七つ道具」から、かぎ爪のついたロープを取り出し、高い門に引っかけ、いつもの通り侵入した。どこの家も、ジェット家みたいに防犯対策してなきゃいいのに……。と思うが、あれは田舎だからであって、普通の防犯はこうである。仕方がない。
 天井裏に潜り込むのも容易だった。まあ、慣れているからだけど。アサの部屋の上まで行く。どうやら、家の構造は全く変わってないようだ。
 聞き耳を立てる。古典的なメロディが聞こえる。アサの好きなピアノ楽曲だ。
 誰よりもおてんばだったアサの唯一の「お嬢さま」らしい趣味は、音楽だった。ピアノもヴァイオリンはプロ並みで、何回もコンサートを行っており、あたしも何度か聞きに行ったことがある。
 音は聞こえるものの、天井にはスキマがないので、明かりは万年筆型ライトのみ。夜目がきくから、これでも十分だけど、中の様子が見られないのは、モヤモヤする。アサの行動が分かれば、手がかりの一つも手に入るんだけど。
 どうしようか、と考えていると、突然目の前にガラス片のついた長い棒が飛び出してきた。まるで槍だ。これが刺さったら危ない。ヒヤリと背筋が凍る。
「そこにいるのは誰?」
 年齢相応の女性である落ち着いたアサの声が聞こえてきた。あたしは、息をひそめる。
「騒ぎにしないわ。その代わりさっさと出てきて、玄関から入りなさい。分かっているのよ。パパがブラックの一味に相談して、わたしを調べているのは」
「どうして、いるのが分かったの?」
 深呼吸して、あたしはなるべく低い声で聞いた。
「わたしの耳の良さを見くびらないで」
 アサの声は鋭い。
「分かったわ。正攻法に来たら、何かを話してくれるかしら?」
 あたしは、できるだけていねいに聞いた。
「ええ。あなたが無礼をしなければ、話すわ」
 なんか見透かされたようなことを言われた気がする。どうしようか。これは完全に取引だわね、と思っていると、アサは、
「そこでとどまってなくて、さっさと来なさい。最高のおもてなしをするわ」
 こう言い、槍みたいな棒を引き抜いた。

 マントについたほこりを叩き、モルフィン家の別荘のベルを鳴らした。出てきた若い執事たちは、あたしを捕まえようとしたが、久々に部屋から出たらしいアサはそれを制止させ、あたしをさっきの天井裏の下――アサの部屋に通した。中はエアコンが効いていて、とても涼しい。
「で、あなたの名前をまず聞きたいわ。フードは外さないでいいわよ。分かっているから」
 アサは冷蔵庫から瓶に入ったコーヒーを、氷がつまったグラスにそそぎ、あたしのまえに置く。
 あたしは、アサが何を考えているか分からなかったが、
「あたしはブラック・メイデン。メイデンでいいわ。仲間にもそう呼ばれてるから」
 名前だけの簡単な自己紹介をした。
「そう。わたしは自己紹介する必要ないわね。で、あなたはわたしの何を探りに来たの? 私がお見合いをしない理由かしら? パパの依頼なのは分かっているけど。パパったら、過保護ぎみなのよ」
 アサはシロップをコーヒーのグラスになみなみとつぐ。
「そうね。あなたがお見合いをしない理由が分かれば、あたしの仕事は終わりね」
「飲まないの?」
 アサは問いに答えず、グラスをあたしに押しつける。
「毒が盛ってあるとか思っている? そんなバカなことはしないわ。そもそも毒なんて持っていたら、まず最初にわたしが飲んでる」
 アサは自分のグラスの中身を銀色のストローで混ぜ、そのまますする。
「死にたいの?」
 あたしは単刀直入に聞く。
「そうね。わたしなんて、無価値だから」
「無価値?」
 アサのさみしい声に、あたしは、思わずこう言ってしまった。アサの言うことが分からない。「結婚したくない」が理由だと思っていたけど、そうではないのか?
