第2話

文字数 1,227文字

さて宇宙人は別れた数日後に退職をし、数日間の地球休暇を楽しんでいた。とりわけ銀座コージーコーナーのいちごエクレアを気に入り母親にと大量に買っていた。
地球外生命体の味覚からするといちごエクレアは水のように無味に近い風味で美味しい水を飲む感覚に近いため数に関係なく食べ続ける。
たまに摂取器官に詰まり人のように咳き込む。
 バカタレ!人かと突っ込みたくなる。宇宙人が休暇をとっている時に私はN子と同じ職場に就職した。初日は彼女に会うことはなかったが仕事にも慣れてきた頃、職場の食堂で出会う。N子は私をみた瞬間後ろに一歩後退りし、口を大きく開けた。そして次の瞬間には散々した喧嘩をいきなり思い出しその目の前の敵の頬に1発張り手をぶち込もうとこちらに向かってきた。もちろん私は彼女の存在を知るはずはないので盛大にビンタを喰らった。バチコーン。多少の会話が見舞えた食堂の列に皮膚が引っ叩かれる音が響く。
な、なんですか?私は彼女に問うとN子はそれでも満足した様子はなく列に戻っていく。宇宙人に同情するわけではないが話し合いで解決しないその性格に嫌気がさす気持ちが少しわかった気がした。
それから何度も職場内ですれ違ったりしたが本当にN子を認識しない私を見てとうとう話しかけてきた。何も言うことないわけ?。私は少し不快に感じつつあった彼女にこう返した。あのまず名前すら知らないですし、なんで露骨に嫌な態度をとるんですか?どこかで会いましたっけ。そういうとやっとN子は私に対して頭がおかしくなったか、記憶障害を疑い私を心配し始めた。勝手に別れ間際に私の怒りっぽくなった性格も病気のせいだと勘違いし始めて謝り始めた。もうわけがわからない。だから私がここに来るまで本当にあなたを知らなかったと事実を伝えると彼女も話し始め矛盾が生じた。そしていつしかそこの差異を解決するために私たちは会うたびに話し合った。同じ戸籍を持つ人を探し、知り合いの役所関係者に尋ねた。役所関係者は同姓同名の家族関係も全く同じ戸籍が2枚登録されていますね。なんらかのミスの可能性がありますお待ち下さい。と言った。
そう、その宇宙人は地球休暇を満喫しすぎて偽装した身分の痕跡の除去を忘れていた。この宇宙人も私と似ていてなかなか馬鹿なところがある。違う銀河の私なのではないかと思うくらいだ。2枚の戸籍があることに気づいた役所は初めての戸籍トラブルで戸惑っている間にやっと宇宙人は思い出し急いで遠隔から書類を削除した。あれ、やっぱり一枚しかないです。この国に存在するあなたはあなただけのようです。役所関係者は間抜けなことを言っているが急に戸籍が2枚から1枚になったのでそう言わざるを得ない。不思議なこともあるのだなと役所を出て駅へと向かう時茶色のコートを着た人とぶつかった。その瞬間私の記憶に約一年分の別の人の記憶が入り込んだ。その衝撃と情報についていけない私はその場で座り込んだが相手は誤りもせず過ぎ去っていった。
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