第2話

文字数 14,396文字



WILD CHAIN参
海よりも深し

一度心に決めたなら、それについて振り返ることはしない。

          マイケル・ジョーダン



































 第二条【海よりも深し】



























 「紅蓮の方はどうだ?」

 「変わりありません。普段通り、仕事をこなしています」

 「気を抜くな。監視を続けろ」

 「はい」

 監視下の中、紅蓮は普段通りの仕事をこなし、というよりも、普段よりも多く与えられている仕事を終わらせていく。

 ひとつの裁判がやっと終わっても、事務仕事から報告書、費用など全てを紅蓮にやらせて時間がかかるようにしているのだ。

 監視している暇があるなら、こちらの仕事を手伝ってほしいと思っている紅蓮だが、そんなことを言ったところで、手伝ってもらえるとも思えず、それならと一人で着々と仕事をするのだった。

 一方、同じように監視されながら仕事をしている渋沢は、誰が見ても分かるほどに元気がなくなっていた。

 下宿先には知り合いの聖がいるが、聖ともそう頻繁に会う事は出来ない。

 下級裁判所の裁判長として仕事をしていた頃の面影は、多少残ってはいるものの、今の渋沢にはまともな判決は下せないだろうという判断をされ、渋沢は雑用のような仕事をさせられているのだ。

 一日中部屋に籠っていることもあってか、監視の視線を感じながらの仕事ではないが、部屋の外や下宿の建物の外にいる監視役が、なんとも鬱陶しい。

 最も辛い状況にあるとも言えるのが、今回の件で捕まってしまった隼人だろう。

 隼人は今現在も、拷問を受けている最中だ。







 「んー」

 ぐるぐるぐるぐると、目が回っていつものように気持ち悪くなるのは目に見えているのだが、奴は今日も椅子に座って回り続ける。

 今よりも若い頃だったら、きっと「メリーゴーランドみたーい」とか「コーヒーカップみたーい」とか言って、一人ではしゃいでいるのだろうが、歳も歳なため、そんな悠長なことを言う余裕はないらしい。

