セリフ詳細

「賤しい楽女のわたくし、お疑い遊ばすのも当り前でございますが、どうか、お胸の悩みを、打明けて下さいまし。……いいえ、それでは、(さか)しまでした。王允様のお胸を訊く前に、わたくしの本心から申さねばなりません。――私は常々、王允様のご恩を忘れたことはないのです。十八の年まで、(まこと)の親も及ばないほど愛して下さいました。歌吹(かすい)音楽のほか、人なみの学問から女の諸芸、学び得ないことはなに一つありませんでした。――みんな、あなた様のお情けにちりばめられた身の宝です。……これを、このご恩を、どうしてお(むく)いしたらよいか、貂蝉は、この(くち)や涙だけでは、それを申すにも足りません」


作品タイトル:三国志

エピソード名:第36話、貂蝉

作者名:畑山  hatakeyama

111|歴史|完結|156話|1,238,935文字

三国志

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青空文庫より、吉川英治、三国志をチャットノベル化
幾分、内容文章を変えています。