「私はむしろ、わが君が、何で私を制止されたか、お心を疑うほどです。この許昌の都に親しく留まって以来、眼にふれ耳に聞えるものは、ことごとく曹操の暴戻なる武権の誇示でないものはありません。彼は決して、王道をまもる武臣の長者とはいえぬ者です。覇気横溢のまま覇道を行おうとする奸雄です。その野心をはや露骨にして、公卿百官を始め、十万の将士を前に、上を冒し奉り、上を立ちふさいで、自身が臣下の万歳をうけるなどという思い上がった態を見ては、余人は知らず、関羽は黙止しておられません。……たとえ如何ようなお咎めをうけるとも、関羽には忍び難うて、この身がふるえます」