 だが、それでも回すのを止めないのはきっと、暇だからだ。

 「あー、なんか吐きそう」

 高速で回転をしていた椅子を止めると、奴、つまりは南監獄支部長の叶南は、顔を顰めて窓を開ける。

 こうやって叶南が椅子で遊ぶのはいつものことで、以前、一度回らない椅子を与えたことがあったのだが、その時叶南は非常に不機嫌であったという。

 ニコニコと微笑んでいる顔が特徴の叶南だが、常に舌打ちをし、眉間にシワを寄せていたとかで、叶南には回る椅子を用意しようという結論に至ったようだ。

 「あ、そういえば、去年貰ったクッキーかなんかあったっけ」

 そう言うと、叶南は椅子に座ったまま移動を始めた。

 「あれー?無いな」

 ガサガサと、デスクの引き出しから本棚の奥、ゴミ箱の中にベッドの下、天井の上に自分が着ている服をポンポンと叩いた。

 だいたいお菓子が入っているのは、デスクの引き出しか・・・デスクの引き出しだ。

 「食べちゃったんだっけ?」

 うーん、と腕組をして、いつ食べたんだということを思い出そうとしながらも、こくこくと舟を漕ぎ始めた。

 だから、コンコンとドアが叩かれたことに気付かなかった。

 「おい」

 「んー」

 「おい」

 「・・・・・・」

 部屋に入ってきた人物にも気付かず、叶南は涎を垂らして何やらむにゃむにゃと幸せそうに寝ていた。

 デスクに顔を横にしている叶南の横に立ち、くるくる回る椅子に足をかけて、勢いよくガッ、と蹴飛ばした。

 そのまま素直に転べば、まだ可愛げがあったのだろうが、叶南は転ぶことはなく、目をぱっちり開けて空気椅子をした。

 そして、椅子を蹴飛ばした張本人に向かってニコリと笑いかけると、立ちあがって椅子を自分のもとに戻す。

 ぎし、と椅子に座って足を組むと、叶南はまた椅子を回しだす。

 「何か用?貴氏」

 「・・・調査資料だ」

 「調査資料?」

 ぶっきらぼうに渡されたそれを手にとると、確かに何かの報告書のようだ。

 ペラペラと捲って簡単に読んでいると、貴氏は何も言わずに部屋を出て行ってしまった。

 「・・・・・・お茶くらい用意してくれても罰は当たらないと思うけどね」

 どちらが客人かなんて、きっと叶南には関係ないのだ。

 貴氏から渡されたそれを眺めていると、叶南は口元を歪ませる。

 「ふーん」

 ぽいっと貴氏から渡された資料を、無造作にデスクの上に放り投げると、回転するのを止めて窓の方に顔を向ける。

 外からは鳥の囀りも聞こえてきて、なんとも平和に思える。

 「・・・あいつらに掻き消されるのは目に見えてるしな」

 珍しく真面目な顔をする叶南は、左手で器用に引き出しを開けると、その中から煙草を取り出し、口に咥えた。

 しかし、火はつけない。

 昔吸っていたことがあるのか、しかし誰も見たことはないだろうが、叶南はすでにオイルがないライターをカチカチといじるだけで、特に吸う心算はないらしい。

 口に咥えただけの煙草を歯でぎりっと噛むと、指でつまんでゴミ箱に入れる。

 「正々堂々とやるしかねえってことか」







 「ぐあっ・・・!!!「

 「おいおい、まだまだ続くんだからよお、これくらいで死なれちゃ困るぜ」

 拷問を受けている隼人は、磔にされていた。

 十字架をあしらったそこに、両手を広げるようにして磔られた隼人の腕には、すでに太い釘が何本も刺さっていた。

 そこからは真っ赤な血が流れ出ていて、隼人は貧血を起こしそうになっていた。

 気を失っていないだけでも充分なのかもしれないが、とにかく痛覚の感覚が異常なまでに暴走している。

 手足は紐などで縛られていないため、身体にささっている釘の部分が、隼人の体重を支えるために、余計に喰い込んでいる。

 「さーて、次は足だな」

 ブラン、と野放し状態だった隼人の足に狙いを定めると、男は釘をまず脛にあてがう。

 そして刺そうとしたとき、拷問部屋に時咲が現れた。

 「待て」

 「と、時咲さん」

 部屋の中に入ってくると、時咲は隼人の方をちらっと見て、男たちに告げた。

 「少しこいつと話をしたい。お前たちは休憩に入れ」

 「はい」

 時咲の言う通りに、男たちは隼人をそのままに、部屋から出て行った。

 全員が部屋から出て行くと、時咲は隼人の前に酒瓶でも入っていたのだろう木箱を持ってくると、そこに腰掛ける。

 足を組みながらポケットから煙草を取り出すと、一本口に含み、マッチを取り出して煙草に火をつけた。

 「ふー・・・」

 「・・・・・・けほっ」

 周りに煙草を吸う人がいないからか、それとも拷問を受けて身体が弱くなっているのか、とにかく思わず咽てしまった。

 咳をすると、身体が振動してまた痛む。

 隼人が咳をしたのを聞くと、時咲は顔を横に向けてもう一度だけ煙を吐いた。

 「悪い悪い」

 まだ吸えた煙草を足元に捨てると、靴でぐりぐりと火を消した。

 それから隼人の方を見据えると、時咲は組んでいた足を一度下ろし、膝を曲げて木箱の上にそのまま乗せた。

 「裁判を邪魔した悪魔がお前のじゃないってことくらい、分かってんだよ」

 「?」

 「ありゃあ、俺達が放った悪魔だからな」

 「・・ちっ!てめぇらの仕業か。そんなに俺のことが邪魔だったか?」

 思わず身体に力が入ってしまう隼人だが、少し前のめりになっただけで、釘がさらに食い込んできて、そこから血が出る。

 「まあ、邪魔っていうか、目障りだったのは間違いねぇな。お前らは少し、正義を主張しすぎたんだ」

