第1話無邪気な笑顔
文字数 596文字
「さほ〜、そんなとこ突っ立ってないで早く来なよ〜ぉ!」
混み合う海水浴場の浜辺で脚がすくんで躊躇し、突っ立っている私に向かい、腰まで海水に浸かった友人が無邪気に笑いながら片手を左右に振り、急かす。
「……ないで、梨緒ー」
友人に聞こえるように声を張ろうとしたが、上手く言葉が紡げずに私の声は掠れて届かなかった。
友人が僅かに首を傾げていた。
私の様子を察したようで傾げていた首をもとに戻した友人は、バツが悪そうな表情を浮かべ浜辺に上がる。
そのまま私のもとに歩み寄ってがばっと抱き締める友人だった。
「無理させて、ごめん沙穂。そう……そう、だよね沙穂。沙穂の気持ちを汲めてなかった……怖いのに、私に着いてきてくれてありがとう。ごめんね、沙穂」
彼女は自身を責めるような震える声で謝り続け、私は申し訳ない気持ちで胸がきゅーっと締め付けていた。
断りきれなかった私のせいだというのに……上里梨緒は自身を責めている。
梨緒は悪くないのに……梨緒が悪いわけじゃないのに……
羽織るラッシュガード越しでも彼女が背中に回している両腕の温もりを感じる。
真夏のサンサンと照り付ける陽光の陽射しを受けているというのに、彼女の両腕に包まれ木漏れ日を浴びているような感覚に陥っていた。
「……っ」
上手く言葉を紡ぐことはできないで、彼女の悲痛な嗚咽混じりの謝罪を聞き続けた。
ああ、私は彼女の傍に居続けて良いのかな……
混み合う海水浴場の浜辺で脚がすくんで躊躇し、突っ立っている私に向かい、腰まで海水に浸かった友人が無邪気に笑いながら片手を左右に振り、急かす。
「……ないで、梨緒ー」
友人に聞こえるように声を張ろうとしたが、上手く言葉が紡げずに私の声は掠れて届かなかった。
友人が僅かに首を傾げていた。
私の様子を察したようで傾げていた首をもとに戻した友人は、バツが悪そうな表情を浮かべ浜辺に上がる。
そのまま私のもとに歩み寄ってがばっと抱き締める友人だった。
「無理させて、ごめん沙穂。そう……そう、だよね沙穂。沙穂の気持ちを汲めてなかった……怖いのに、私に着いてきてくれてありがとう。ごめんね、沙穂」
彼女は自身を責めるような震える声で謝り続け、私は申し訳ない気持ちで胸がきゅーっと締め付けていた。
断りきれなかった私のせいだというのに……上里梨緒は自身を責めている。
梨緒は悪くないのに……梨緒が悪いわけじゃないのに……
羽織るラッシュガード越しでも彼女が背中に回している両腕の温もりを感じる。
真夏のサンサンと照り付ける陽光の陽射しを受けているというのに、彼女の両腕に包まれ木漏れ日を浴びているような感覚に陥っていた。
「……っ」
上手く言葉を紡ぐことはできないで、彼女の悲痛な嗚咽混じりの謝罪を聞き続けた。
ああ、私は彼女の傍に居続けて良いのかな……