第2話

文字数 1,863文字

村の入り口でクロン、メルリーン、ジライの3人は、村長に別れを告げ村を出る。

「結局いいのか。俺が護衛になって」

村長に挨拶しているメルリーンの横で、クロンはジライに訊いた。

「メル様が決めたことじゃ。ワシにはもう止めれん。じゃが――」

ジライはクロンを睨みつける。

「メル様の信頼を裏切ったら許さんからな小僧!」

「せいぜい頑張るさ」

「……むしろ貴様はよかったのか。いきなり護衛なんぞ頼んで」

ジライはクロンから視線を外しながらも、質問を返す。

「確かに俺にも目的はある。だがそのためには力が必要だ」

クロンは拳を握りしめながら言った。

「そして金も……」

その言葉の時は悲しそうな表情をしていた。

「では行きましょう。じい。クロンさん」

「ああ」

「うむ」

そう言って3人は村を旅立つ。

その様子を村長は見守りながら呟いた。

「変わった方たちじゃった。しかしクロンといったか。その名前どこかで……」

その呟きは誰に聞こえることもなく消えていった。



「はあっ!」

クロンの斬撃がモンスターを討つ。

「クロンさんはやっぱり強いですね」

「ワシもあれくらいできますぞ」

喜ぶメルリーンと、年甲斐もなくすねるジライ。

「そんなに強いのになぜ強さを求めるのか、訊いていいですか?」

メルリーンは真剣な表情になり、クロンに問う。

「聞きたいのか?」

クロンは厳しい表情でメルリーンを見る。

「無理にとはいいません」

2人はしばらくにらみ合う。

「そのうちわかる。今はまだ話さないでいいか」

「ええ。その返事で十分です」

メルリーンは笑顔で返事をした。

しかしクロンの事情はこの後すぐに明かされる。



とある町だったもの。廃墟にたどり着いた3人。

「これは……」

「酷い有様ですな……」

メルリーンとジライが呟く中、クロンは走り出していた。

「小僧!?」

「クロンさん!?」

(この闇の力。間違いない。『奴』がまだいる!)

クロンは廃墟を駆ける。そして町の中心らしき場所で立ち止まった。

「見つけたぞ……」

そこには黒いマントの男が一人。

その男は常人でもわかる異質な魔力を放っていた。

男は振り向きクロンを見る。

「きみは……ああ、あの時の」

「お前を……殺す!」

クロンは瞬時に剣を抜き、男に迫る。

黒マントの男はそれを避けると、疑問符を浮かべた。

「何を怒っている? 私はきみに力を授けた。感謝されるべきではないかな?」

「黙れっ!」

クロンが剣を再度、三度、四度、振るう。

それを男は軽く回避していく。

「お前のせいで村は! みんなは! そして――」

クロンの脳裏に浮かぶ1人の赤髪の少女。

「――レッカは!」

クロンの最大限の力を込めた一撃。それを男は自らの剣で受け止めた。

「ここまでかな? 力を授けた大本である私に敵うとでも?」

「っ!?」

男はクロンを大剣ごと吹き飛ばした。

「ぐっ!」

「そしてきみの言ってることは大きな間違いだ。なぜなら――」

その言葉は少し前に追いついていた、メルリーンとジライにも聞こえていた。

「――村を滅ぼすきっかけを作ったのは、他でもないきみ自身なのだから!」



「小僧が……」

「村を滅ぼした……?」

2人はクロンを見る。

クロンは立ち上がりつつ、男を睨みつけた。

「……そうだ村が滅びたきっかけを作ったのは俺だ。だから――!」

再びクロンが突進する。

「お前を殺して村のみんなへ捧げる!」

クロンの剣戟はさらに勢いを増す。

だが変わらず、男は時にかわし、時に防いでクロンを軽くあしらう。

「全然駄目だね。とても同じ力とは思えない。残念だが……」

男が剣を掲げる。その剣には禍々しい魔力が伝っていた。

「終わりだ」

男は剣を軽く振った。

軽く振っただけ。しかしその一撃はクロンを飲み込み、廃墟となった町の壁に叩きつけた。

「がはっ……」

「クロンさん!」

メルリーンがクロンに駆け寄る。

「ん?」

男はメルリーンを見る。

「不思議な力を持っているようだね。興味深い」

男がメルリーンに近づこうとした時。

「メル様には触れさせん!」

ジライが割り込み剣の一撃を放つ。

その一撃は、腰痛で苦しんでいた人物とは思えない強力な一撃。

だがそれも男には通じない。

「ぬうっ!?」

「ご老体。無理はいけない。が……」

男は振り向き歩き始める。

「少年と、ご老体、あなたの一撃に敬意を表してここは引いてあげよう」

それをクロンは起き上がりながら追おうとするが……。

「待てっ……ぐっ!」

すぐに倒れてしまった。

「じゃあね」

そう言って男は影のように消えていく。

「く、くそっ」

「クロンさん……」

「小僧……」

クロンは地面を殴りつけ叫ぶ。

「ちくしょぉー!!」

その叫びは、降ってきた雨に吸収されていくのだった。
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