２２世紀、徹底的な他者尊重を目指し、心の安全を何よりも優先させる人格主義社会が完成していた。パステルカラーで彩られ、病的なまでに優しさで満ちた世界は誰も苦しまないはずなのに──凶悪犯罪は増加の一途をたどっていた。子供に対する犯罪、子供による犯罪……正しく導かれた者、正しく導かれる者が他者を害するのか。誰もが当然のように行使する「優しさ」に疑問を抱き、一人の人間として生きることに苦悩する警察官・御影は己の正義を求めて彷徨う。