セリフ詳細

「ご辺の言は、父母もなく君もない人間でなければいえないことだ。人と生れながら、忠孝の(もと)をわきまえぬはずはあるまい。曹操は相国(しょうこく)曹参(そうさん)後胤(こういん)で、累世(るいせい)四百年も漢室に仕えてその禄を()みながら、いま漢室の衰えるを見るや、その恩を報ぜんとはせず、かえって、乱世の奸雄たる本質をあらわして簒虐(さんぎゃく)をたくらむ。――思うにご辺は天数循環の歴史を、現実の一人間の野望に附加して、()いて理由づけようとしておられるらしい。そういうお考え方もまた逆心といえる。借問(しゃもん)す、貴下は、貴下の主家が衰えたら、曹操のように、たちまち主君の孫権をないがしろになされるか」

作品タイトル:三国志

エピソード名:第94話、呉、紛糾

作者名:畑山  hatakeyama

126|歴史|完結|156話|1,238,935文字

三国志

244,874 views

青空文庫より、吉川英治、三国志をチャットノベル化
幾分、内容文章を変えています。