「ねえ、あなたに聞くわ。わたしは頭がおかしいかしら?」
「は?」
 アサはワケの分からないことを聞いてきた。
「そんな自分がおかしいかって聞くことがどうかしていると思うけど? あんたのどこがおかしいの? 木登りするようなおてんばなところ? でも、それは個性じゃないのかしら?」
「どうして、わたしが木登りが得意なの、知っているの?」
 アサの鋭い質問に、
「ああ、調べたから」
 あたしは動揺を隠すように、答える。しまった。あたしのドジ!
「そう」
 アサは窓から見える明るい空を眺める。
「メイデンちゃん。わたし、嫌われているの。人として存在してはいけないんですって。でも、それを信じたくない自分もいるの。嫌われるようなことをした記憶なんてないし。死んだ方がいいなんて、思いたくもない。だから、わたしが嫌われているか、調べてほしいのよ。わたしの分も上乗せして支払うわ。売人との取引はやったことないけど、それでいいかしら?」
 突然、あたしの手を握って、アサは微笑んだ。
「それでいいけど……。でも、どうして、突然、売人を信用するの? あたしが手を抜いて、調べないで、ウソの情報を教えるかもしれないわよ?」
 あたしは意地悪なことを言ってやった。
「試すような真似は変わらないわね。このあまのじゃく。あなただから、頼むの。ブラックの一味の情報は正確で有名なのもあるけど、あなただから、頼むのよ。生きててくれてよかった。安心したわ」
 氷の刃が刺さったような感覚に陥った。
 アサは「あたし」を覚えている?
「あなたみたいなの、忘れるはずないでしょ。まあ、これ以上は、調べてからね。美味しいコーヒー、手に入れておくわ」
 ウィンクしたアサに、あたしは、大きく深呼吸をすると、
「分かったわ。全国を調べる。まず着手金を支払って。交通費に使うから」
 震える手で結露したグラスを持ち、コーヒーを飲んだ。
 少し苦めの濃いコーヒーだった。

 とは、言っても。
 アサが嫌われているとは到底思えない。
 おてんばだったけど、誰からも好かれる女の子だったし、落ち着いてきた大人の今もその様子は変わりないように思える。
 アサは芯がある人間だ。その一方で、思慮深く、思いやりがある。
 天使という存在は、アサのことだと思っていたし、その印象は今も変わってない。
 本当は彼女の家がある首都に行きたいけど、売人であるあたしは免状がないので、入れない。そこでまず、第二の都市である、ペイン領のセントラル都市に向かい、貴族に近しい商人たちに大枚叩いて、聞き込みをした。
 悪い評判など全然なかった。それどころか、とても礼儀正しい美人だと褒め称えられ、お見合いをしないことを心配されていた。
「うう……一体、どういうことかしら?」
 あたしは三等車で、大きく背伸びをし、次に向かうヒガンバナシティにつくまで、眠ろうと、眼をつむった。
 そのときだった。
 肩を叩かれたのだ。
 あたしは目を開けず、無意識にその手を払いのける。
「ちょっと。ブラック・メイデン?」
 風に吹かれた木々のような声が聞こえてきた。
 この声は……。
「あ、起きた? まさか、ここで会うなんて、思わなかったよ」
 隣の席には、長い栗毛を後ろで結った背が高い男性、オトギリ伯爵こと、ホタル・ジェットがいた。涼しげな緑色の瞳は笑っている。
 立派な本革の鞄を大事そうに抱えていた。
「ちょっと。あんた、伯爵でしょ。どうしてここに?」
 あたしは座り直し、ズレたレッグポーチを直す。
「突然だったから、一等車の予約が取れなくて」
「突然……って。何の用事なの?」
 オトギリ卿は、ため息をつく。
 聞いてくれるかい? と、いつものやさしいな笑みをする。そんな顔、しないでよ。理由はよく分からないのに、とても苦しくなる。
「忙しかったから、逃げてきた」
「へえ。それは大変なことで」
「大変だと思っている?」
「売人のあたしに、貴族サマの大変さなんて分からないわよ」
 あたしの返事に、オトギリ卿はマリンバのように楽しげに笑う。
「何が楽しいのよ……」
