セリフ詳細
「早のみ込みをし給うな。学文にも小人の弄文 と、君子の文業とがある。小儒はおのれあって邦 なく、春秋の賦 を至上とし、世の翰墨を費やして、世の子女を安きに惑溺 させ、世の思潮をいたずらににごすを能とし、辞々句々万言あるも、胸中一物の正理もない。大儒の業は、まず志を一国の本 におき、人倫の道を肉づけ、文化の健全に華をそえ、味なき政治に楽譜を奏 で、苦しき生活にうるおいをもたらし、暗黒の底に希望をもたらす。無用有用はおのずからこれを導く政治の善悪にあって、腐文盛んなるは悪政の反映であり、文事健調なる――その国の政道明らかなことを示すものである。――最前からの声音を通して、この国の学問を察するに、その低調、愍然 たるものをおぼゆる。この観察はご不平であるや、如何に」
青空文庫より、吉川英治、三国志をチャットノベル化
幾分、内容文章を変えています。