第1話
文字数 801文字
今は昔、15年前の6月に私は庄内に赴任した。右も左も分からない着任後1週間ほど経ったある日の夜、町内をさ迷い1軒の居酒屋に入った。
そこで、店長のおすすめ「庄内浜・天然岩牡蠣」なるメニューが目に入った。岩牡蠣なる言葉をその時初めて知った。私が食べたことがあったのは真牡蠣で、記憶では冬場が旬の筈だった。
そこで聞いてみた。
「大将、夏場の牡蠣って美味しいの?」
今から思うと、大将は(この見たことのないオジさんは、何て間抜けた質問をしているのだろう?)と呆れていたことだろう。
「美味しいですよ、とっても…。」
「では、その岩牡蠣を下さい。」
その時、生まれて初めて岩牡蠣と対面した。
(ええっ!?)
その大きさに度肝を抜かれた。掌 より大きな牡蠣が1個、皿にでんっ!と鎮座していた。牡蠣の殻は分厚くてごついのに驚いた。ポン酢、紅葉おろし、青葱、カットレモンが薬味として添えられていた。
「大将、この牡蠣、でかいですね。これ、一口で食べられるかなぁ?」
「どうぞ、お好きなように。」
大将は、(そんなことはどうでもいいからさっさと食べろ)と言わんばかりだった。
ポン酢をたらす。紅葉おろし、青葱を載せる。レモンを絞る。
殻を手で持つ。箸で牡蠣の身が殻から完全に離れていることを確認する。殻を口元に運ぶ。プ~ンと磯の香りがする。
ヒュ~ヒョロヒョロヒョロヒョロ
息を吸いながら、箸で牡蠣の乳白色に艶立 つ身を口の中に滑らす。プリプリと弾力のある身の美味しさ、口の中に広がるクリーミーで濃厚な旨み。美味い。溜息が出た。
写真は、町内の行きつけの居酒屋で食べた今年の庄内浜産の天然岩牡蠣である。
今では岩牡蠣を見ると、そのミネラルを豊富に含んだ伏流水で岩牡蠣を育てた鳥海山と庄内浜の風景が目に浮かぶ。
天然岩牡蠣が産地直送ではなく産地で食べられる。庄内の豊かな海の幸に乾杯!!
んだんだ。
(2024年8月)
そこで、店長のおすすめ「庄内浜・天然岩牡蠣」なるメニューが目に入った。岩牡蠣なる言葉をその時初めて知った。私が食べたことがあったのは真牡蠣で、記憶では冬場が旬の筈だった。
そこで聞いてみた。
「大将、夏場の牡蠣って美味しいの?」
今から思うと、大将は(この見たことのないオジさんは、何て間抜けた質問をしているのだろう?)と呆れていたことだろう。
「美味しいですよ、とっても…。」
「では、その岩牡蠣を下さい。」
その時、生まれて初めて岩牡蠣と対面した。
(ええっ!?)
その大きさに度肝を抜かれた。
「大将、この牡蠣、でかいですね。これ、一口で食べられるかなぁ?」
「どうぞ、お好きなように。」
大将は、(そんなことはどうでもいいからさっさと食べろ)と言わんばかりだった。
ポン酢をたらす。紅葉おろし、青葱を載せる。レモンを絞る。
殻を手で持つ。箸で牡蠣の身が殻から完全に離れていることを確認する。殻を口元に運ぶ。プ~ンと磯の香りがする。
ヒュ~ヒョロヒョロヒョロヒョロ
息を吸いながら、箸で牡蠣の乳白色に
写真は、町内の行きつけの居酒屋で食べた今年の庄内浜産の天然岩牡蠣である。
今では岩牡蠣を見ると、そのミネラルを豊富に含んだ伏流水で岩牡蠣を育てた鳥海山と庄内浜の風景が目に浮かぶ。
天然岩牡蠣が産地直送ではなく産地で食べられる。庄内の豊かな海の幸に乾杯!!
んだんだ。
(2024年8月)