「楽しいというか……。キミの顔が見れたのが、嬉しいなって」
 何をほざいているんだ、こいつ。
「オトギリ伯爵……ねえ」
 田舎者とはいえ、彼も貴族だ。もしかしたら、アサのウワサを知っているかもしれない。あたしは、ポケットからお札を何枚か取り出し、
「ねえ、聞きたいことがあるの。アサ・モルフィンについて、何か知らないかしら? これだけ支払うから、教えて」
 お札を見たオトギリ卿は不機嫌に首を振った。
「そんなの、いらない」
 ああ、やっぱり。簡単に情報はくれないか。
「オレはキミと一緒にいることに価値を見いだしている。だから、お金なんていらない」
「は?」
 あたしはびっくりした。なんだ、こいつ。変なコトを言い出す。
「アサ・モルフィンって、モルフィン家のご令嬢のことだろう? オレなんかと違って、格が違うけど……。ウワサ、ねえ……。上品な人だと思うよ。でも、それだけだな。それが何か?」
 オトギリ卿は首を捻った。
「ちょっとした調査よ。モルフィン嬢が嫌われているかどうかのね。好感度調査って言った方がいいかしら」
「え、嫌われているって、誰がモルフィン嬢を?」
 不思議そうな顔をするオトギリ卿に、
「さあ。分からないわよ。その誰がモルフィン嬢を嫌っているのか調査しているの。存在してはいけないって言われたらしくって」
 あたしは端的に冷たく答える。
「なあ、メイデン。それ、嫌われているんじゃなくって、嫌われているって思い込まされているんじゃないか?」
 オトギリ卿は唐突に妙なコトを言い出した。
「思い込み?」
 あたしは聞き返す。
「そうそう。思い込み。オレ、高校時代はひきこもりでさ。この世界全員が嫌われていて、死んだ方がマシだって思っていたんだよ。人って極限状態になるまで、追い込まれると、そんな思考に陥る。今はあのとき、死ななくてよかったって思っているけどね。死んじゃったら、君と出会えなかったわけだし」
 オトギリ卿はこう話すと、何かに気がついたような表情をし、顔を赤らめた。
 変なの。
 あたしは座席に座り直し、マントを整える。
 嫌われていると思い込まされている、か。その視点はなかった。
「えっと。オトギリ卿。ついでだから聞くけど」
「いいよ。何でも聞いて。分かる範囲なら教える」
 あたしの言葉に真っ赤な顔のオトギリ卿は微笑む。なんでこんなに明るい表情ができるんだ。
「嫌われていると思ったきっかけってあるの?」
「ああ、それか。そうだな……。どう言えば……」
 あたしの質問に、オトギリ卿は頭を抱えた。
「無理ならいいわよ。悪かったわね」
 あたしはフードをキツく握った。
「悪くないよ。えっとだな……。そう、親父に言われたんだ。お前は愚図だって。母親が死んだ程度で、そんなに落ち込むなんて、男らしくないって言われてさ」
「マザコンだったの?」
「まあね。親父が人格破綻者だったから、母さんにべったりだったよ。それなりにやんちゃだったから、結構怒られていたけどね」
 オトギリ卿の視線はどこか遠い所を見ていた。
「ガキだったのね」
「そうだね」
 オトギリ卿は楽しげに笑う。
「この世界で必要となる人間になるには、男らしく堂々としているのが絶対だと思い込まされていた。でも、違うんだ。この世界に必要とされる絶対条件は、生きていること。それだけなんだ」
「はあ」
 生きていること。ねえ。あたしが、今ここに存在しているのもそうなのかしら。
「つまり、モルフィン嬢が嫌われていると思い込まされているってことかしら?」
「そうかもしれない。あとは、きみの腕の見せ所だろう? お仕事、がんばって」
 満面の笑みのオトギリ卿に、あたしの胸はとても苦しくなった。この笑顔を見ると、どうして、こんなに嬉しいのに、苦しいのだろう。
 アベコベすぎて、混乱しそうだ。
 車掌のヒガンバナシティの案内の声が聞こえてきた。
 あたしはオトギリ卿に挨拶をし、駅に降りた。
 振り向くと、優しい顔でこちらを見るオトギリ卿が見えた。
 あんなに優しく笑ってくれた人なんて、久々すぎて、戸惑ってしまった。

