マミルとマモルとコノハ

文字数 609文字

「パパ、タヌキさんいるよ・・・かわいいね!」
「ああ、そうだね、こんな時どうするってママに教わった?」
「手を出さないでそっと見てる。」
「そう、よくできた。」

 娘の「コノハ」は、黒い瞳をキラキラさせ、三匹の子ダヌキが「恵みの協生ゾーン」で秋の味覚に夢中になっているのを見つめている。

「あ、ママが来た。ママー!」
 地域の子供達を引き連れてタヌキ公園にやってきた母親に、コノハは大きく手を振る。娘の姿に気づいたマミちゃんは恥ずかしそうに胸元で小さく手を振る。

 マミちゃんは、母校の中学の元教頭先生が立ち上げたNPOに所属している。この団体は、田瀬谷区で動物との共生を推進する取り組みを行っている。マミちゃんはそこで、このようにタヌキの接し方を教える一方、人知れず子ダヌキたちにも人間との接し方を教えている。いわば「二刀流の先生」だ。
 ぼくはといえば、地元の農業の専門大学に進み、これからの地球環境に適した農法を研究している。ここの「恵みの協生ゾーン」も大切な研究テーマの一つだ。

 時々、大学の研究が非番の日も、娘を連れてココを訪れる。さっきまで走り回って遊んでいたコノハは、疲れたのか、レジャーシートに上がると、コトンと眠ってしまった。
 すると。少し縞がかったシッポが、コノハのお尻に生えてくる。ぼくは持参した大振りのバスタオルをマミちゃんと僕の娘にかける。
 いつか、この子に教えてあげないとな。君は、お母さん似だって。

(了)
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