セリフ詳細

「でも、考えてもご覧なさい。曹操が兵を用いる巧みさは、(いにしえ)の孫子呉子にも(まさ)りましょう。誰が何といったところで、当今、彼に匹敵するものはありません。――ただ独りわが主君劉予州は、大義あって、私意なく、その強敵と雌雄を争い、いま流亡して江夏(こうか)に籠っておりますが、将来のことはまだ未知数です。――然るに、ひるがえって、この国の諸大将を見るに、どれもこれも一身一家の安穏にのみとらわれていて、名を恥じず、大義を知らず、国の滅亡も、ほとんど成り行きにまかせているとしか観られない。……そういう呉将の中にあって、粛兄ただ一名のみ、呶々(どど)、烈々、主義を主張してやまず、今も提督にむかって、無駄口をくり返しておらるるから、ついおかしくなったまでのことです」

作品タイトル:三国志

エピソード名:第95話、周瑜の決断

作者名:畑山  hatakeyama

126|歴史|完結|156話|1,238,935文字

三国志

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青空文庫より、吉川英治、三国志をチャットノベル化
幾分、内容文章を変えています。