 潮の香りがする。ヒガンバナシティは貿易港だから、当然ではある。
 このヒガンバナシティには、この国で一位二位を争う豪商がいる。貴族よりも財産を持つ貿易商だ。この人物は顔が広い。どうにかして、接触したい。
 しかし、あたしはしょせん、売人である。金をいくら積んでも、豪商に会うどころか、番頭からも話を聞くことができなかった。
 せっかく来たのだから、海の物でも食べようと思っていると、
「ねえ、売人さん? お話、いいかしら?」
 長い茶髪にメガネをかけた女性が話しかけてきた。海に似合わないビビットカラーのドレスを着ている。とても高級な生地のドレスだ。
「ええ、いいけど。あなたは誰?」
 こんな豪華なドレスを着た女性なんて、そうそういない。仕立てもいいし、生地もいい。
「私、ララ・ヒガンバナ。お父さまと会おうとしてたでしょ。門前払いをしていたのを見たわ」
「もしかして、あなたのお父上って、この街を取り仕切っている豪商?」
「ええ」
 ララは甲高くケタケタと笑う。なんか下品に見えるのは何故だろう。アサを見たせいか。
「ねえ、私とお話しましょ。美味しいお菓子が手に入ったの」
 本音を言えば、この手の女は嫌いだ。女性を武器にしているタイプなのが分かる。触れてはいけないタイプの女性だ。
 しかし、仕事のためだ。アサのためだ。同じ女性として、何か情報を持っているかもしれない。あたしは、意を決して、お茶にお呼ばれすることになった。

 ララの部屋は、流行りの俳優のポスターがひしめいていた。流行りといっても、あたしはカッコイイとは思わない。今までにあった男の中で、オトギリ卿が一番カッコイイ。
 って、どうして、オトギリ卿を思い出したのだろう。分からない。
 座ってと言われたイスに座った。成金特有の悪趣味な金縁だ。多分、メッキだろう。豪華さだけを追求したイスである。
「ねえ、何を調べているの?」
「えっと……。アサ・モルフィンについての素行調査。お見合いをしない理由を探しているわ」
 ララの質問にあたしは答える。サイフを取り出し、
「これだけ支払うから、何か情報、ないかしら?」
 札束を渡した。
 お札を数え終えたララは、満足そうに、
「そうね……。あの子、頭がおかしいのよ」
 と言った。
「頭がおかしい? どういうこと?」
 あたしは尋ねる。
「そう。言っていることが意味不明なの。人間の思考回路じゃないわ。まともじゃないの。まともだったら、この私に歌の指図しないものでしょ」
 ララはクッキーの缶を開ける。
「指図しない……?」
 クッキーをほおばるアミにあたしは尋ね続ける。
「そう。私の独唱でアサが伴奏を弾くときがあってね。私は絶対に間違えないのに、アサったら、半音違うって、ずっと言ってたの。うるさいでしょ。どうかしているわ。ピアニストとしての矜持がないのよ」
 あたしが知る限り、アサはこの国一番のピアニストだ。ラジオでかかるぐらいは有名である。そんなピアニストの話を聞かないなんて、お前の方がどうかしていると思う。つーか、ピアニストとしての矜持をトーシロがほざくな。
 でも、そんなことを言ったら、反感を買うに違いない。
 もう少し話を聞こうとしたが、ララの携帯電話が鳴った。新型の高級なモデルだ。こっちに断りもせず、ララは電話に出る。
「今からデートなの。じゃあね、行ってくるわ」
 身勝手にこちらに微笑むと、ララは小さなポーチを持つと、部屋から出て行ってしまった。残されたあたしは番頭に追い出された。

 そのあと、なんとか数人の使用人から、話を聞くことができた。下っ端のメイドの話によると、ララとアサは三年前から仲が良かったそうだが、半年前のコンサートの練習中、言い合いになったらしい。メイドはアサが泣いているのを見て、なぐさめたとか。無事、コンサートは終わったようが、仲の良かったはずのアサが来なくなったと言う。
 この言い合いで何かがあったのだろう。あの負けん気の強いアサが泣くほど、あの女、何を言ったのだ? どれほど、酷い言葉を言ったのだろうか?