 「正義を主張?」

 また何やらポケットを漁りだした時咲だが、煙草を出して吸おうとしたのだろうが、隼人を見て火をつけるのを止めた。

 口に咥えているだけで落ち着くのかは知らないが、とにかくそのままの状態で話を続ける。

 「裁判をするにあたって、確かに真実を吐きとめることは大事だ。だがな、組織の中にいる以上、従わなきゃならねぇことってのがあるんだよ。それがわかっちゃいねぇ」

 「・・・俺は組織の人間じゃない。それに、従わなきゃならないことってのが、真実をネジ曲げるようなことなら、言う事なんか聞きたくねぇよ」

 「はぁー。臨機応変に出来ねえもんかね」

 「臨機応変とは違うだろ」

 隼人の言葉に、ククク、と肩を揺らしながら笑うと、時咲は咥えていた煙草に火をつけた。

 そして木箱から立ち上がると、座っていた木箱を壁のほうに蹴飛ばした。

 「真実なんてのは、簡単に変えられるんだぜ?それが出来るのは、権力がある者だけだ」

 「・・・くだらねぇ」

 「まあ、例え拷問に耐えられたとしても、お前はいつか罰せられるんだ。そんときまで、せいぜい抗ってみるんだな」

 そう言うと、時咲は部屋から出て行った。

 「けほっ」

 指先がぴくぴくと痙攣を始め、隼人はゆっくりと目を閉じる。







 「これにて、裁判を閉廷します」

 今日の裁判を終えた紅蓮は、休憩室でコーヒーを飲んでいた。

 このところ、まともに寝ていない気がする。

 寝付けないのもあるが、夜中に仕事の電話がかかってきたり、まだ締切が先の書類に関しての電話があったりと、寝ていても途中で起こされることが多い。

 単に本当に必要で電話をかけてきているのか、それとも嫌がらせなのか、どちらかといえばきっと後者だろう。

 「紅蓮裁判長」

 「はい」

 「先日の報告書ですが、不備がありましたので手直しお願いします」

 「不備?」

 確認をしてみると、特に不備があるようには思えなかった紅蓮だが、紅蓮のサインが掠れているとか、ホチキス止めがズレているとか、そういうことだった。

 とんだ難癖をつけてきたな、と思う紅蓮だが、言い返すのも面倒で、とりあえず受け取って持ち帰るのだった。

 「紅蓮裁判長」

 「なんだ」

 「本日、裁判がもうひとつ入りましたので、すぐに向かっていただけますか」

 「・・・他にいないのか」

 「ええ」

 いないわけないのだが、紅蓮に仕事を押し付けたいのか、一歩も引かないその度胸に、紅蓮はため息を吐いて裁判所へ向かうのだった。

 まだ部屋には沢山の事務仕事も残っているし、今日の裁判の報告書だって書かなければいけない。

 今日も徹夜になるな、と思いながら、紅蓮は手に持ったままだった、すでに冷たくなってしまったコーヒーをぐいっと一気に飲み干した。







 「だーーーー!!!!!もう無理!もうなんか無理だ!俺もう無理!!!」

 部屋に籠って仕事をしていた渋沢は、いきなり叫びだした。

 テーブルに頭を何度かガンガンと打ちつけると、渋沢は「あーあー」と言いながら、貧乏ゆすりを始める。

 精神的にやばくなったのか、と思う人もいるだろうが、そういうことではない。

 確かに、紅蓮や隼人と離れて生活することに対して、退屈だとか窮屈だとか、思っているのは確かだ。

 だが、何が一番嫌だったかというと、監視されていることだった。

 「マジで無理。なんで?ねえなんで?マジで有り得ないから。もう無理だから。男に監視されるとかマジないから」

 ブツブツと文句を言っていた渋沢は、バンッと部屋のドアを勢いよく開けると、そこにいる監視役の男たちの目の前に立つ。

 身長差もあり、渋沢は男たちを少し見上げる姿勢をなっているが、今の渋沢は目が死んでいるため、男たちも思わず後ずさりしてしまうほどだ。

 そんな男たちに向かって、渋沢はどんどん詰め寄り、口を開く。

 「ねえ、なんで俺のこと監視してるの?俺のこと監視してて何が楽しいわけ?全く理解出来ないんだけど、どうして?今の俺はもう裁判長として役に立たないよね?自分でも分かってるよ。だってこんなだもん。なんか若干病んでる気がするもん。なのにそれでもなお監視し続けるのはなんで?ていうかさ、君たちは毎日俺を監視しているだけで給料が発生してるの?それってなんかズルイよね?平等じゃないよね?だって君たちの仕事って暇だよね?今の俺の仕事よりも暇してるよね?それでもし俺よりも良い給料もらってたら、マジでぶっ飛ばしたいんだけど。ねえ、その辺のところどうなの?それとも俺の監視はボランティアなのかな?そうなの?無償でやっているの?それなら素晴らしいと思うけど、そんなわけないよね?だって君たちって金だけが全てみたいなところあるもんね?金貰わないと監視もしないの?俺より仕事してないのに、てか隼人よりもしてないように見えるのに、それでお金貰ってるの?恥ずかしいとは思わないの?貰ってる給料分の仕事をしてるって、胸を張って言える?どうなの?ねえ、どうなの?もしも君たちが俺の質問に、納得いくように説明してくれるなら、まあいいかと思うけど、本当に俺よりも良い給料もらってる場合、もしくはボーナスとして貰っている場合、本当にクズだとしか言いようがないよね?紅蓮みたいに真面目に仕事をしてて、頼りにもなる人とは君たち絶対に違うんだからさ、それなりの解答をしてくれるかな?ああ、そういえば俺まだご飯食べてなかったんだ。だからお腹空いてちょっとイライラしちゃったのかな?ねえ、どう思う?」

