セリフ詳細

「早のみ込みをし給うな。学文にも小人の弄文(ろうぶん)と、君子の文業とがある。小儒はおのれあって(くに)なく、春秋の()を至上とし、世の翰墨を費やして、世の子女を安きに惑溺(わくでき)させ、世の思潮をいたずらににごすを能とし、辞々句々万言あるも、胸中一物の正理もない。大儒の業は、まず志を一国の(もと)におき、人倫の道を肉づけ、文化の健全に華をそえ、味なき政治に楽譜を(かな)で、苦しき生活にうるおいをもたらし、暗黒の底に希望をもたらす。無用有用はおのずからこれを導く政治の善悪にあって、腐文盛んなるは悪政の反映であり、文事健調なる――その国の政道明らかなことを示すものである。――最前からの声音を通して、この国の学問を察するに、その低調、愍然(びんぜん)たるものをおぼゆる。この観察はご不平であるや、如何に」

作品タイトル:三国志

エピソード名:第94話、呉、紛糾

作者名:畑山  hatakeyama

126|歴史|完結|156話|1,238,935文字

三国志

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青空文庫より、吉川英治、三国志をチャットノベル化
幾分、内容文章を変えています。