 アライブ領の酒場の二階の部屋で、あたしは録音した人たちの証言を聞いていた。オトギリ卿のあの爽やかな声は聞こえた途端、胸が弾けそうで、死にそうだった。こんなことで死んでたまるかと大きく深呼吸し、なんとか全ての証言をまとめた。
 お腹が空いた。時計を見ると、もう夕餉の時間だ。空はまだ明るいのに。なんか時間の感覚が狂いそう。
 下の酒場で、またあの鶏肉の香草焼きを注文していると、
「ああ。メイデン。そこにいたのか」
 長――ブラック・レディ――が話しかけてきた。相変わらず、黒いマントとケバい化粧だ。手にはワインの入ったグラス。
「そこ……って。長、あたし、それなりに引っ張りだこなのよ。そら、あちこちに行くわ」
「あははは。元気そうでなにより。あんなひよっこが、こんなに元気に鳴くなんて、当時は思っていなかったよ」
 長はワインを一気飲みする。
「あたし、雄鶏じゃないんだけど?」
 あたしは不機嫌に返事をする。
「売らなくて、正解だったって話だよ。雄鶏は食うしかないが、お前はその審美眼があるんだ。それが十分な価値を持っているんだ。誇れ! 誇れ!」
「はあ……」
 長の言葉は意味深なことが多くて、時々、分からない。
「ところで、あのマインドコントロール事件の後も、ホタル・ジェットとまた一悶着あったんだろう? 話せ」
「え?」
「話せ」
 突然、長の声は鋭くなった。このときの長には逆らわない方がいい。
 あたしは、頼まれていた売人の素性について調べていたこと、それがオトギリ卿の友人が関わる詐欺事件と繋がっていたことを話した。
 長はため息をつくと、
「ホタル・ジェットって、トコトンお人好しだね。あの男の息子なのに」
「はあ」
 長は先代のオトギリ卿を知っているのか。聞きたいけど……。この感じでは聞けそうにない。
「メイデン。お前、今のオトギリ卿のことが好きか?」
「え?」
 唐突に聞かれたことに、パニックになる。
「好きって……一体……?」
「どうして、ホタル・ジェットと一緒に行動したのかって聞いているんだ。あの男のどこがいいんだ?」
 なんだ、この質問責め。
「正直者……のところかしら。顔が好み……っていうのもあるけれど、ウソをつけない人間だと思うから。あとお人好しだし。悪い人どころか、良い人よ。バカがつくほどのね」
 あたしの答えに、長は深くため息をつく。
 え、何かマズい間違いをしちゃったかしら?
「審美眼があるお前が言うんなら、そうだろうね。私は止めたいがな」
 長はワイン瓶を持ち、グラスに注ぐ。
「それはどういう意味?」
「別に。あんたには幸せになってほしいってだけ。この国にしばられることなくね」
「しばられる?」
 長の言うことが本当に分からない。
「ブラック・メイデン。本当のあんたはこの国に殺された。だから、もうこの国にしばられる必要はないんだ。金はいくらでもやるから、この国から出ていいんだよ」
 あたしは黙ってしまった。
 確かにね、あたしはこの国のシステムに社会的に殺された。でも……。
「長。あたしね、この国が好きなの」
「好き? こんないびつな国なのにか?」
 長は目を大きく開いた。
「そう。このいびつさにあたしは殺されたわけだけど、社会的に殺されたおかげで、普通じゃ見ることができないこの国の姿を見ることができたわ。そして、母さんがしたことは残虐だってこともね」
「だから、出て行けばいいって言っているんだよ。これ以上、この悲惨な国を見る必要はない。外の世界で自由に生きればいいんだ」
 しんどそうに長はあたしを見る。
「この前までは、国外に行きたいと思っていたわ。でもこの国の歯車として、もう少しだけがんばりたいと思えるようになったの。社会にいるための絶対条件は生きることって分かったし」
 長はワインを一口飲むと、
「もしかして、ホタル・ジェットのせいか?」
 あたしの心を見透かすように聞いた。
「そうね。そうかもしれないわね。あんなアホが貴族やっているんだもん。あたしがもう少し売人をやっていてもいいかしらって思えるようになった」
「ふうん」
 長は生返事をした。
「私としては、これ以上、あの男と会ってほしくないんだがな」
「どうして?」
「クズの息子はクズだ。女を振り回す男の息子なんだ。きっと酷い目にあうに違いない」
 苦々しい顔の長に、あたしは怖くなった。
 あんなに裏表がない人間が酷いことをするですって?
