セリフ詳細
ちなみに、この第四編に、興味深い記述がある。
【唯物論者や一般の科学者のいうように、物体が唯一の実在であって万物は単に物力の法則に従うものならば神というようなものを考えることはできぬであろう。】(P403)
これ、ぽろっと読み落としがちだけど、すげぇこと書いてるんだよ。
つまり、もうすでに、ぼくが言っちゃってることだけど、
一般常識でいうと、この世界は「モノ」から成り立ってる、と思う。
あらかじめ事物があり、実体AならA、BならBがあり、それらが決められたパターンで相互作用する、そんな法則を描き出す、のが科学だと思われているし、これが唯物論的な世界観だ。
しかしそれが正しいとするなら、西田に言わせれば、それなら「神」が出てこない、というわけ。
そうではなく、じつは事物が存在しないからこそ、事物が実体として自立自存していないからこそ、つまり、カルロ・ロヴェッリの言うように、むしろ相互作用、関係性こそが事物を事物たらしめているのだとするなら、〈はたらき〉こそが「モノ」を生み出しているのだとするなら、そこでこそ、はじめて「神」(=〈はたらき〉)が問われるようになるのだ、というわけ。
つまり、西田は当時の一般的な自然科学観をすでに突き抜けちゃってるんだよね。
すでにこの時点で、カルロ・ロヴェッリに近い見方をしている。
作品タイトル:西田幾多郎を読む
エピソード名:『善の研究』を読む③
作者名:千夜一夜読書人 nomadologie
★19|社会・思想|連載中|9話|32,364文字
哲学, 西田幾多郎, 善の研究
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哲学者・西田幾多郎の著作を順番に読み進めていきます。