 「・・・・・・いや、その」

 「どうでもいいや。俺は今この空腹をどやって満たすかだけを考えているから。ちょっと邪魔。どいてくれる?」

 「あ、はい」

 鼻先がくっつくくらいに近づき、息つぎをいつしていたのかも分からないような話し方をしていた渋沢に、監視役だった男たちは思わず怯んでしまった。

 え?こんなキャラだったっけ?と思いながらも、未だブツブツと何か言っている渋沢の背中をただ眺めるしかなかった。

 「何だったんだ・・・」







 だが、渋沢が向かった先は、店でもコンビニでもなかった。

 ズンズンと足を進めて行った先にあったのは、入口に警備員がいる場所だった。

 「申し訳ありませんが、今は会議中ですので、入ることはできません」

 「俺にはここに入る義務がある」

 強引に入ろうとすると、警備員の男たちによって身体を拘束されてしまったが、それでも渋沢は男たちを振りきって部屋の中に入ろうとする。

 部屋の外が騒がしくなったからか、部屋の中からは会議をしていた男たちが顔をのぞかせた。

 「騒がしいぞ。どうした?」

 「も、申し訳ありません。この男が部屋に入ろうと暴れまして」

 「うるせえ!!!てめぇらのせいだろ!!会議なんて大したこと話あってねぇくせに!!!!」

 「あれ?渋沢じゃん。どうした、こんなところに来て」

 「ここじゃ人目につく。そいつを放せ。渋沢、俺達に話があるなら、中に入れ」

 部屋の中から出てきた時咲たちは、警備員に押さえつけられている渋沢に笑いかける。

 時咲たちに放せと言われたため、警備員は渋沢を解放すると、渋沢が部屋の中に入るのを睨みつけていた。

 部屋の中に入った渋沢は、時咲、飛騨、舞悠の三人を前にして、少々緊張していた。

 キョロキョロと目を泳がせていたのに気付いたのか、舞悠が笑いながら話してくる。

 「そんなに怖がらずに、座ってよ」

 出された椅子に座ると、早速渋沢は本題に入る。

 「あの・・・!今回のこと、俺、どうしても納得いかないんですけど!!絶対に隼人はそんなことしないし、きっと誰かにはめられたんです!ちゃんと調べてください!!」

 「・・・こっちでも調査をしてるけど、隼人が白であるという明白な証拠はねぇんだ」

 「でも・・!!」

 折角椅子に座ったのに、渋沢はダン、と強くテーブルを叩きながら立ちあがった。

 舞悠が宥めようとするも、渋沢は止まらない。

 「絶対に違う!隼人はそんな卑怯な真似はしない!!」

 「渋沢、お前の気持ちも分かるが、ここは裁判所の中だ。真実になるのは証拠だけ。分かってるな?」

 「・・・!!」

 諭されるように、時咲がすうっと目を細めて渋沢に言うと、それだけで足が竦んでしまう。

 唇をぎゅっと噛みしめ、拳も強く握りしめていると、ふう、と時咲がため息を吐いたのが聞こえた。

 「まあ、証拠があろうがなかろうが、隼人には責任を負ってもらう心算だからよ」

 「・・・え?」

 「だからもうあいつのことは諦めて、自分のことを心配した方が良いと思うぜ?」

 最近、仕事に身が入ってねえんだろ?と付け足された渋沢は、時咲の顔を見る。

 「隼人のことは忘れてさ、リセットした方が良いと思うよ?どう頑張ったって、あいつの処分は免れないだろうからね」

 「処分・・・?」

 にっこりと、渋沢の横にいた舞悠が悪気の無い言葉を綴る。

 どう頑張っても免れない、ということは、もう隼人の処分が決まっているということだ。

 だが、確実な証拠もないのに、隼人を処分するつもりなのかと、渋沢はごくり、と唾を飲み込んだ。

 それを見逃さなかった時咲たち。

 「仮に、今回のことを俺達が仕組んでいたとしたら、君はそれでも隼人を助けられると思うのか?」

 仮に、とは言っているが、時咲たちの様子からすると、きっとそれが真実であることは、今の渋沢にも分かった。

 だから、思わず時咲に殴りかかってしまったのだ。

 「時咲ィィィィッッ!!!お前!!」

 殴られた時咲は、にいっと歯を見せて笑うと、飛騨と舞悠に渋沢を拘束させた。

 そして部屋の外にいる警備員を呼ぶと、渋沢の身柄を渡した。

 「渋沢、お前を抹殺処分にする」

 「・・・!!勝手なことばっかり言いやがって!!!」

 警備員に腕を掴まれながらも、なんとか身体を捩っていた渋沢だったが、時咲たち三人が立ち上がり、渋沢を取り囲むようにして立ちはだかった。

 そして、両手を出して何か口を動かしたかと思うと、渋沢は気を失った。

 何をされたのかなんて、本人には分からないが、このままでは確実に消されてしまう。

 「連れて行け」

 「はい」

 冷たい視線を渋沢に向けながら、時咲はそう吐いた。

 渋沢に背を向けて、部屋の中に戻ろうとしたとき、後ろから男の呻き声が聞こえてきた。

 「?」

 振り向くと、そこには警備員が床に横になっており、身体をぴくぴくさせていた。

 「・・・どういう心算だ?まさかお前まで、俺達に立てつく心算なのか?叶南」

 気を失っている渋沢を肩に担ぎ、警備員を気絶させてしまった叶南が、時咲に向かって笑みを浮かべていた。

 「若い芽を摘むもんじゃないよー。まったく恐ろしい人たちだね」

 「・・・俺達を敵に回して、ただで済むと思ってるのか?」