 まさか!
「私の人生はジェット家の男に振り回されたものだったからね。お前もそうなってほしくないだけなんだ」
「はあ」
 長の言葉に、あたしはため息をつく。確かに振り回されてはいるけど、こっちも振り回しているのだ。
 お互い様なのに。
 丁度、好物の鶏肉の香草焼きが来た。うう、毎回食べるたびに思うけど、やっぱりおいしい。
「お前の食いっぷりを見るのは好きだよ。なつかしい」
 あたしは何故長がこんなことを言うのか分からなかった。
 そして、今晩の食事代・宿泊費をすべて長におごってもらった。
 ラッキー。

 翌朝。昨夜、お腹いっぱい食べたおかげで、よく眠れた。
 朝食のパンを水で流し込みながら、アサ・モルフィンの評判について、考えていた。
 好かれているかどうかはともかく、少なくても、アサは嫌われていない。じゃあ、なぜ、アサは嫌われていると思い込んだのか。
 思いつくのは、ララに何かを吹き込まれた。それしかない。
 アサの調査をしているあたしに、アサの悪口を言ったのは、ララのみだ。
 どうかしている、とララは言ったが、言っても良いことと悪いことの区別がついていない時点で、どうかしているのは、お前の方だ。
 どのように、この結果をアサに話そうか。いくらララの育ちが悪いと言っても、誰かを下げて、アサを上げる報告はしたくない。
 色々悩んだが、
「とりあえず、行きましょうかね」
 あたしは、モルフィン宅へ向かった。

 アサの部屋の窓から、ビッグバンドジャズの軽快なメロディが聞こえる。
 そっと、部屋の中をのぞくと、アサは天蓋付きのベッドで大きく寝そべっていた。目の隈はひどく、青ざめている。
「アサ?」
 あたしは彼女の名前を呼ぶ。アサは飛び起き、窓を開けた。
「ああ、メイデンちゃん。どうだった?」
 アサの作り笑いが悲しい。
「ひとつ、聞くわ。ララ・ヒガンバナからなんて言われた? それによって、調査結果が変わるわ」
 あたしは正直に尋ねた。
「そうね。『私の話を聞かないあなたも、あなたのことを慕う身の回りの人もおかしい』って言われたわ」
 頭に血が上ったあたしは、両手拳を握る。爪で手が痛い。
「おかしいのはどっちだって話よ。この世の中、まともな人間なんていないわ。まともじゃないのが正常な社会なの。まともな社会だったら、あたしみたいな売人なんて存在しない。つまりね、自分はまともだって言っている方がクレイジーよ!」
 あたしの大声にアサは驚いていた。
「大丈夫。アサ、あなたは普通よ。それどころか、あなたのことを心配に思っている人は、あなたが想像するより、はるかに多い。早く元気になりなよ」
 あたしの調査報告に、アサの目はうるんでいた。
「そうなのね。私、みんなに心配かけちゃっていたのね。ありがとう」
 アサはあたしの砂ぼこりまみれの手を握った。
「あなたもね……あなたが思っているより、心配されていたのよ。少なくても、私はさみしかった。生きていてよかったわ。いつでも戻ってきてね」
 あたしのフードにアサは手をかける。その手を払いのけ、
「そうね。とりあえず頑張ってみるわ」
 あたしは親指を上げた。

 さて。アサに関する仕事は終わった。
 が。
 あのララ・ヒガンバナは許せない。
 義憤……というと、変なのだけど、お前が人に指図できるほど、清廉潔白でまともな人間なのかを問うために、調べることにした。
 モルフィン家からもらったお金はたくさんあるのだ。調査費はなんとかなるはず。
 あたしは、黒き情報屋一味の中で、一番年が近いブラック・ナイトにコンタクトをとった。もちろん、携帯電話は持っていないので、小型無線機である。
