第5話

文字数 677文字

「ぜえ、ぜえ……」

 階下へと降りると、幾つもの甲冑が飾られた広間には白一色の鎧を、着た騎士が荒い息をして突っ伏していた。

 外からの明かりで、その騎士の剣先が光る。
 
「ああ! ライラックさん!」
「もうダメだろうな……この戦争は館側の勝利で終わった……」
「え……そんな」

 コーリアはライラックを介抱しようとしたが、ライラックはその手を思いっ切り振り払った。

「前線は全滅。後衛の私たちでさえ、逃げるのが精一杯……ぐぬぬぬぬぬ」
「あの。国王さまに、すぐに報告したら?」

 何が起こっているのか、さっぱりわからない。だけど、混乱したぼくは即座に聞いてみた。
 
 けれども、コーリアは首を振った。

「ここはトルメル城の数多くある客間の一つで、ライラック家が所有してるんです。トルメル城はとても広大で王室や王の間は、北の館が一望できるすごい北の方にあるんです。なので、もう国王さまのお耳に入っているはずです」

 なんて、広大な城だろう?
 ぼくの家の何倍?

 いや、何十倍??

 こんな緊急時のような時だけど……正直、住んでみたいな……と思う。

「うぬ。健国祭は明日始まるというのに……皆、祭りの準備を終えたというのいに……」

 ライラックはとても悔しそうだった。
 ぼくは、今はさすがにこの掌の模様のことを、どうしても聞けなかった。

「あの……」
「ふっ……心配するなコーリア。祭りは、明日の祭りは、厳重な警護の元に行われるはずだ。だが、私はもう戦わん!」

 ライラックは剣を思いっ切り壁の方へ投げ捨てた。
 剣は壁に並んだ甲冑の一つに突き刺さり。

 それから、しばらくして剣の光は失せていった。
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