 「済まないだろうね。けど、それくらいは覚悟してここに来たからさ」

 叶南は、普段長い袖で見えない腕を上げる。

 すると、腕には何か文字が書かれていて、更には腕の周りに鎖のようなものが巻かれていた。

 「解放」

 そう呟くと、腕に巻かれていた鎖が一気に解かれ、物凄く強い風が巻き起こった。

 時咲たちも、腕を顔の前に出して、こちらに向かってくる風から目を逸らさないようにしている。

 「逃がしゃしねぇよ」

 時咲がそう言うと、飛騨と舞悠は定位置に着き、三角形の陣を作る。

 時咲からは赤い紐が出てきて、飛騨からは茶色の紐、そして舞悠からは水色の紐が出てくると、叶南たちを縛りつける。

 身動きが取れなくなった叶南だが、赤い紐を素手で掴むと、すぱっと刃物のように切ってしまった。

 「!?」

 緩んだところで、紐を引っ張って背負い投げの要領で時咲を投げ飛ばした。

 そして、渋沢を抱えたまま、窓を割って外へと脱出した。

 「あーあ。行っちゃったよ。どうする?責任問題だよ」

 「・・・叶南と渋沢を追え」

 「誰にー?あ、俺は嫌だからね。投げられたの、俺じゃないし」

 「あいつらにだ」

 なんとか逃げ出した叶南は、まだ敷地内にいた。

 男一人抱えて逃げ切るのは、そう簡単なことではない。

 「これでようやく、歯車が動き出したってとこか。それにしても・・・」

 ちらっと、横でまだ寝ている渋沢を見て、叶南はどうしようかと悩むのだった。

 軽そうに見える渋沢だが、やはりそれなりに歳相当の男なのか、女性のように軽く抱えるのは難しかった。

 叶南は袖を振って腕を隠すと、持ってきておいたこのあたりの地図を広げる。

 「・・・今どこ?」







 その頃、紅蓮は追加された裁判を終えたところだった。

 疲れ切った身体に鞭を打ち、なんとか乗り切ったものの、部屋に戻ればまだ仕事が山積みなのだ。

 「はぁ・・・」

 部屋に戻って椅子に座り、掌を額にあてがって一息ついていると、またドアがノックされた。

 こんな時間に来るとなると、また仕事が増やされるのかと、嫌嫌ながらもドアを開けて迎え入れた。

 だが、ドアを開けた瞬間、腕をがしっと掴まれてしまった。

 「?」

 何事かと思っていると、数人の男たちの後ろから、時咲、飛騨、舞悠が現れた。

 「何か御用ですか?」

 紅蓮の問いかけに答えたのは舞悠だった。

 「叶南が、処分される予定の渋沢を連れて逃げ出した。それで、紅蓮。君も変な動きをする前に、こちらで捕えることにした」

 「処分?逃げた?」

 まったく状況が掴めず、紅蓮は時咲の方を見ると、時咲は煙草を口に咥えて火をつけたところだった。

 ふー、と呑気に天井に向かって煙を吐いた時咲は、紅蓮と目を合わせずにいた。

 「連行しろ」

 ただそれだけを言うと、連れて行かれる紅蓮とは、ただの一度も視線を交わさず、煙草が短くなるまで吸っていた。

 「君には、ここに入っててもらうよ」

 舞悠に言われ、紅蓮が入れられたのは、“審判の箱”だった。

 この審判の箱とは、入れられた者の審議を測ることが出来る。

 だからといって、特別何かされるわけではなく、この箱に入っている者の記憶や思考を読みとり、それを審議するのだ。

 紅蓮を捕まえるだけなら、普通の牢屋でも良かったのだが、きっとこの箱は、時咲たちにしか開けられないため、ここに閉じ込めることにしたのだろう。

 去って行く舞悠の背に向かい、紅蓮は問いかける。

 「渋沢が処分とは、どういうことだ」

 「・・・あの子は、感情に流されてる。時咲に殴りかかっちゃったし」

 「叶南が渋沢を連れて逃げたと言うのは」

 「言葉の通りだよ?逃げたの。だから今、追ってる。安心して。捕まえたら、君たちまとめて、ちゃんと判決下してあげるから」

 ね?と柔らかく笑う舞悠だが、その腹の中は実にどす黒い。

 何があったかは分からないが、渋沢のことだから、今の状況が納得出来なくて、時咲たちのところに行ってしまったのだろう。

 叶南に関しては、何を考えているのか知らないが、時咲たちとは昔から合わないのだ。

 何がと言われても、全てが。

 「聖がいるから、暴走はしないと思ってたんだがな」

 とはいえ、聖にも聖の仕事があって、全てを任せていたわけではない。

 それに、大人なのだから、自分の行動の責任は自分で負うべきなのだが、渋沢が一人で判断してあの時咲たちのところに行ったとなると、精神的に相当参っていたのだろう。

 叶南で一番心配なことは、方向音痴なことだ。

 太陽が昇ってるから東、沈むから西。

 まあ、間違ってはいないのだが、そういう古典的な覚え方しかしていないから、いざという時自分の居場所がわからなくなるのだ。

 「・・・・・・」

 とにかく、紅蓮はここで待機するしかない。

 椅子も何もないこの場所で、胡坐をかいて、腕を組み、目を瞑って瞑想のフリをしながら昼寝でもしようと思う紅蓮であった。







 「君たち三人に、叶南の居場所を探してほしいんだ。いいね?」

 「私達が、ですか」

 時咲たちに呼ばれ、揃った三人。

 北監獄支部長の貴氏と、西監獄支部長の菜里、そして東監獄支部長の功黄だ。

 三人に説明をしているのは、舞悠。