 電波ジャックされるので、音声ではなく、モールス信号による暗号でのやりとりになる。そのモールス信号も、日付と絡めて暗号化されているので、毎日変わる。黒き情報屋一味の中でも、ごく少数しか知らない。もの覚えの良さというものも必要だし、そもそも、長の信頼というステータスがないと教えてももらえない。
 ナイトには、以前貸しがあったので、今回、ただで情報をもらった。
 彼の情報によると、豪商ヒガンバナは相当儲かっているらしい。そのわりには税金の支払い額が少ないようだ。
 そして、娘、ララは、市民が生きやすくなるための活動の団体のトップだそうで、売人――正確には罪人――をなくそうとする運動をしているとか。
 その団体もどうやら、金回りがおかしいようで、うさんくさい人物も絡んでいるようだった。
 その不正について教えてと聞き返すも、何かあったようで、ナイトからの返信は途絶えた。
 とりあえず、不正をしているかどうか、ララ本人に聞こうかしら。素直に白状するとは思えないけど。
 ナイトの情報から、あたしは列車で現在、ララ・ヒガンバナがいるというクラリス領へ向かった。

「みなさんが生きづらいのは、この世の中の国王のせいです! 偉い人間は偉いまま、貧乏人は貧乏人のままで一生を終えます。市民や売人は貴族に、女性は男に搾取される。それが許されていいのでしょうか!」
 ララは大通りで、大きな拡声器を抱えながら、叫んでいた。回りにいる数人の男女はポスターを持ち、ララの言葉を復唱する。行き交う人々は、ポツポツと立ち止まっている。拡声器から発するハウリング音で、耳が痛い。
「この国の制度を変えるために政治家に働きかけています」
 これがいわゆるロビー活動ってヤツか。ああ、非常に面倒くさいヤカラだわ。
「そして、この国の弱者である売人の方々を救うため、寄付金をお願いします!」
 弱者救済とは、お題目は素晴らしい。
 しかし、言葉に重みを感じない。なんでだろう。
 なんで、こんな上っ面にしか聞こえないのだろう。
 金を持っているのに、救うべき人間から金を要求する。何故?
 気がつけば、あたしは手を挙げていた。
「ねえ、貧乏人は貧乏人のままというけど、あなたは一体どうだったの? お金持ちじゃなくって? そんなに市民からお金を集める必要なんてあるかしら?」
 あたしを見たララは、少し動揺する。しかし、すぐ、
「パパが頑張ってくれたおかげで、私は裕福に暮らせています。しかし、自分で使えるお金は多くありませんので、市民の皆さまに寄付金を募っているのであります」
 堂々と答えた。
「そう……」
 あたしは少し考えた。
「あなたも私たちの団体で保護してあげますよ!」
 ララは笑顔であたしの手を握る。
 この気持ち悪い作り笑顔の下をひっぺはがしたい。そんな衝動に駆られ、
「あたしの仲間があなたの団体の透明性について調べたのだけど?」
 と言った。ララの顔が曇った。そして、
「売人のくせに、私の団体を調べるなんて、最低!」
 と叫んだ。
 あらら。こんなに簡単に化けの皮が剥がれるなんて。
「ねえ、売人のくせにって、あなた、酷いわね。あたしのことを保護したいんじゃなかったのかしら? 差別するの? 言っていることがお題目と違うわよ」
 ララの表情は凍った。あたしの言葉にオーディエンスはざわめく。
「じゃあさ、一番聞きたかったことを聞くわね。あたしの友だちで、アサって子がいるの。その子ねえ……あなたの酷い悪口のせいで、傷つき、生きづらくなったのよ。死にたいって言ってたわ。親友を傷つけられて、あたしも心が痛いのよ。どう、ケジメをつけてくれるかしら? ああ、コレ、質問じゃなかったわ。ごめんなさいね」
