「ご辺の言は、父母もなく君もない人間でなければいえないことだ。人と生れながら、忠孝の本をわきまえぬはずはあるまい。曹操は相国曹参の後胤で、累世四百年も漢室に仕えてその禄を食みながら、いま漢室の衰えるを見るや、その恩を報ぜんとはせず、かえって、乱世の奸雄たる本質をあらわして簒虐をたくらむ。――思うにご辺は天数循環の歴史を、現実の一人間の野望に附加して、強いて理由づけようとしておられるらしい。そういうお考え方もまた逆心といえる。借問す、貴下は、貴下の主家が衰えたら、曹操のように、たちまち主君の孫権をないがしろになされるか」