 「各監獄の支部長ってのは、何かあったときの為にすぐに連絡が取れるようにって、独自のルートがあるって聞いたよ?」

 「ええ、まあ、ありますが」

 「それを使ってさ、叶南が今どこに隠れているのか、探せないかな?」

 にっこりと笑う舞悠に、三人は互いの顔を見合わせる。

 「わかりました」

 「ああ、それからさ、見つかったとき連絡はいらないから、とりあえず捕まえてきてくれる?それで牢屋にでもぶっこんでくれればいいからさ」

 にこにこと笑う舞悠が、感情が最も掴み難い相手だ。

 時咲は興味ないのか、それとも舞悠に任せているのか、とにかく頬杖をついて寝ていた。

 飛騨はいつも通り、無口なままだ。

 三人は部屋を出ると、歩きながら話をする。

 「ねえ」

 「なんだ」

 「叶南ってば何やってんのよ。ほんっと、あいつにはいつも面倒かけられっぱなしよ」

 「それよりも、見つけることが先決だ」

 会議にもまともに出たことのない叶南だが、出たくない理由は三人とて分からないでもなかった。

 会議に出たところで、どうせ自分達の意見なんて聞いてはもらえず、上が決めたこと全て、という組織なのだから。

 前に会議に珍しく出てきたときにも、目的は会議に出ることじゃなくて、上のジジイ共に文句を言う為に来たんだ、などと言うものだから、必死に叶南を押さえつけたとか。

 「見つけても、その、捕まってしまうんですよね?」

 新人の功黄がそう言うと、貴氏は険しい顔を見せた。

 それが何を示しているのか分かった功黄は、それ以上何も言わなかった。







 「んん・・・」

 「大丈夫か?」

 ペシペシと頬を叩いて起こすと、渋沢は叶南の顔をみるなり、眉間にシワを寄せた。

 「おい、なんだその顔は」

 「いや、なんでいるの?てか此処何処?」

 「っかー。お前って奴ぁ。俺がピンチを助けてやったってのに」

 「ピンチ?」

 上半身を起こして、辺りを見ながら後頭部を摩っている渋沢に、簡単に説明をすると、渋沢はキョトンとする。

 「俺が処分?抹殺処分?」

 「な?吃驚だろ?それを救ったのが俺だからな」

 えへん、と偉そうにしている叶南に、上っ面な御礼を述べると、叶南はちょっと不服そうにしながらも、まあいいかと納得した。

 「いてっ」

 まだ痺れが残っているのか、渋沢は身体のあちこちを摩っている。

 「それにしても、お前が一人でこんな無茶するとはな」

 「え?」

 よいこらしょ、とオヤジ臭い掛け声を出しながら、叶南は渋沢の隣に腰を下ろした。

 良く見てみると、叶南の服は汚れていて、所々破けていた。

 「そういえばさ」

 「うん?」

 「その、殴られたって、聞いた。あいつらに。俺達のことで」

 「ああ、あれな」

 「ごめん・・・」

 まだ薄らと残っている目元の痣がそれなのだろうと、渋沢は思わず謝った。

 横でしゅん、と項垂れてしまった渋沢の後頭部をペシッと、割りと強めに叩くと、叶南はケラケラと笑った。

 「別にお前が謝ることじゃねえよ。俺が勝手にしたことだ。それに、元はといえば、あいつらが原因だろ?」

 んー、と返事がしているものの、渋沢が納得していないことは分かる。

 ふと、渋沢は隣にいる叶南のことをじーっと見つめた。

 その視線に気づいた叶南は、同じように渋沢を見つめていたが、その微妙な空気に耐えられなくなり、渋沢の頬を抓った。

 「いてててて!!」

 「男にみつめられる趣味は俺ねぇから」

 「そういうんじゃないって!!」

 意外と固かった渋沢の頬に、ちょっとだけ残念そうにしていると、抓られた頬を摩りながら、渋沢は聞いてみた。

 「叶南って、紅蓮たちと初めて会ったのって、いつ頃?俺と同じくらい?」

 紅蓮、渋沢、隼人、あと聖もそうだが、みな同じ時期にこの裁判所で働き始めた。

 その時から叶南はいたのだろうが、どうも渋沢の記憶では、働き始めた当初、叶南のことは知らなかったはずだ。

 とはいえ、最初の数カ月は、紅蓮とも隼人とも一緒には暮らしていなかったから、もしかしたらその時にすでに紅蓮たちは叶南に出会っていたのかと思ったのだ。

 「あー?確か、お前たちがここに来て・・、んーと・・・」

 そもそも、叶南の正確な歳さえ知らないのだが、今はそれは置いておこう。

 「あ、あれだ」

 「どれ?」

 ふと思い出したのか、叶南は口を開けたまま渋沢を見る。

 「来てすぐん時、お前等ちょっとした騒動起こしただろ」

 「?何かやったっけ?」

 本人は覚えていないようだが、叶南は覚えていた。

 それはなぜかというと、面倒で出たくないと言っていたのだが、高級なお茶菓子が出るから出ないかと言われ、出た時に起こったことだから。

 「確か、紅蓮に突っかかってた奴がいて、そいつらを隼人が邪魔だから消えろとかなんとか言って、んで、渋沢、お前がなぜか酔っ払ってて、そいつらと取っ組み合いになっただろ」

 「・・・?え?俺そんなことした?」

 「覚えてねえのかよ」

 「まったく」

 叶南の話によると、歓迎パーティーだかなんだかをしていたとき、最初から最高裁判所の裁判長に決まっていた紅蓮を妬んで、酒の勢いもあってか、いきなり喧嘩を吹っ掛けた奴らがいたとか。

