セリフ詳細

「いやいや、帝位を(とな)え給うには非ず。漢中王に()かるる分には、何のさしつかえがありましょう。いま宇内(うだい)二分して、呉は南に覇をとなえ、魏は北に雄飛し、また君のご威徳によって、西蜀漢中の分野ここに定まるとはいえ、なお前途の大統一を思う同気の(ともがら)は、我が君が、あまりに世間の(そし)りを気にかけて、いわゆる謙譲の美徳のみを唯一の道としておいでになると、ついには君の大器を疑い、三軍の心、ために変ずるの憂いがないとはいえません。天ゆるし、地もすすめる時は、隆々の盛運に乗って、君ご自身、さらに雲階(うんかい)を昇って栄位に進み、歓びを、帷幕(いばく)や三軍の将士に(わか)つこそ、また国を(さかん)にする大策たること疑いもありません。ねがわくは皇叔一個のご潔癖にのみとらわれず、御心を大にして、天地の欲するままに順応せられんことを」

作品タイトル:三国志

エピソード名:第139話、魏呉の協力

作者名:畑山  hatakeyama

126|歴史|完結|156話|1,238,935文字

三国志

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青空文庫より、吉川英治、三国志をチャットノベル化
幾分、内容文章を変えています。