セリフ詳細

「国家の急なるときは、自然、防禦の力も数倍してくる。官民一致難に当るの決意をもてば、長途遠来の荊州軍など何の怖れるほどのことがあろう。いかにここまでは、彼の侵略が功を奏してきたにしても、占領下の蜀の民は、まだ心から劉備に服しているのではない。今、巴西(はせい)地方からすべての農民を追って、ことごとく、涪水以西の地方へ移してしまい、それらの村落には鶏一羽のこすことなく、米穀は焼きすて、田畑は刈り、水には毒を投じ、以て彼らがこれに何を求むるも、一飯の(かて)もないようにしておけば、おそらく彼らは百日のうちに飢餓困憊(きがこんぱい)をさまようしか道を知らないであろう。――そして成都、綿竹関(めんちくかん)の二関をかため、夜となく昼となく、奇策奇襲をもって、彼を苦しめぬけば、おそらくこの冬の到来とともに、劉備以下の大軍は絶滅を遂げるにちがいないと考える。いやそう信じる。諸公のお考え如何あるか」

作品タイトル:三国志

エピソード名:第126話、忠魂碑

作者名:畑山  hatakeyama

126|歴史|完結|156話|1,238,935文字

三国志

244,874 views

青空文庫より、吉川英治、三国志をチャットノベル化
幾分、内容文章を変えています。