 紅蓮はあまり気にしていなかったのだが、それが余計に相手も怒らせてしまったようで、ついには相手が紅蓮の胸倉を掴んだ。

 その時、特に行き先の無かった隼人は本を読みながらウロウロしていて、その男たちの中の一人にぶつかってしまった。

 軽くぶつかっただけなのだが、男は標的を紅蓮から隼人に変えて、隼人が読んでいた本を取りあげて窓から捨ててしまったらしい。

 「あ、ちなみに俺はそのとき、お菓子食いながら見物してた」

 いや、そこは止めろよ、とも思ったが。

 本を捨てられた隼人は、目の前にいる男の金的を蹴飛ばした。

 男は言葉を失い、呼吸を荒げながら床に転がってしまった。

 ソレを見て、叶南は爆笑していたとか。

 「ああん!?てめぇ!!!何してくれてんだよ!!!!」

 「どこのどいつだ!?」

 すごい剣幕で隼人を取り囲んできた男たちだったが、隼人はめんどくさそうにため息を吐いた。

 隼人の胸倉を掴むと、隼人は男の両肩に手を置いて、こう言った。

 「止めとけ。すぐに暴力で片づけようとするのは、馬鹿がやることだ」

 「な、なんだと・・!?」

 「何の間違いがあったのか、それとも金なのかは興味ねぇけど、仮にも法律を司る側になった奴が、すぐに手を出すようじゃぁダメだよ」

 「て、てめぇこそ!!!こいつの男を壊しやがって!!!」

 「ああ、俺?俺は別に司ってねぇし」

 平然としている隼人に、男たちは殴りかかろうとした。

 その時・・・。

 「っく・・・よお、兄ちゃんたち」

 「あ?誰だお前」

 顔を真っ赤にして、虚ろな目をし、千鳥足で男たちに近づいていく渋沢がいた。

 手には酒を持っていて、きっと飲んだことなどないのに、勧められて飲んでしまったのだろうが、酷い有様だ。

 「いいか!」

 ずびし、と男に向かって人差し指を突き出すと、渋沢はしゃっくりをしながらも話す。

 「人生―色々!!男もー色々!女だって色々―咲乱れんだこの野郎!!!!」

 「・・・・・・え?」

 語尾の方はなぜか早口になり、男たちだけでなく、隼人も紅蓮も、他の人もみなが渋沢を見てキョトンとしている。

 自分よりも背の高い男たちを前にして、渋沢はさらにお酒をぐいっと飲んだ。

 「跪け!こんな日に喧嘩を吹っ掛けるなんてなぁ、碌な大人にならねえぞ!!!」

 ぎゃーぎゃーと騒ぎだした渋沢を、隼人がズルズルと引きずって会場から出て行った。

 最初から面倒だというのもあったのだろうが、紅蓮も同じように会場を出て行く。

 ちなみに、その時叶南は面白くてゲラゲラ笑っていたそうだが、渋沢は酔っていて覚えていなかった。

 「あんときに比べれば、お前も酒が強くなったもんだよな。記憶はなくさないし」

 「・・・?本当にそれ俺?聖じゃなくて?」

 というか、それが初めて会った時だと言われても、受け入れ難い。

 「面白い奴らが入ったなーと思ってよ。すぐに調べたんだ」

 始めに絡まれていたのは紅蓮、最高裁判所の裁判長を務める男で、眼帯をつけていた、パーティーには呼ばれていなかったのだろう男は隼人。

 最後に、酒ででろんでろんになっていたのは、渋沢といって、下級裁判所の裁判長に任命された男だということが分かった。

 さらに、隼人は千石家一族で悪魔を目に飼っているが、あいつは異端児だとか忌み子なのだとか、そんなことも聞こえてきた。

 「俺が初めてお前達の部屋に行ったときよ、紅蓮の奴、淹れてたコーヒーカップを床に落としたんだぜ」

 「え!?そうなの!?」

 「隼人はそんとき寝てたかな。ソファで横になってさ。こう、本を顔に乗せたまま」

 「ああ、よく見る光景だ」

