セリフ詳細

 私の世界から色が消えたその日は、布団に潜っていつまでも一人で泣いた。両親には言えなかったわ。


 夜中になっても眠れなかった私は犬達がいる部屋に行った。床に寝転んで彼らを眺めながらまた泣いた。そんな姿を見て何かを察したのか、彼らは私に寄り添ってくれた。私は彼らを撫でながら「ごめんね。」と何度も言って、いつまでも泣き続けた。


 私は心を閉ざしたことを周りに悟られないよう、今まで以上に“いい子”であり続けたわ。いつも笑顔で誰に対しても平等に優しくポジティブで、"前まで好きだった"ディズニーランドのキャストさんをイメージして完全に振舞った。成績も良くて両親の手伝いも頑張るし、困っている人がいたら真っ先に助けに行ったわ。


“生きる意味なんて無い”と思いながらこんなことするのって変でしょう?

作品タイトル:僕らは不完全な世界で猫を撫でる。

エピソード名:第16話「"いい子"」

作者名:道端の椿  kh-346

50|現代ドラマ・社会派|完結|43話|39,899文字

恋愛, 動物, 心理学, 精神疾患, HSP, 犬, 猫, 青春, 高校生, 短編

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”人は不完全だからこそ美しい”
子どもの頃にそんな言葉を聞いたが、意味はよく分からなかった。

10歳で生きる意味を失い”不完全”な人間になった僕は、高校で一人の女の子に出会う。クラスメイトや教師の全員が、男女問わず彼女に魅了されていた。彼女は"完全"だ。

僕はベンチに座って、ただ時が過ぎるのを待っていた。