おっさんの笑い声の研究

文字数 770文字

 先週、職場で職員が来客と一緒に笑い興じているのを背中で聞きながら、この笑い声を擬音で表現できないかなあと色々考えていたのだが、どうにもしっくりこない。おっさんたちが立てる怪鳥みたいなけたたましい笑い声、で伝わるかな。ツーカーの営業と顧客とか、別部署の人間と雑談する時とか、完全な身内ではなく、力の上下や競合関係が確かに存在するのだが、それでもお互いに万事心得ているふうの間柄で起きる笑い、で伝わりますかね。ナチュラルな笑いではなく、特定の場面でしか聞かれない類いの笑いだ。カカカカカでもなく、イヒヒヒヒヒでも何か違う。ヒャヒャヒャヒャが相対的に近いように思うのだが、これだと喉が痙攣したような感じがうまく再現されない。ケッケッケッケッだとその点は改善されるのだが今度はスピード感が落ちて、あのけたたましい雰囲気が出ない。喉から絞り出される不自然な声なので、五十音に変換しづらいのだろう。その意味で断末魔の悲鳴に似ているのかも知れない。聞けば聞くほど奇体な笑い声だと思う。耳を澄ませると、音節が機関銃みたいに短く正確なリズムで吐き出されているのがわかる。人間の声というよりも、密林に響く正体不明の生物の声のようだ。とは言え、そこらにありふれた笑い声なのもまた確かだ。だけど、自分が観測した範囲内では、若者や女性がこういう笑い声を上げた例は知らないな。あとこれも印象だが、このタイプの笑い声をするのは太鼓腹のおっさんが多いな、なぜか。体の確造がこういう笑いを生むのか。色々謎だが、もう一つ不思議なのは、自分も社会経験なるものがなくもないおっさんでありながら、こういう笑いの輪に加わったことが一度もないことだ。そういえば。ホントどうでもいい話だが、おっさんの笑い声をここまで注意深く観察した人間は自分以外にいないと思うので記念に書き込んでおく。
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