 その時渋沢は裁判中だったらしいが。

 それからちょくちょく紅蓮たちのところに顔を出すようになると、なぜか敬語を使われなくなったとか。

 それは仕方ないことだと渋沢は言うと、叶南は首を傾げた。

 とはいえ、隼人は初めから敬語なんて使っていなかったようだが。

 使っていたとしても、「~っすか?」みたいな、砕けた言い方だった。

 「隼人、大丈夫かな」

 拷問を受けていると聞いてから、心配で仕方なかった。

 どんなことをされているか知らないが、何にせよ、痛いし辛いし、きっと自分では我慢出来ないようなことだろう。

 「あいつらにとって、一番邪魔なのは隼人だからな。かといって、無抵抗な奴を殺せば、批判もあるだろう」

 「んー」

 「・・・渋沢」

 「何?」

 「お前、少し寝てろ。体力つけとかないと、逃げられなくなるぞ」

 「うん」

 叶南に言われるまま、渋沢は目を瞑った。

 夢を見たような気がするが、どんな夢を見たかは覚えていない。

 ただ、とても懐かしい感じがして、それでいて悲しいものだったような気がする。

 そしてそれ以上に確かだったのは、次に目を覚ましたとき、三人の影があったこと。

 それから、自分の前に叶南が立ってたこと。

 「叶、叶南?これ、どういう?」

 「おお、起きちまったか。立てるか?」

 「う、うん」

 尻についた土をぱんぱんと数回叩いて落とすと、叶南の前に立っている三人に目をやった。

 「あ」

 その三人は、どこかで見覚えのあるような、ないような・・・。

 確か、以前叶南の部屋に行ったときに、あ、叶南と同じ服装だ、と思った記憶がある。

 「叶南、渋沢。お前たちを捕まえに来た」

 「貴氏、そんなに怖い顔しないでよー。ここで暴れるのは、あまりにも無粋だと思うよ?」

 叶南が言っている“ここ”というのは、きっと何百年、何千年も前からここに聳え立っている樹木のことだろう。

 自然豊かなこの場所は、訪れた人の心を癒し、綺麗にしていく。

 生い茂る樹木の隙間から見える木漏れ日は、真っ直ぐに土へ向かって伸びてきて、そこからは小さな息吹さえ感じる。

 思わず上を見ていると、叶南が渋沢に声をかけてきた。

 「渋沢」

 「へ?」

 「走れ」

 一瞬、何を言われたのか理解出来なかったが、なぜか身体は動いていて。

 背中からは自分を呼ぶ声も聞こえてくるが、そんなもの聞こえないように、ただただ肺が潰れるまで走るしかなかった。

 「くそっ!」

 渋沢を追いかけようとした貴氏たちだが、それを阻むようにして巻き起こる爆風に、その場から動くことが出来なかった。

 しかし、そのうちしゅるるる、と風が収まると、功黄が思い出したように渋沢を追いかけようとした。

 その功黄の足を、ひょいっと伸ばした足で引っ掛けると、功黄は見事に転んだ。

 「折角俺が逃がしてやったんだから、無駄にすんなっての」

 三人に取り囲まれている叶南だが、その姿はとても余裕そうに見えた。

 体勢を整えた功黄だったが、その必要はなくなった。

 「え?」

 「・・・・・・」

 なぜなら、叶南は両手を胸の前に出して、降参の形を取ったからだ。

 それを見て驚いていると、貴氏と菜里の二人は、叶南の腕をしっかりと掴んだ。

 「後悔はしないな」

 「後悔なんかしないよ。これが俺のやり方だからね。それにしても、君たちを使って俺の居場所を探すなんて、本当に嫌な奴らだね」

 「南監獄支部長叶南。連行する」







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