 さて。どんなに化けの皮が剥がれても、この女は活動家なのだ。少しぐらい見繕うだろう。
 どんな言い訳が出てくるのかしら。楽しみだ。
 そう思っていたあたしはバカだった。
「この私がアサ・モルフィンを結婚させないように根回ししていたことを言っているの? そもそも、私の方が先に好きだったあの御方と結婚するなんて、許されざるべきことなのよ。アサも落ちぶれたものね。こんな売女を友人にするなんて。貴族のすることかしら?」
 激昂したララのこの言葉で、オーディエンスは静まりかえった。
 ここまでの単純バカが存在するなんて思ってもみなかった。
 それと同時に、こんなバカがいる限り、この国を良くするために、この世界はあたしを歯車として、必要としているのではないかなと思った。
「モルフィン嬢を落ち込ませていたのは、お前か!」
 一人が叫んだ。
「キレイゴトをどれだけ並べても、あのアサさまを傷つけたお前は酷い女だ!」
 もう一人叫んだ。
 次々と人々は叫び、とうとう、
「帰れ! 帰れ!」
 というシュプレヒコールとなった。
 ララは顔を真っ赤にさせ、あたしの胸ぐらをつかみ、
「お前お前お前ぇ! 売人のくせに貴族の味方をするの? 人助けをしている私の方が偉いのに!」
 と、怒鳴り散らかした。
 あたしは、ララの頬をビンタした。
「言っておくけど、あたしに味方はいないわ。今、あなたのしたことが返ってきただけ。せいぜい、足掻きなさい」
 あまりのムカつき具合に、ララを突き飛ばし、そのまま、その場から立ち去った。
 シュプレヒコールはララの声で一度止まったが、あたしがララを突き飛ばした瞬間、オーディエンスはララの腕をつかみ、
「あのさ、うちんとこ、あんたの父さんが売掛金を踏み倒してくれてさ、苦しいんだわ。キレイゴトを言う前に、払うもん、払ってくれねえか?」
 服装から見て、八百屋を営んでそうな屈強な男が、睨んでいた。
 やぶ蛇って本当なのね。
 少しぐらい言い訳を考えてもよかったのじゃないかしら。
 一度、振り返り、こう思った。

 翌日。クラリス領の薄暗い売人の宿屋で、朝食をとっていると、あたしと同じマントの男――ブラック・ナイトがあたしの前に座った。フードで顔は見えないが、それはお互い様だ。
「おい。あれだけのことをよくやらかしたな」
「なんのこと?」
 ナイトの言葉にあたしは首をかしげる。
「俺は情報をやったよ。でも、情報をあんなふうに、ばらまくって、黒き情報屋の一人として、一体どうなんだ?」
「ばらまいてなんかいないわ。自供しただけじゃないの?」
 自身の頭を思い切り叩いたナイトは、
「それはそうだけどさ……。おかげで、ヒガンバナの脱税のスクープは高く売れたけどさ……」
 小さくつぶやく。
「お前も変わったよなあ。あんなちび助だったのに、こんなに度胸のある人間に成長するなんて。長の目に狂いはなかったんだな」
 ナイトはあたしの頭をコツンと一回たたく。
「もう自分の意志で立っているってわけだ。ウワサの例の伯爵についてこうが、そんなのは誰も責任をとってくれない。自分の人生は自分で決めなきゃダメだ。誰と、どの道に歩んでも、後悔は決してするな。ここはおごってやる。じゃあな」
 からかうようにゲラゲラとナイトは笑うと、あたしの伝票を持ち、そのまま会計に行ってしまった。
 ナイトは一体何を言いたかったのか?
 あたしの頭にはクエスチョンマークが浮かぶ。
 自分の意志って、一体どういうことかしら?
 悩んでいたが、友人のラズベリー・ガールに飲みに誘われて、その疑問は宙へ消えた。
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